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少年編 第1章
主人 危機一髪
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声がする。
「―――――・・・ァス・・・リアス・・・、エリアス様!!」
「―――――・・・はっ。」
気付くと殆ど全裸の僕の体にはシーツが掛けられレナードが僕の顔を包んでいた。僕の手の縄は全て解かれていて代わりに公爵が床に跪いて後ろ手に体を縛られていた。
隠れドアの入口前には父と義母、公爵の横にはハンス執事にライリーとノアまで居た。どうなっているんだ、そうレナードは小さな声で呟き、小刻みに震える僕の上着を整えようとしていた。
縛られていながらも公爵はレナードに怒鳴り散らした。
「こんな事になるなんて、レナード、やはりお前が企んだんだな」
「企んだも何も、私はただエリアス様を探してお部屋に参っただけです」
そう言いながらレナードはベッドで倒れている僕の前に立ちはだかり縛られている公爵を見た。
「レナード、この事を知っていてお前はここに入り込んだのか」
父がポツリと呟く。
「いえ、私はただ更なる執事の勲位を目指して公爵様のところで修行をしようとそう思って参ったのです。ですが、ですが、公爵様は・・・いつも私を触って……」
うぅ・・・とレナードは手で顔を覆った。
それはまるでレナードさえも彼から卑猥な虐待を受けているのではないかと思わせる形となり、公爵は釈明をしようとした。
「違うッ!違うぞ!私はレナードには何もしていない!」
「指一本触れていないとそう誓えるのですか?」
父が詰め寄り、レナードは顔を覆ったまま更に大きく嗚咽の声を上げた。
「俺の友人の執事もオズモンド公爵に酷い事をされたと泣いていた。今日はエリアスがここに来るって聞いていたから心配してきたんだ。やっぱりだ。」
ライリーが追い討ちを掛ける。
「エリアス様は美しい方です。もしかして自分と同じような目に遭ってしまわれているのかと心配で・・・。来てみればこの様なことに・・・あぁ・・・私が悪いのです。この事をもっと早くに伯爵やエリアス様に報告していれば・・・うぅぅ・・・」
レナードの悲痛な言葉にならない語尾に父は憤慨した。
「なんと言うことです、公爵。女王に仕える身でありながらこの様な失態、見過ごす訳には行きません。英国真摯の名折れです。貴方の爵位は剥奪となるでしょう。その身を振り返れば致し方ない事。これから反省なさいませ。私は警察と話をせねばなりません。陛下へも手紙を書かねば」
父は怒りながら、しかし僕をチラリと見遣ると見ていられないと思ったのかその部屋から義母を連れて出て行った。
公爵は膝を折ったまま、クソゥクソゥッと頭を床に叩きつけて喚いていた。
僕はレナードに手伝ってもらって体を起こし、服の乱れを直して部屋を出る。
ハンスさんに何か合図を送ったレナードは、僕が頭を打たないように秘密のドアの入口で手の平を僕の頭に乗せてくぐらせた。そしてライリーとノアもその後に続いた。
三人に支えられながら階段を降りると、そこには伯爵夫人と警察がおり、父が警察に話をしていた。
通常公爵ともなれば地元警察などねじ伏せられる程の力を及ぼすが、今回は爵位の剥奪の可能性と性犯罪の目撃者が多数居る為、どうにも出来ないようだった。伯爵が陛下に直訴すると話している事もあり、動かざるを得ないのだろう。
公爵夫人は泣きもせず、ただただ申し訳ありませんでした、と警察の対応に素直に応じているようだった。
サラのことが気になったが、この場に居ない事を考えると父親の逮捕姿など見ないように部屋へ隔離されているのだと思った。
縛られた後の生々しい痕を見た警察は、また後日事情聴取に行くからと僕はそのまま三人一緒に帰る事を許された。
後は父が何とかしてくれるようだった。
まだ薬でふらつく足元を気遣い、三人がゆっくりと僕を車に乗せる。
エ「ありがとう・・・」
ノ「危なかったよ、エリアス、もうちょっとで取り返しの付かない事になりそうだった」
ラ「公爵は我慢が効かない人間だったな。調査の通りだ。獲物を前に千載一遇をものにしなければと焦りすぎたようだな」
レ「おぞましい人ですよ。プランが上手くいってよかった」
ラ「結構大胆な計画だったもんな」
ノ「ヒヤヒヤしたよ。タイミングが少しでもずれたどうなってたか...」
ラ「まぁレナードが同じ屋敷に居る時点でそんなに心配はしてなかったけどな」
