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少年編 第1章
23-執事 現る
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レナードは愕然とした。主人が裸同然で、ライリーが服を着せようとしている。
その美しい肢体の手首と足首には赤い拘束型が付いているのが見えた。
吐きそうな怒りが込上げる。どういうことだ。ライリー様からバンペルノ様が危ないかもしれないからノア様の家にすぐに行けと言われて来たけれど…。何故こうなっている?
レ:「どういうことです!!!なぜバンペルノ様がこんな姿に!」
怒りを隠せないレナードは拳を握り締め、今にも殴りかかりそうだ。
エリアスはこの前自慰を覚えたばっかりなのに、どうしてこんな事に?!
ノア:「ちぇっ、もっと詰まんない奴が来た。」
ラ:「すまん、レナード。ノアがこんなふうに暴走するなんて思わなかったんだ」
ノア:「暴走って、酷い言われようだなぁ。これはレナードが悪いの!ねっ?エリアス?」
ノアは悪びれもせず口先を尖がらせてブーブー言う。エリアスは着ていたシャツを肩に掛けたまま、ベッドの脇に座り、うな垂れて恐怖に肩を震わせている。レナードが来て尚更体を強張らせていた。
ラ:「ノアがここまでするとは思っていなかったんだ。ノアの執事に電話したら、絶対部屋に近づくな、3時間は入るなといわれているって聞いてな。今日は貴族の会合があって、うちの両親もノアの両親も遠方へ出かけて帰ってこない。俺しか止める奴がいないって気付いてな…。それでレナードにも電話したんだ。ノアの執事も鍵を渡してくれねぇし、ドアは蹴破った…」
ライリーはひとまずレナードに説明すると、エリアスから離れた。レナードに彼を任せるためだ。
レナードは怒りと侮蔑の視線をノアに投げかけながら、震える拳を何とか抑え、エリアスの傍に寄る。
レ:「バンペルノ様…。大丈夫ですか…?今服を」
手を出そうとすると、エリアスはパシンとその腕を振り払った。
エ「君はもう僕の執事なんかじゃない…」
レナードは苦しそうな顔をした。執事でいることが彼の傍にずっといる唯一の方法だ。だが痛々しいエリアスを見ると、彼が嫌ならば彼の傍から離れるのは仕方がないのかもしれないと想った。
女との情事を見た後エリアスはレナードを拒絶していた。汚らわしいと思っているだろう、いやらしいと思っているだろう。女はレナードの恋人ではない。だがそれをどうやって主人に申し開きしていいのかも分からない。女はただの性のはけ口だったのに、そんな事を無垢な彼に話してしまえば、どれ程自分が穢いものかを晒すようなものだ。彼に嫌われる事は隠して起きたかった。彼の傍に居てもいい、全うな人間であると思っていて欲しかった。
しかしそんな自己防衛の感情を優先してしまった故に彼がこんな危険な目に合うなんて…。
レ:「バンペルノ様、遅くなったのは申し訳御座いません。そしてこの様な事態を招く事になったのは、私が貴方に隠し事をし、そして貴方のお傍にずっと付いていなかったせい。全て私の責任です。貴方に起こった事を後で全て私に話してください。そして、私も打ち明けましょう、隠していた事を。執事をくびになるのは、どうぞそれからにして頂けませんか?」
一縷の希望を残そうとレナードは釈明した。
「―――早く服を着せろ。」
「はい」
珍しく命令口調でエリアスはレナードに呟くと、レナードは一切無駄のない動きで彼の身支度を済ませた。
生々しく赤い手首と足首の痕を隠しもせず、エリアスはまだ恐怖に震える体に鞭を打って自分で歩く。
レ:「ライリー様、この度はご連絡下さって有難う御座いました。このご恩は一生忘れません。後日何かお礼をさせてください。」
ラ:「いいよ、そんなの。俺だってエリアスの友人だ。ノアには俺からよく言って聞かせるから…。俺も悪いんだ、ノアをほっといたから…」
そう言うとノアは「ふんっ面白くない!もうちょっとだったのに!」とまだ懲りていないようだ。
ライリーは、レナードを少し引っ張ると、彼の耳元で小さく囁いた。
『未遂に終わっていると聞いた。ただ、キスとアソコは食ったって。』
レナードはまた込上げる怒りを何とか納めて、ライリーに深々とお辞儀をし、ノアにぞっとするような殺意を込めた視線を飛ばすと、ふらつくエリアスを支えて、メルバーン家を後にした。
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