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第二章 王国動乱
王都急襲
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苛立ちに足音も荒く帰りを急ぐルーカスの前には、彼よりも先を急いでいるフェルデナンドの姿があった。
それもその筈だ、ここはまだティカロンの街の中であり、ここを根城にしているティカロン同盟と称する連中がリリーナ側についた以上、ここは敵地にも等しいのだから。
しかしフェルデナンドはそんな状況にありながら、ふと足を止める。
「一体何を考えているのだ、あの連中は!?これだけの条件を約束したのだぞ!だというのに・・・あぁ、忌々しい!見せ金に持ってきた金貨を置いてきてしまったではないか!!ん、どうしたフェルデナンド?急に立ち止まって・・・先を急ぐのではなかったのか?」
彼の背後をどすどすと荒い足音を立てながら通りがかる周囲の者達を威嚇しながら歩いていたルーカスも、その横を通り過ぎると彼に異変に気がつき不思議そうに声を掛けていた。
「あぁ、ちょっとね・・・考え事をしていたんだ。気ままに暴れていればいい君と違って、私には責任があるからね」
「何だと!?」
こちらに声を掛けてきたルーカスに向かって、フェルデナンドは小馬鹿にしたように笑う。
そんな彼の態度に、ルーカスは激高するとその胸元に掴みかかっていた。
「まぁいい・・・それよりも何か考えついたのだろう?言ってみるといい、特別に我が聞いてやろう」
「その態度はちょっと気になるけど・・・いいよ、話そう」
しかしルーカスは、すぐに掴んだフェルデナンドの胸元を放していた。
今までの彼ならば有り得ないその振る舞いは、度重なる失敗で少なからず彼も成長したという証だった。
「王都を急襲するのさ」
「王都を急襲?ふんっ、奴らの軍が合流する前にか?」
フェルデナンドが考えた次の一手、それは王都を急襲するというものであった。
しかしその考えは、今まさに敵が手を組んだことを目撃した彼らからすれば当然の事で、ルーカスもそれぐらい分かっているとつまらなそうな表情を見せていた。
「それもあるが、それだけじゃない。王都を急襲し、リリーナを殺してしまうのさ。そうすれば奴らは旗印を失って瓦解する。後はどうとでもなるという寸法さ」
もう話は終わりかと呆れた表情を見せるルーカスに、まだ続きがあるから黙って聞けとフェルデナンドは口の前に指を立てている。
そうして彼が口にしたのは、リリーナを殺すという乾坤一擲の一手であった。
「リリーナを殺す・・・?そうか、その手があったか!」
リリーナという旗印を失ってしまえば、他に担ぐもののないリリーナ陣営は次の主導権の座を巡って内部で争い合う事になるだろう、そうなれば後はどうとでも料理出来る。
フェルデナンドの言葉にそれを理解したルーカスは、空を見上げると叫び声を上げた。
「ふははっ、そうだな!貴様の言う通りだ、フェルデナンド!!何の事はない、奴らなどあの小娘一人殺してしまえば烏合の衆ではないか!!こうしてはいられん、急いで帰るぞ!!そして王都に進軍するのだ!」
大声を上げるルーカスに、フェルデナンドは周りに聞かれていないかと焦った表情で周囲を見渡している。
幸いな事にここはもう街の外れに差し掛かっており、周りに人影の姿はなかった。
「どうしたフェルデナンド、急ぐのではないのか!?」
「はぁ・・・まぁ、確かに急いだ方がよさそうだ!」
フェルデナンドの心配をよそに、さっさと一人で飛び出していたルーカスはうきうきとした様子で彼も急ぐように促してくる。
フェルデナンドはそんな彼の様子に深々と溜息をつくと、自らも彼らと共にこの街までやって来た護衛が滞在している宿に向かって駆けだしていくのだった。
◇◆◇◆◇◆
「ふははははっ、何だ簡単ではないか!!」
馬の上に立ち上がり、器用にバランスを取っては腕を組んで笑い声を上げているルーカスの視線の先には、王都を取り囲む城壁の姿が映っていた。
