20 / 21
⑳
しおりを挟む*
穂高がまた案山子の事を話してくれたと浩輔から聞いた。座敷童という設定にしたらしい。願い事を叶えてくれて、叶えたらいなくなるという都合のいい話を穂高はにわかに信じたようだった。穂高の反応に浩輔は少し引っかかるものがあると話した。
「願い事叶えたら神様はおらんなるって言うたらすごい残念そうな顔した」
「そうなの……」
「兄ちゃん、泉川に何話したの」
「何って、別に」
「兄ちゃんは人たらしやから」
「なんだそれ」
若干の斜め下からの発言でよかったと崇は胸をなでおろした。もしかして浩輔は自分がそうである事を知っているけど知らないふりをしてくれているのかもしれない。
「稲刈りの時に案山子は撤去するし、それまでにうまく進めばいいなぁ」
「うん」
二人はそうやって穂高を見守っていたが穂高は一歩が踏み出せずにいた。稲刈りは土日に行われるから案山子が立っていられるのは稲刈りまでだ。案山子として相談に乗ってあげられなくなる。穂高がこのまま前に進めない状態だと心配だ。今日行ったら強めに背中を押そう。そう思って穂高に逢ったが、浩輔に言われた通り穂高は崇に興味を持っている様だった。
「僕、案山子さんと会いたいです」
綺麗な顔してなんて可愛い事を言う子なんだ。いやいや、今はそういう事じゃなくて。相手は中学生なんだから真に受けて喜んでる場合じゃない。自分はいなくなる案山子の神様としてここに居て、穂高にアドバイスをしに来たんだ。一歩を踏み出す勇気をこの子にあげたい。どうしたら……。
「病気であることは悪い事じゃない。恥ずかしい事じゃない。自分をちゃんと大事にしてやれ。きっと大丈夫。友達が手伝ってくれる」
浩輔、後は頼んだ。突き放す様に言ってしまったけれど、自分に飛び込んできそうな彼を受け止める余裕が、今の自分にはないような気がした。あんなに真っすぐ自分の気持ちを言えるんだ。きっと大丈夫。自分に言い聞かせるように崇は山側から家へ帰った。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

今夜のご飯も一緒に食べよう~ある日突然やってきたヒゲの熊男はまさかのスパダリでした~
松本尚生
BL
瞬は失恋して職と住み処を失い、小さなワンルームから弁当屋のバイトに通っている。
ある日瞬が帰ると、「誠~~~!」と背後からヒゲの熊男が襲いかかる。「誠って誰!?」上がりこんだ熊は大量の食材を持っていた。瞬は困り果てながら調理する。瞬が「『誠さん』って恋人?」と尋ねると、彼はふふっと笑って瞬を抱きしめ――。
恋なんてコリゴリの瞬と、正体不明のスパダリ熊男=伸幸のお部屋グルメの顛末。
伸幸の持ちこむ謎の食材と、それらをテキパキとさばいていく瞬のかけ合いもお楽しみください。




馬鹿な先輩と後輩くん
ぽぽ
BL
美形新人×平凡上司
新人の教育係を任された主人公。しかし彼は自分が教える事も必要が無いほど完璧だった。だけど愛想は悪い。一方、主人公は愛想は良いがミスばかりをする。そんな凸凹な二人の話。
━━━━━━━━━━━━━━━
作者は飲み会を経験した事ないので誤った物を書いているかもしれませんがご了承ください。
本来は二次創作にて登場させたモブでしたが余りにもタイプだったのでモブルートを書いた所ただの創作BLになってました。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる