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7)貪の儀 (*)

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「お前の飯は美味かった……」

「まだ言うのかよ」

「任せて正解だったな。狩は俺がするから、お前は美味い米を炊いてくれ」

「あんなのでいいならいつでも……」

「頼む」

 そう言いながら迦楼羅は俺の口を吸い続けていた。ゆっくりとまるで熟れた桃にかぶりつくのが勿体ないみたいにゆっくりと甘噛みされ身震いが起きる。俺は漏れそうになる声をなんとか抑えていた。

 第三の儀式は俺と迦楼羅と証人の三人で行われる。悪趣味としか思えないのだが、証人に契りの瞬間を見届けてもらって『貪の儀』が完結するらしい。この瞬間もその証人は衝立の向こう側にいて、契りを目視せんと待っている。契りというのは同衾の事。つまり俺と迦楼羅が繋がっている所を証人に晒すと言うなんとも恥ずかしい事をしなければならないのだ。

「本当にするのか」

「何だ、恥ずかしいのか」

「恥ずかしいに決まってるだろ。こういうのは二人だけでするものなんだから」

「毎回ではない、儀式のとき、この一回のみだ。儀式なのだから致し方あるまい」

「本当にこんな儀式が昔からあるのか。迦楼羅、長なんだから方法変えろよ。せめて目と耳の悪い爺さんがよかった」

「年寄りは何を言うか分からん。信頼のおける者でなければ」

「でも、なんで、よりによって……」

 黒丸なんだよ!

 心の声が黒丸にも聞こえたのか、黒丸がぼそりと喋る。

「頭の信頼を頂けるなんて光栄です」

「『光栄です』じゃねぇよ!なんでこの役目を引き受けたんだ、黒丸!嫌じゃないのか!」

「好き好んでしている訳ではない。これは頭が一番私を信頼しているという証だ。断る理由はない」

「俺の事嫌ってるくせに……んぅっ、ぅあっ……」

「俺の愛撫が足りないのか、雰囲気を壊すな、柚果」

 そう言って迦楼羅は前から抱き締めて腕を回し、背中の着物の切込みから両手を差しいれた。

 温かい手に優しく背筋をなぞられて腰がのけぞる。

「誰もお前を嫌ってはいないぞ」  

 黒丸が衝立の向こうから答えた。迦楼羅は手を休めない。

「深山でさえ俺が伴侶になるのを良くない事だと……っ、思ってる」

「良くない事だろうがなんだろうが儀式で異議は問われた」

「迦楼羅に闘いを挑んでまで反対したい奴はいないだろう。っぁ……俺が伴侶になるっ、より自分の命が惜しいに決まってる」

「ならば受け入れればいい。お前が頭の伴侶になる事より自分の命が大切ならば黙っているべきだ」

「そんなっ、単純に……」

「どうにもお前はこちらに集中したくないとみえる」
 
 黒丸との会話が続いて迦楼羅が苛立ち俺の着物を前から剥いだ。肩が冷えた空気に晒されて身を竦めると迦楼羅が羽でそっと俺を包んだ。羽根で隠されると少し安心した。黒丸は衝立から顔を覗かせる事は無いがそこにいる。

「事を複雑化しても何もいいことはない。単純で良いのだ。強き者が弱き者を守り、弱き者は強き者を支える。助け合いながら我らは生き抜くのだ。
 我が伴侶となるならばそろそろ俺に集中してもらいたいものだ。人が触れぬところはどこも柔い。ほら、ここを触られると気持ちがいいだろう」

 そう言って今度は腰回りをゆったりとなぞった。

「ッあっッ……」

「お前の声は慾をそそるな。罪な声だ。黒丸に聞かせるのは惜しいが今回ばかりは致し方ない」

 低い声で囁かれるとずんと中心が熱くなった。

「あっ……」

 褥に崩れるとそのまま迦楼羅が覆いかぶさった。

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