オッドアイの守り人

第二部 オッドアイの行方ー失われた記憶を求めて

バカラ

　私達以外に誰も居ないVIPルームでディーラーがカードを繰る。

　箱に入ったままのカードデッキを四つ取り出し、一箱ずつ数字を全て私達に見えるように扇型に広げて確認させる。

その作業を繰り返した後、四箱分のカードをテーブルの上で素早く混ぜた。

何度もシャッフルされてよく混ざっただろうカード達はまとめられて、奥に少しだけ傾斜のついた透明な四角いケースに入れられ、そのケースごと縦型のカードホルダーに装着する。するとカードの重みでカードは自然と下に落ちていく。


　ディーラーはこのカードホルダーの下側に空いた親指二つ分ほどの穴に指を置き、一枚ずつしか出ないようになっている隙間へカードを送り出しカードを出していくのだ。ディーラーは始まるまでにこの準備を目の前でして見せ、私達のベット(賭け）を待った。

　バカラのルールは一通りディーラーが説明してくれた。彼の言ったとおり花札に似たゲームだった。

　バンカーとプレーヤーの二つがあり、どちらかに賭ける。それぞれ配られるカードは二枚か三枚。合計数字の下一桁が９に近い方が勝ち。例えば二枚のカードの合計が１８だと、8とみなされ、合計１6であれば６とみなされるので、１8の勝ちだ。但し、６未満の数字にはもう一枚カードが追加される。Ａは１、絵札三枚Ｊ、Ｑ、Ｋは１０と計算される。配当は単純に賭け金の二倍だ。

　彼の提示で賭け金額が五万USドルｘ五枚に設定された。今回は通常バンカーに賭けて勝った場合に差し引かれる五パーセントのコミッションはハウス持ちとの事だった。純粋な勝負にしてくれるらしい。VIPでこのカジノに長らく通っている彼だからこそ受け入れられた我儘だろう。

　五万のチップ五枚はどのように賭けても良い。例えば一度に五枚全てを賭けても良いし、二枚賭けてもいい。また相手と同じ様にかけても構わない。バンカーが勝ちそうだと思っているのにプレーヤー側に賭ける必要も無い。手持ちがなくなった時点で終わりだ。三回勝負だから全て負ければ約三千万円の出費だ。海静様を探しだせるツールがこの金額で買えるなら安いものかもしれないが、負けると痛い出費となる。

　東「１回六百万ですか…。OLの年間手取り…。」

　石「高い…。」

　染「三回勝負だ…。」

全て負ければどうなるのだろう、情報屋は紹介してもらえないのだろうか…

「さぁ、始めようか。君が先に掛けていいよ。同じ方に賭けてもいいけど面白みが足りなくなるからな。」

　春成様はにこやかに座って言った。今度はウォッカのロックを飲んでいる。
　私達はジュースを頼んだ。こんな一大事にアルコールを飲んでいる場合ではない。普段ギャンブルなどしないし勝手も分からないから気が抜けない。

　私は五万のチップを一枚バンカー側に賭けた。彼はプレーヤーに一枚賭ける。

　石原と東は固唾を飲んで私の隣に座っていた。私の緊張が彼らに伝染し、前のめりの姿勢で固まったままテーブルの上を凝視している。

　　チップを置き終わるとディーラーがバンカーとプレーヤーと書いてあるテーブルの上に一枚ずつカードを配り、さらに一枚ずつ、合計二枚ずつ配り終わると、バンカー側のカードから捲り出す。

　バンカー、クローバーの１０。
　プレーヤー、ダイヤの６。
　次にバンカーのもう一枚がゆっくり捲られる。

　ハートの７。合計で１７だが一桁の数字で勝負するから７だ。９が一番強いのだから、７は悪い数字じゃない。

　プレーヤーの合計が８か９にならない限りは私の勝ちだ。

　プレーヤーの二枚目がめくられる…。２か３以外…頼む…。

　スッっと捲られたカードはクローバーのキングだった。プレーヤーの合計数は１６。一桁勝負だから６。私のカードは７だから私の勝ちだ！

　石「よしっ！」

　東「はぁーーーーっ！！緊張する！これで十万ドルですね！」

ディーラーがプレーヤー側のチップをバンカー側のチップの横に並べて、私は二枚になったチップを手元に戻す。これでチップは手持ち六枚になった。彼の手持ちは今四枚。

　ディーラーがテーブルのカードを片付けて、使用済みのスロットに入れると、またベットを待つ。