レナードが運転する車の中で、ノアに支えられて僕はまだボゥッとする頭を彼に預けまた意識を手放した。
「―――――・・・ァス・・・リアス・・・、エリアス様!!」
「―――――・・・はっ。」
気付くと殆ど全裸の僕の体にはシーツが掛けられレナードが僕の顔を包んでいた。僕の手の縄は全て解かれていて代わりに公爵が床に跪いて後ろ手に体を縛られていた。
隠れドアの入口前には父と義母、公爵の横にはハンス執事にライリーとノアまで居た。どうなっているんだ、そうレナードは小さな声で呟き、小刻みに震える僕の上着を整えようとしていた。
縛られていながらも公爵はレナードに怒鳴り散らした。
「こんな事になるなんて、レナード、やはりお前が企んだんだな」
「企んだも何も、私はただエリアス様を探してお部屋に参っただけです」
そう言いながらレナードはベッドで倒れている僕の前に立ちはだかり縛られている公爵を見た。
「レナード、この事を知っていてお前はここに入り込んだのか」
父がポツリと呟く。
「いえ、私はただ更なる執事の勲位を目指して公爵様のところで修行をしようとそう思って参ったのです。ですが、ですが、公爵様は・・・いつも私を触って……」
うぅ・・・とレナードは手で顔を覆った。
それはまるでレナードさえも彼から卑猥な虐待を受けているのではないかと思わせる形となり、公爵は釈明をしようとした。
「違うッ!違うぞ!私はレナードには何もしていない!」
「指一本触れていないとそう誓えるのですか?」
父が詰め寄り、レナードは顔を覆ったまま更に大きく嗚咽の声を上げた。
「俺の友人の執事もオズモンド公爵に酷い事をされたと泣いていた。今日はエリアスがここに来るって聞いていたから心配してきたんだ。やっぱりだ。」
ライリーが追い討ちを掛ける。
「エリアス様は美しい方です。もしかして自分と同じような目に遭ってしまわれているのかと心配で・・・。来てみればこの様なことに・・・あぁ・・・私が悪いのです。この事をもっと早くに伯爵やエリアス様に報告していれば・・・うぅぅ・・・」
レナードの悲痛な言葉にならない語尾に父は憤慨した。
「なんと言うことです、公爵。女王に仕える身でありながらこの様な失態、見過ごす訳には行きません。英国真摯の名折れです。貴方の爵位は剥奪となるでしょう。その身を振り返れば致し方ない事。これから反省なさいませ。私は警察と話をせねばなりません。陛下へも手紙を書かねば」
父は怒りながら、しかし僕をチラリと見遣ると見ていられないと思ったのかその部屋から義母を連れて出て行った。
公爵は膝を折ったまま、クソゥクソゥッと頭を床に叩きつけて喚いていた。
僕はレナードに手伝ってもらって体を起こし、服の乱れを直して部屋を出る。
ハンスさんに何か合図を送ったレナードは、僕が頭を打たないように秘密のドアの入口で手の平を僕の頭に乗せてくぐらせた。そしてライリーとノアもその後に続いた。
三人に支えられながら階段を降りると、そこには伯爵夫人と警察がおり、父が警察に話をしていた。
通常公爵ともなれば地元警察などねじ伏せられる程の力を及ぼすが、今回は爵位の剥奪の可能性と性犯罪の目撃者が多数居る為、どうにも出来ないようだった。伯爵が陛下に直訴すると話している事もあり、動かざるを得ないのだろう。
公爵夫人は泣きもせず、ただただ申し訳ありませんでした、と警察の対応に素直に応じているようだった。
サラのことが気になったが、この場に居ない事を考えると父親の逮捕姿など見ないように部屋へ隔離されているのだと思った。
縛られた後の生々しい痕を見た警察は、また後日事情聴取に行くからと僕はそのまま三人一緒に帰る事を許された。
後は父が何とかしてくれるようだった。
まだ薬でふらつく足元を気遣い、三人がゆっくりと僕を車に乗せる。
エ「ありがとう・・・」
ノ「危なかったよ、エリアス、もうちょっとで取り返しの付かない事になりそうだった」
ラ「公爵は我慢が効かない人間だったな。調査の通りだ。獲物を前に千載一遇をものにしなければと焦りすぎたようだな」
レ「おぞましい人ですよ。プランが上手くいってよかった」
ラ「結構大胆な計画だったもんな」
ノ「ヒヤヒヤしたよ。タイミングが少しでもずれたどうなってたか...」
ラ「まぁレナードが同じ屋敷に居る時点でそんなに心配はしてなかったけどな」
レナードが運転する車の中で、ノアに支えられて僕はまだボゥッとする頭を彼に預けまた意識を手放した。
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