オッドアイの守り人

焼肉

父さんはまだ気絶している中野を病院へ連れて行った。中野の事が気になるので、赤乃様に聞いてみた。

「中野はどうなるんでしょうか？」

「あぁ、アイツには全ての事を忘れるように吹き込んでおるから、目が覚めれば伊集院家の事は忘れておる、安心せい。脳みそが恐らく欠落した記憶を別のことで埋めて辻褄を合わせようとしとるから、目を覚ますのに少し時間が掛かるだけじゃ。」

改めてすごい人なのだと染谷は認識する。この人を敵に回すと終わりだな。

――――

赤乃様は自由だ。銀髪だけでも目立つのに瞳が赤いので、人の注意が全部彼に集まるのに、全く気にしていない。

海静様の好きな焼肉に連れて行けというので、二人は昼間から焼肉店で肉を焼いていた。

「これが食べたかったんじゃぁ！この肉！海静が上手そうにいつも食べて居ったから気になってな！」

そう言ってバクバク食べている。問題解決するとか言っといて、本当にどうするんだろう…。早く海静様に戻ってもらいたい…。染谷は心配した。

「これを食べ終わったら、秋成に会いに行く。車を用意せぃ。」

心を読まれたかのように染谷はびっくりした。

『お前の考えとることなんぞ分かっておるわ。頭の中に入り込むのが得意での。』

お、恐ろしい…読心術という生易しいものではなく、頭の中に直接語りかけてくる。

染谷は恐怖を感じた。ほんとに早く海静様に戻って欲しい…。

赤乃はたらふく焼肉を食べると、はぁ食った食ったとお腹をさすり、用意された車に乗り込んだ。

「秋成様は今外務省に居られるそうです。海静様が会いたいと言っていると話しましたら時間を作ってくれるとの事で、伊集院の自宅で待ち合わせです。」

「ふん、時間を作るじゃと？偉そうにっ。ワシを何歳じゃと思っておるんじゃ…。」

「…秋成様は事情を知りませんので、海静様がその容姿ですと驚かれるかと。」

「なんでワシがアイツに気を遣わねばならんのじゃ。秋成に会うのは春成の体におった時以来だがな、アイツは嫌いじゃ。」

私もです。と頭の中で染谷は同感した。

「そうじゃろうな、海静を利用しようと企んどる張本人だからの。」

「いちいち頭の中を読まないで頂けますか？！安心してお傍に居れません！」

「おぉ、すまんすまん。ついな…。」

染谷はできるだけ無心で伊集院家に車を走らせた。これ以上余計な事を考えると赤乃様に何もかもばれてしまう。