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第二章 王国動乱
終わりの始まり
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「始めに、このような事態になってしまった事を皆様にお詫び致します」
おこもりの塔での最後の戦いから数日、リリーナはかつて自らが王位の即位を宣言したバルコニーに再び立つと、開口一番そう口にしていた。
彼女の口から終戦宣言と、勝利の喜びが告げられると考えていた民衆はそれに戸惑ったが、誠心誠意を込めて頭を下げるリリーナの姿に不満が口に上ることはなかった。
「今回の内乱がこうして終結することが出来たのは、多くの人の尽力があったからです。まずはそれに深く感謝を。しかしそれは、私一人の力ではこの事態を解決も出来なかったという事実を示してもいます。それはつまり、私の下から離反し反旗を翻した多くの貴族達、彼らの存在も私の不甲斐なさが招いた結果ともいえるです」
この場に詰めかけた民衆達のざわめきが収まるのを待って続きを口にし始めたリリーナは、最初にこの内乱を収めるのに尽力した者達へと感謝を告げる。
それに彼女の背後の主に右側に集まった貴族達から、沸き上がるように歓声が漏れ聞こえてくる。
そしてそれが反旗を翻した者達への言及へと及ぶと、今度は逆側の左側に集まった貴族達から息を呑むような悲鳴に似た声が響いて来ていた。
「よって、私は彼らの罪は問わないことに決めました。彼らにはこれまでと変わらぬ、忠節と働きを求めます」
反旗を翻したものに罪は問わない、そう宣言したリリーナに彼女の背後の左側から歓声が沸き起こる。
それはやがて嗚咽に変わり、右側の貴族達からも彼らに同情する声や安堵を喜ぶ声が聞こえてきていた。
「一つ、私から皆様に問い掛けたいことがあります」
リリーナに協力し、勝ち組として見られていた貴族達からも多くの者が、反旗を翻した者達の方へと歩み寄っていた。
お互いに結婚し合う貴族同士において血縁関係は珍しくもない、彼らの中には親戚同士で敵味方に分かれ戦った者達も少なくはないだろう。
そんな彼らにとって、リリーナの宣言はまさに福音であった。
彼らはそれを喜び合い、再びリリーナが口が開いたことで今度はそちらへと視線を向けていた。
「ジーク・オブライエンは逆賊なのでしょうか?確かに彼は、私がこの手で大逆人として処刑いたしました。しかし彼がこれまで、この国の重鎮として国家に対し身を粉にして仕えてきたのもまた、事実なのです。彼が国境に身を置き、オスティアの魔の手からこの国を守り続けてきたからこそ、今日のリグリアの姿がある・・・それもまた、紛れもない事実なのです」
リリーナが民衆に、そしてその背後の貴族達に問い掛けたかったこと、それはジーク・オブライエンについてだった。
「彼は忠臣でした。そして最後に反旗を翻し、私の手によって処刑された。彼が犯した罪は、既に私の手によって裁かれているのです。これ以上の汚名を彼に被せる事を、私は望みません。彼が忠臣であったのか、逆賊であったのか・・・その評価は、後世の者の手に委ねようではありませんか?」
ジークが為したことが悪だったのか、それとも正しい行いであったのか。
それは全て後世の人々によって判断されることだと、リリーナは語る。
その言葉に彼女の背後から疎らな拍手が上がり、それはやがて周囲を巻き込んだ万雷の拍手へと変わっていた。
「・・・立派じゃない、あの女王様」
「そうですかい?あっしはもっと悪し様に言った方が、色々と都合がいいと思うんですがねぇ」
「そんな事ないわよ・・・ほら、あれ」
ユーリは救国の英雄の一人として、リリーナの背後の貴族達の列に加わることが許されていた。
そしてシャロン達もその仲間として、その背後にひっそりとではあるが席が用意されていたのだった。
「お父様・・・うわぁぁぁぁん!!!」
「大丈夫、大丈夫だから・・・父上の代わりは、僕がきっと・・・務めて見せるから」
リリーナの発言は甘いと首を捻るエディにシャロンが視線を向けたのは、兄の胸の中で泣きじゃくるエスメラルダと、彼女を抱きかかえながら悲壮な覚悟を滲ませるマーカスの姿であった。
そこには余りに深すぎる悲しみがあった、彼らのそれを少しでも軽く出来るならリリーナの言葉にも意味はあっただろう、ユーリはそう感じながらどこか遠い目で二人の姿を見守っていたのだった。
「・・・やっぱり、変ですわ」
「オリビア、何か言ったか?」
「う、うぅん、何でもありませんの!」
ユーリのすぐ隣には、彼の主筋にあたるオリビアの姿があった。
彼女は怪我で参加出来ないヘイニーの代理としてこの場にいるのであったが、リリーナへと顔を向けてはどこか真剣な表情を見せていた。
「最後に、皆様にお話ししなければならない話があります。この世界について・・・いえ正確に言うならば、この世界の外について」
リリーナが最後にと前置きして話し出した言葉に、あの場でジークからそれについて聞かされたユーリだけが激しく反応し立ち上がる。
そんな彼に対して、周りは不思議そうな表情を向けていた。
しかしそれも僅かな間だけだ、何故ならそんな些細な騒動など問題にならない出来事が飛び込んできたのだから。
「た、大変です!!グレートウォールが・・・グレートウォールが崩壊し、そこから謎の軍勢が攻めてきた模様です!!!」