「・・・各地に陽動を掛ける部隊を僕が派遣したから、ここまで簡単に来れたんだけどね」
落馬という場合によっては命を失いかねない事故、それが起こりうる軽挙な振る舞いをしているルーカスにフェルデナンドは頭を抱えながら、ここまでの道のりもそう簡単ではなかったと口にする。
「ん、そうなのか?だが結局のところ、簡単だったという事に違いはないのだろう!?」
「まぁ、そうだね。簡単だった、ここまでは」
そう口にしたフェルデナンドの目線の先には、丘の上に立つ砦の姿が映っていた。
「オールドキープ要塞・・・通称『狼の巣』か」
その砦の名前はオールドキープ要塞、かつては狼の巣と呼ばれ、リグリア王国最強と謳われた騎士団が根城とした王都の最終防衛拠点。
彼らは、その目の前にまで迫っていたのだった。
「後は、あれを落とすだけだろう?」
「・・・あぁ、そうだね」
曲乗りを止め普通に馬に跨ったルーカスは、フェルデナンドにそう尋ねる。
フェルデナンドはそれに、僅かな沈黙を挟んで答えていた。
「ふははっ、そうかそうかっ!!では、行こうではないか!!いざっ、オールドキープ要塞へ!!」
後はあの砦を落とすだけ、それを確認したルーカスは獰猛に笑うと馬を竿立ちにする。
そして掛け声と共に一気に駆けだしたルーカスに、兵士達も雄たけびを上げると突撃していくのだった。
◇◆◇◆◇◆
「・・・後は任せる」
「はっ」
ルーカスが先頭を駆ける軍勢の後方、オールドキープ要塞の足元に広がるパラスケスの森の木々越しにその姿を眺めていたジーク・オブライエンは、側近であるマービンにそう呟きその場を後にする。
「苦労を掛けるな」
「いえ、これも務めですので」
「・・・そうか」
その途中で立ち止まったジークは素っ気なく、それでいて別れを惜しむようにマービンへと声を掛けていた。
それにマービンは見事なほどに美しい敬礼で応える、ジークはその背後で同じように敬礼をしている領地から連れてきた兵士達へと目をやると、踵を返してその場を後にしていく。
「・・・すまない」
最後に一言、それだけを言い残して。
それもその筈だ、ここはまだティカロンの街の中であり、ここを根城にしているティカロン同盟と称する連中がリリーナ側についた以上、ここは敵地にも等しいのだから。
しかしフェルデナンドはそんな状況にありながら、ふと足を止める。
「一体何を考えているのだ、あの連中は!?これだけの条件を約束したのだぞ!だというのに・・・あぁ、忌々しい!見せ金に持ってきた金貨を置いてきてしまったではないか!!ん、どうしたフェルデナンド?急に立ち止まって・・・先を急ぐのではなかったのか?」
彼の背後をどすどすと荒い足音を立てながら通りがかる周囲の者達を威嚇しながら歩いていたルーカスも、その横を通り過ぎると彼に異変に気がつき不思議そうに声を掛けていた。
「あぁ、ちょっとね・・・考え事をしていたんだ。気ままに暴れていればいい君と違って、私には責任があるからね」
「何だと!?」
こちらに声を掛けてきたルーカスに向かって、フェルデナンドは小馬鹿にしたように笑う。
そんな彼の態度に、ルーカスは激高するとその胸元に掴みかかっていた。
「まぁいい・・・それよりも何か考えついたのだろう?言ってみるといい、特別に我が聞いてやろう」
「その態度はちょっと気になるけど・・・いいよ、話そう」
しかしルーカスは、すぐに掴んだフェルデナンドの胸元を放していた。
今までの彼ならば有り得ないその振る舞いは、度重なる失敗で少なからず彼も成長したという証だった。
「王都を急襲するのさ」
「王都を急襲?ふんっ、奴らの軍が合流する前にか?」
フェルデナンドが考えた次の一手、それは王都を急襲するというものであった。
しかしその考えは、今まさに敵が手を組んだことを目撃した彼らからすれば当然の事で、ルーカスもそれぐらい分かっているとつまらなそうな表情を見せていた。
