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第二章 王国動乱
ファンタジーの来襲
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最果ての街キッパゲルラ、その領主の館である放蕩者の館では、長い主の不在にどこかひっそりとした雰囲気に包まれていた。
しかしそれも普段のこの場所の話であり、今に当て嵌まるものではなかった。
今の放蕩者の館、そこにはある騒動が巻き起こり、慌ただしくも緊迫した空気に包まれているのだった。
「はっ、留守を任されてるものがこの程度とは・・・主の程度が知れるなぁ?なぁ、おい?」
その騒動の主、隻腕の元騎士マルコム・スターンは、この地を主に代わって治めていた執事のバートラムを見下ろしながらそう勝ち誇る。
「くっ、このバートラムが侮辱されるのはいい・・・しかしヘイニー様を侮辱することは許さん!!」
普段はここでバートラムが仕事を行っているのだろう執務室は、立派な机があるにも拘らずそれは主人のものだと小ぶりな机を持ち込み、そこだけで仕事をしている様子が窺えた。
今やその机もマルコムの足置きと化しており、主人であるヘイニーを馬鹿にするようにその執務机に腰を下ろしている彼に、バートラムは怒りの声と共に掴みかかっていく。
「ぐああぁぁ!!?」
しかしそれも、あっさりと返り討ちにされてしまっていた。
それもマルコムにではなく、彼の横から現れた子供としか思えないシルエットの少女によって。
「バーカ、年を考えろよ爺さん。折角その年までしぶとく生き残ったんだ、こんな所で死にしたくはねぇだろ?」
その少女、アレクはその左右で色の異なる瞳を輝かせると、バートラムに死にたくはないだろうと脅しを掛ける。
バートラムはそんな子供にと反抗する意思を見せていたが、彼女が軽くその目から光線を放ち、壁を焼いて見せると大人しくなっていた。
「はははっ!なぁ、マルコム!あいつらが帰ってきたらどう思うかなぁ?びっくりするかな、それとも絶望するかな?」
「あぁ、楽しみだなアレク。だが、もっと楽しくする方法があるぜ?あいつらにとって大事なこの街を滅茶苦茶にしてやるのさ。そうすりゃもっと―――」
大人しくなったバートラムに楽しげな笑みを浮かべたアレクはマルコムへと振り返ると、その足元をせっつくように飛びついていた。
マルコムはその頭を片方だけになった腕で乱暴に撫でるとぐいと引き寄せ、その耳元で破滅を囁いていた。
「何だぁ?面白そうなことやってんなぁ、おい!俺も混ぜてくれよ?」
その声は、先ほどまでは確かに誰の姿もなかった窓から聞こえていた。
いつの間にか開け放たれていた窓、その前へと腰かけている男は黒い肌に美しい姿をした、見た事がないほど長い耳をした男であった。
「なぁ、お前らもそう思うだろ!」
突然現れたその男に、無言で戦闘態勢を取ったのは流石に手慣れた二人か。
しかし彼らがその男に挑みかかる前に、男は後ろへと振り返ると手を掲げる。
その瞬間、その部屋から屋根がなくなっていた。
「そうさな、わしもひと暴れしたいと思っとった所じゃ」
「いいねいいね!千年ぶりが二千ぶりか知らないけど、未知の土地での戦いか!うーん、詩が捗るなぁ!」
「私も新しい魔法の実験が出来るなら、いいよ」
そしてその向こう側からは、人型の有翼種、ハーピーの大群が現れていた。
彼女達の足に捕まっていたのか、そこからこの部屋へと飛び降りてきたのは、最初の男と同じように見た事も聞いた事もないような種族達であった。
いいや違う、聞いた事ならばあった。
御伽噺や伝説に、必ずと言っていいほど彼らは出てくる。
そうそれは、エルフやドワーフ、ハーフリングやノームといった種族の者達であった。