転がり込むように飛び込んできた兵士が告げたその事実に、その場は騒然となる。
特に彼が口にした地名に関りが深いユーリの一行は、パニック状態となっていた。
「・・・そう、彼らが」
一人、リリーナだけがその報告を耳にしても動揺することなく、まるで初めからそれが分かっていたかのように冷静に頷くのだった。
おこもりの塔での最後の戦いから数日、リリーナはかつて自らが王位の即位を宣言したバルコニーに再び立つと、開口一番そう口にしていた。
彼女の口から終戦宣言と、勝利の喜びが告げられると考えていた民衆はそれに戸惑ったが、誠心誠意を込めて頭を下げるリリーナの姿に不満が口に上ることはなかった。
「今回の内乱がこうして終結することが出来たのは、多くの人の尽力があったからです。まずはそれに深く感謝を。しかしそれは、私一人の力ではこの事態を解決も出来なかったという事実を示してもいます。それはつまり、私の下から離反し反旗を翻した多くの貴族達、彼らの存在も私の不甲斐なさが招いた結果ともいえるです」
この場に詰めかけた民衆達のざわめきが収まるのを待って続きを口にし始めたリリーナは、最初にこの内乱を収めるのに尽力した者達へと感謝を告げる。
それに彼女の背後の主に右側に集まった貴族達から、沸き上がるように歓声が漏れ聞こえてくる。
そしてそれが反旗を翻した者達への言及へと及ぶと、今度は逆側の左側に集まった貴族達から息を呑むような悲鳴に似た声が響いて来ていた。
「よって、私は彼らの罪は問わないことに決めました。彼らにはこれまでと変わらぬ、忠節と働きを求めます」
反旗を翻したものに罪は問わない、そう宣言したリリーナに彼女の背後の左側から歓声が沸き起こる。
それはやがて嗚咽に変わり、右側の貴族達からも彼らに同情する声や安堵を喜ぶ声が聞こえてきていた。
「一つ、私から皆様に問い掛けたいことがあります」
リリーナに協力し、勝ち組として見られていた貴族達からも多くの者が、反旗を翻した者達の方へと歩み寄っていた。
お互いに結婚し合う貴族同士において血縁関係は珍しくもない、彼らの中には親戚同士で敵味方に分かれ戦った者達も少なくはないだろう。
そんな彼らにとって、リリーナの宣言はまさに福音であった。
彼らはそれを喜び合い、再びリリーナが口が開いたことで今度はそちらへと視線を向けていた。
「ジーク・オブライエンは逆賊なのでしょうか?確かに彼は、私がこの手で大逆人として処刑いたしました。しかし彼がこれまで、この国の重鎮として国家に対し身を粉にして仕えてきたのもまた、事実なのです。彼が国境に身を置き、オスティアの魔の手からこの国を守り続けてきたからこそ、今日のリグリアの姿がある・・・それもまた、紛れもない事実なのです」
リリーナが民衆に、そしてその背後の貴族達に問い掛けたかったこと、それはジーク・オブライエンについてだった。
「彼は忠臣でした。そして最後に反旗を翻し、私の手によって処刑された。彼が犯した罪は、既に私の手によって裁かれているのです。これ以上の汚名を彼に被せる事を、私は望みません。彼が忠臣であったのか、逆賊であったのか・・・その評価は、後世の者の手に委ねようではありませんか?」
ジークが為したことが悪だったのか、それとも正しい行いであったのか。
それは全て後世の人々によって判断されることだと、リリーナは語る。
その言葉に彼女の背後から疎らな拍手が上がり、それはやがて周囲を巻き込んだ万雷の拍手へと変わっていた。
「・・・立派じゃない、あの女王様」
「そうですかい?あっしはもっと悪し様に言った方が、色々と都合がいいと思うんですがねぇ」
「そんな事ないわよ・・・ほら、あれ」
ユーリは救国の英雄の一人として、リリーナの背後の貴族達の列に加わることが許されていた。
そしてシャロン達もその仲間として、その背後にひっそりとではあるが席が用意されていたのだった。
「お父様・・・うわぁぁぁぁん!!!」
「大丈夫、大丈夫だから・・・父上の代わりは、僕がきっと・・・務めて見せるから」
リリーナの発言は甘いと首を捻るエディにシャロンが視線を向けたのは、兄の胸の中で泣きじゃくるエスメラルダと、彼女を抱きかかえながら悲壮な覚悟を滲ませるマーカスの姿であった。
そこには余りに深すぎる悲しみがあった、彼らのそれを少しでも軽く出来るならリリーナの言葉にも意味はあっただろう、ユーリはそう感じながらどこか遠い目で二人の姿を見守っていたのだった。
「・・・やっぱり、変ですわ」
「オリビア、何か言ったか?」
「う、うぅん、何でもありませんの!」
ユーリのすぐ隣には、彼の主筋にあたるオリビアの姿があった。
彼女は怪我で参加出来ないヘイニーの代理としてこの場にいるのであったが、リリーナへと顔を向けてはどこか真剣な表情を見せていた。
「最後に、皆様にお話ししなければならない話があります。この世界について・・・いえ正確に言うならば、この世界の外について」
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転がり込むように飛び込んできた兵士が告げたその事実に、その場は騒然となる。
特に彼が口にした地名に関りが深いユーリの一行は、パニック状態となっていた。
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