「それもあるが、それだけじゃない。王都を急襲し、リリーナを殺してしまうのさ。そうすれば奴らは旗印を失って瓦解する。後はどうとでもなるという寸法さ」
もう話は終わりかと呆れた表情を見せるルーカスに、まだ続きがあるから黙って聞けとフェルデナンドは口の前に指を立てている。
そうして彼が口にしたのは、リリーナを殺すという乾坤一擲の一手であった。
「リリーナを殺す・・・?そうか、その手があったか!」
リリーナという旗印を失ってしまえば、他に担ぐもののないリリーナ陣営は次の主導権の座を巡って内部で争い合う事になるだろう、そうなれば後はどうとでも料理出来る。
フェルデナンドの言葉にそれを理解したルーカスは、空を見上げると叫び声を上げた。
「ふははっ、そうだな!貴様の言う通りだ、フェルデナンド!!何の事はない、奴らなどあの小娘一人殺してしまえば烏合の衆ではないか!!こうしてはいられん、急いで帰るぞ!!そして王都に進軍するのだ!」
大声を上げるルーカスに、フェルデナンドは周りに聞かれていないかと焦った表情で周囲を見渡している。
幸いな事にここはもう街の外れに差し掛かっており、周りに人影の姿はなかった。
「どうしたフェルデナンド、急ぐのではないのか!?」
「はぁ・・・まぁ、確かに急いだ方がよさそうだ!」
フェルデナンドの心配をよそに、さっさと一人で飛び出していたルーカスはうきうきとした様子で彼も急ぐように促してくる。
フェルデナンドはそんな彼の様子に深々と溜息をつくと、自らも彼らと共にこの街までやって来た護衛が滞在している宿に向かって駆けだしていくのだった。
◇◆◇◆◇◆
「ふははははっ、何だ簡単ではないか!!」
馬の上に立ち上がり、器用にバランスを取っては腕を組んで笑い声を上げているルーカスの視線の先には、王都を取り囲む城壁の姿が映っていた。
「・・・各地に陽動を掛ける部隊を僕が派遣したから、ここまで簡単に来れたんだけどね」
落馬という場合によっては命を失いかねない事故、それが起こりうる軽挙な振る舞いをしているルーカスにフェルデナンドは頭を抱えながら、ここまでの道のりもそう簡単ではなかったと口にする。
「ん、そうなのか?だが結局のところ、簡単だったという事に違いはないのだろう!?」
「まぁ、そうだね。簡単だった、ここまでは」
そう口にしたフェルデナンドの目線の先には、丘の上に立つ砦の姿が映っていた。
「オールドキープ要塞・・・通称『狼の巣』か」
その砦の名前はオールドキープ要塞、かつては狼の巣と呼ばれ、リグリア王国最強と謳われた騎士団が根城とした王都の最終防衛拠点。
彼らは、その目の前にまで迫っていたのだった。
「後は、あれを落とすだけだろう?」
「・・・あぁ、そうだね」
曲乗りを止め普通に馬に跨ったルーカスは、フェルデナンドにそう尋ねる。
フェルデナンドはそれに、僅かな沈黙を挟んで答えていた。
「ふははっ、そうかそうかっ!!では、行こうではないか!!いざっ、オールドキープ要塞へ!!」
後はあの砦を落とすだけ、それを確認したルーカスは獰猛に笑うと馬を竿立ちにする。
そして掛け声と共に一気に駆けだしたルーカスに、兵士達も雄たけびを上げると突撃していくのだった。
◇◆◇◆◇◆
「・・・後は任せる」
「はっ」
ルーカスが先頭を駆ける軍勢の後方、オールドキープ要塞の足元に広がるパラスケスの森の木々越しにその姿を眺めていたジーク・オブライエンは、側近であるマービンにそう呟きその場を後にする。
「苦労を掛けるな」
「いえ、これも務めですので」
「・・・そうか」
その途中で立ち止まったジークは素っ気なく、それでいて別れを惜しむようにマービンへと声を掛けていた。
それにマービンは見事なほどに美しい敬礼で応える、ジークはその背後で同じように敬礼をしている領地から連れてきた兵士達へと目をやると、踵を返してその場を後にしていく。
「・・・すまない」
最後に一言、それだけを言い残して。
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