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少年編 第1章
54-執事の助っ人
しおりを挟む「部屋に入ってもいいかい?」
「ええ、どうぞ…。」
ハンスさんはとても大人しい性格だ。私よりも10歳も年上の相手に向かって大人しいとは失礼かもしれないが、実際無口でいつもサラ様と奥様のお世話を周りに愚痴一つこぼす事なくこなしている。彼女たちはお世辞にも仕えやすいとは言い難い性格の持ち主なのに、彼には何の不満もないようだった。
純朴な雰囲気と濃い茶色の髪が彼の性格をより穏やかに見せている。仕事も卒なくこなして、オズモンド公爵が手を出さずにいるのは、サラ様と奥様から絶対的な信頼を得ているからだろう。背も高く好青年で、先輩として色々と細かく教えてくれて感謝している。
この家のほとんどを知り尽くしている彼から相談とは一体何だろう。
「実は…君に聞きたいことがあるんだ。」
「何でしょう?」
「君は、…君がここに来た理由を知りたいんだ。」
「…何故それを知りたいのですか?」
「サラ様に…サラ様が君を担当にした理由が分からない。僕は…彼女が幼い頃からここで執事をしている。君が公爵様に売り込んで入って来て、サラ様が…変わっていかれるのをあまり良く思っていない。」
「それはあなたが?それとも公爵が?」
「……」
なある。ハンスさん、お嬢様の事が…。そうと分かれば私の計画は俄然やり易くなる。棚からぼた餅とはこの事だ。
「ハンスさん、公爵の噂、ご存知ですよね?」
「ああ。だが私は口外しない。私の主人の事だ。」
「そうですね…貴方はもし彼の性癖が世間に知れ渡り公爵が爵位を剥奪されるような事があったらどうしますか?」
「それは…脅しなのか?」
「いえ、一般論として話しているんです」
「彼の秘密は俺が守る」
「彼は公爵だが珍しく一つしか爵位を持たない。もし爵位が剥奪され領地も返還されれば、一般人になってしまいます。今持ち上がっている縁談も自然と破談となるでしょう。そして爵位を剥奪された男の娘に縁談など、来ません。ややもすれば変態の娘と揶揄され、恋愛すら難しくなるかもしれない。一方で貴方はもう執事として仕える必要もなくなるでしょう。ひとりの男として生きる事が出来るようになるんです」
「それじゃあ俺は…」
「ええ、サラ様に想いを告げる事が出来るでしょうね、後3年程すれば結婚も可能ですね。しかも貴方は奥様お墨付きの人物。公爵からの信頼も厚い。有望な花婿候補になる可能性は高いのでは?」
「本当に…?」
「あくまで可能性が高いという話です。ハンスさん、私にもここに来た理由がある。守りたい人がいるんです。お互い協力し合えませんか?」
「うん」
私は強力な助っ人の出現に大いに喜ぶ事となった。
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