「はははっ、いいねいいね!!新天地へ、派手に侵攻と行こうじゃないか!!」
自らが口にした言葉に賛同する仲間達に最初の男、肌の黒い恐らくエルフだと思われる男は愉快そうに手を叩いていた。
「な、お前もそう思うだろ?」
「・・・私は、別にどちらでも」
彼は一頻り手を叩いて満足すると、部屋の隅にいつの間にか現れていた黒い髪の絶世の美女へと声を掛けていた。
その黒い髪の美女は、まるで絵画や神話からそのまま出てきたような美人であり、ついぞお目に掛かったことのない美しさであった。
いや違う、彼らは知っていたその姿を美しさを。
何故なら彼らは会った事があったからだ、それと全く同じ姿をした彼女に。
「あ、あぁ・・・そんな、そんなの有り得ない・・・だってお前は、あいつと・・・あいつと一緒にいる筈じゃないか、エクスカリバー!!」
アレクが真っ青な顔をして、震えながら叫ぶ。
そう彼女はエクスカリバーであった、黒い髪をした彼女そのものであったのだ。
「へぇ、流石に有名なんだなあんた。こっちにも知ってる奴がいたぜ?」
「いいえ、違うわ。その子は知っているだけ、私の事を・・・ね、そうでしょ?」
アレクの言葉に、黒いエルフは感心するように黒いエクスカリバーへと振り返る。
彼に話しかけられた黒いエクスカリバーは静かに首を横に振ると、アレクに対して意味深な視線を向けていた。
「・・・お前ら、何者だ?」
黒いエクスカリバーからの視線に怯えるアレクを庇うように前に出たマルコムは、厳しい表情で黒いエルフへと尋ねる。
「はははっ!何者かだって!?何だ、あんた知らないのかい?俺達は御伽噺の住人、ファンタジーの世界からやって来た訪問者さ」
彼の言葉に黒いエルフは愉快そうに笑い声を上げると、芝居がかった仕草で仲間達を紹介するように手を広げると、自分達が何者なのかと名乗っていた。
「あんた、ここの責任者だって?じゃあ、連中に伝えな・・・ファンタジーが攻めてきたってな」
そしてその男は最後にそう口にすると、ニヤリと笑うのだった。
しかしそれも普段のこの場所の話であり、今に当て嵌まるものではなかった。
今の放蕩者の館、そこにはある騒動が巻き起こり、慌ただしくも緊迫した空気に包まれているのだった。
「はっ、留守を任されてるものがこの程度とは・・・主の程度が知れるなぁ?なぁ、おい?」
その騒動の主、隻腕の元騎士マルコム・スターンは、この地を主に代わって治めていた執事のバートラムを見下ろしながらそう勝ち誇る。
「くっ、このバートラムが侮辱されるのはいい・・・しかしヘイニー様を侮辱することは許さん!!」
普段はここでバートラムが仕事を行っているのだろう執務室は、立派な机があるにも拘らずそれは主人のものだと小ぶりな机を持ち込み、そこだけで仕事をしている様子が窺えた。
今やその机もマルコムの足置きと化しており、主人であるヘイニーを馬鹿にするようにその執務机に腰を下ろしている彼に、バートラムは怒りの声と共に掴みかかっていく。
「ぐああぁぁ!!?」
しかしそれも、あっさりと返り討ちにされてしまっていた。
それもマルコムにではなく、彼の横から現れた子供としか思えないシルエットの少女によって。
「バーカ、年を考えろよ爺さん。折角その年までしぶとく生き残ったんだ、こんな所で死にしたくはねぇだろ?」
その少女、アレクはその左右で色の異なる瞳を輝かせると、バートラムに死にたくはないだろうと脅しを掛ける。
バートラムはそんな子供にと反抗する意思を見せていたが、彼女が軽くその目から光線を放ち、壁を焼いて見せると大人しくなっていた。
「はははっ!なぁ、マルコム!あいつらが帰ってきたらどう思うかなぁ?びっくりするかな、それとも絶望するかな?」
「あぁ、楽しみだなアレク。だが、もっと楽しくする方法があるぜ?あいつらにとって大事なこの街を滅茶苦茶にしてやるのさ。そうすりゃもっと―――」
大人しくなったバートラムに楽しげな笑みを浮かべたアレクはマルコムへと振り返ると、その足元をせっつくように飛びついていた。
マルコムはその頭を片方だけになった腕で乱暴に撫でるとぐいと引き寄せ、その耳元で破滅を囁いていた。
「何だぁ?面白そうなことやってんなぁ、おい!俺も混ぜてくれよ?」
その声は、先ほどまでは確かに誰の姿もなかった窓から聞こえていた。
いつの間にか開け放たれていた窓、その前へと腰かけている男は黒い肌に美しい姿をした、見た事がないほど長い耳をした男であった。
「なぁ、お前らもそう思うだろ!」
突然現れたその男に、無言で戦闘態勢を取ったのは流石に手慣れた二人か。
しかし彼らがその男に挑みかかる前に、男は後ろへと振り返ると手を掲げる。
その瞬間、その部屋から屋根がなくなっていた。
「そうさな、わしもひと暴れしたいと思っとった所じゃ」
「いいねいいね!千年ぶりが二千ぶりか知らないけど、未知の土地での戦いか!うーん、詩が捗るなぁ!」
「私も新しい魔法の実験が出来るなら、いいよ」
そしてその向こう側からは、人型の有翼種、ハーピーの大群が現れていた。
彼女達の足に捕まっていたのか、そこからこの部屋へと飛び降りてきたのは、最初の男と同じように見た事も聞いた事もないような種族達であった。
いいや違う、聞いた事ならばあった。
御伽噺や伝説に、必ずと言っていいほど彼らは出てくる。
そうそれは、エルフやドワーフ、ハーフリングやノームといった種族の者達であった。
「はははっ、いいねいいね!!新天地へ、派手に侵攻と行こうじゃないか!!」
自らが口にした言葉に賛同する仲間達に最初の男、肌の黒い恐らくエルフだと思われる男は愉快そうに手を叩いていた。
「な、お前もそう思うだろ?」
「・・・私は、別にどちらでも」
彼は一頻り手を叩いて満足すると、部屋の隅にいつの間にか現れていた黒い髪の絶世の美女へと声を掛けていた。
その黒い髪の美女は、まるで絵画や神話からそのまま出てきたような美人であり、ついぞお目に掛かったことのない美しさであった。
いや違う、彼らは知っていたその姿を美しさを。
何故なら彼らは会った事があったからだ、それと全く同じ姿をした彼女に。
「あ、あぁ・・・そんな、そんなの有り得ない・・・だってお前は、あいつと・・・あいつと一緒にいる筈じゃないか、エクスカリバー!!」
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そう彼女はエクスカリバーであった、黒い髪をした彼女そのものであったのだ。
「へぇ、流石に有名なんだなあんた。こっちにも知ってる奴がいたぜ?」
「いいえ、違うわ。その子は知っているだけ、私の事を・・・ね、そうでしょ?」
アレクの言葉に、黒いエルフは感心するように黒いエクスカリバーへと振り返る。
彼に話しかけられた黒いエクスカリバーは静かに首を横に振ると、アレクに対して意味深な視線を向けていた。
「・・・お前ら、何者だ?」
黒いエクスカリバーからの視線に怯えるアレクを庇うように前に出たマルコムは、厳しい表情で黒いエルフへと尋ねる。
「はははっ!何者かだって!?何だ、あんた知らないのかい?俺達は御伽噺の住人、ファンタジーの世界からやって来た訪問者さ」
彼の言葉に黒いエルフは愉快そうに笑い声を上げると、芝居がかった仕草で仲間達を紹介するように手を広げると、自分達が何者なのかと名乗っていた。
「あんた、ここの責任者だって?じゃあ、連中に伝えな・・・ファンタジーが攻めてきたってな」
そしてその男は最後にそう口にすると、ニヤリと笑うのだった。
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