7 / 12
7)貪の儀 (*)
しおりを挟む「お前の飯は美味かった……」
「まだ言うのかよ」
「任せて正解だったな。狩は俺がするから、お前は美味い米を炊いてくれ」
「あんなのでいいならいつでも……」
「頼む」
そう言いながら迦楼羅は俺の口を吸い続けていた。ゆっくりとまるで熟れた桃にかぶりつくのが勿体ないみたいにゆっくりと甘噛みされ身震いが起きる。俺は漏れそうになる声をなんとか抑えていた。
第三の儀式は俺と迦楼羅と証人の三人で行われる。悪趣味としか思えないのだが、証人に契りの瞬間を見届けてもらって『貪の儀』が完結するらしい。この瞬間もその証人は衝立の向こう側にいて、契りを目視せんと待っている。契りというのは同衾の事。つまり俺と迦楼羅が繋がっている所を証人に晒すと言うなんとも恥ずかしい事をしなければならないのだ。
「本当にするのか」
「何だ、恥ずかしいのか」
「恥ずかしいに決まってるだろ。こういうのは二人だけでするものなんだから」
「毎回ではない、儀式のとき、この一回のみだ。儀式なのだから致し方あるまい」
「本当にこんな儀式が昔からあるのか。迦楼羅、長なんだから方法変えろよ。せめて目と耳の悪い爺さんがよかった」
「年寄りは何を言うか分からん。信頼のおける者でなければ」
「でも、なんで、よりによって……」
黒丸なんだよ!
心の声が黒丸にも聞こえたのか、黒丸がぼそりと喋る。
「頭の信頼を頂けるなんて光栄です」
「『光栄です』じゃねぇよ!なんでこの役目を引き受けたんだ、黒丸!嫌じゃないのか!」
「好き好んでしている訳ではない。これは頭が一番私を信頼しているという証だ。断る理由はない」
「俺の事嫌ってるくせに……んぅっ、ぅあっ……」
「俺の愛撫が足りないのか、雰囲気を壊すな、柚果」
そう言って迦楼羅は前から抱き締めて腕を回し、背中の着物の切込みから両手を差しいれた。
温かい手に優しく背筋をなぞられて腰がのけぞる。
「誰もお前を嫌ってはいないぞ」
黒丸が衝立の向こうから答えた。迦楼羅は手を休めない。
「深山でさえ俺が伴侶になるのを良くない事だと……っ、思ってる」
「良くない事だろうがなんだろうが儀式で異議は問われた」
「迦楼羅に闘いを挑んでまで反対したい奴はいないだろう。っぁ……俺が伴侶になるっ、より自分の命が惜しいに決まってる」
「ならば受け入れればいい。お前が頭の伴侶になる事より自分の命が大切ならば黙っているべきだ」
「そんなっ、単純に……」
「どうにもお前はこちらに集中したくないとみえる」
黒丸との会話が続いて迦楼羅が苛立ち俺の着物を前から剥いだ。肩が冷えた空気に晒されて身を竦めると迦楼羅が羽でそっと俺を包んだ。羽根で隠されると少し安心した。黒丸は衝立から顔を覗かせる事は無いがそこにいる。
「事を複雑化しても何もいいことはない。単純で良いのだ。強き者が弱き者を守り、弱き者は強き者を支える。助け合いながら我らは生き抜くのだ。
我が伴侶となるならばそろそろ俺に集中してもらいたいものだ。人が触れぬところはどこも柔い。ほら、ここを触られると気持ちがいいだろう」
そう言って今度は腰回りをゆったりとなぞった。
「ッあっッ……」
「お前の声は慾をそそるな。罪な声だ。黒丸に聞かせるのは惜しいが今回ばかりは致し方ない」
低い声で囁かれるとずんと中心が熱くなった。
「あっ……」
褥に崩れるとそのまま迦楼羅が覆いかぶさった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
【完結】あなたに撫でられたい~イケメンDomと初めてのPLAY~
金色葵
BL
創作BL
Dom/Subユニバース
自分がSubなことを受けれられない受け入れたくない受けが、イケメンDomに出会い甘やかされてメロメロになる話
短編
約13,000字予定
人物設定が「好きになったイケメンは、とてつもなくハイスペックでとんでもなくドジっ子でした」と同じですが、全く違う時間軸なのでこちらだけで読めます。
愛する者の腕に抱かれ、獣は甘い声を上げる
すいかちゃん
BL
獣の血を受け継ぐ一族。人間のままでいるためには・・・。
第一章 「優しい兄達の腕に抱かれ、弟は初めての発情期を迎える」
一族の中でも獣の血が濃く残ってしまった颯真。一族から疎まれる存在でしかなかった弟を、兄の亜蘭と玖蘭は密かに連れ出し育てる。3人だけで暮らすなか、颯真は初めての発情期を迎える。亜蘭と玖蘭は、颯真が獣にならないようにその身体を抱き締め支配する。
2人のイケメン兄達が、とにかく弟を可愛がるという話です。
第二章「孤独に育った獣は、愛する男の腕に抱かれ甘く啼く」
獣の血が濃い護は、幼い頃から家族から離されて暮らしていた。世話係りをしていた柳沢が引退する事となり、代わりに彼の孫である誠司がやってくる。真面目で優しい誠司に、護は次第に心を開いていく。やがて、2人は恋人同士となったが・・・。
第三章「獣と化した幼馴染みに、青年は変わらぬ愛を注ぎ続ける」
幼馴染み同士の凛と夏陽。成長しても、ずっと一緒だった。凛に片思いしている事に気が付き、夏陽は思い切って告白。凛も同じ気持ちだと言ってくれた。
だが、成人式の数日前。夏陽は、凛から別れを告げられる。そして、凛の兄である靖から彼の中に獣の血が流れている事を知らされる。発情期を迎えた凛の元に向かえば、靖がいきなり夏陽を羽交い締めにする。
獣が攻めとなる話です。また、時代もかなり現代に近くなっています。
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる