【二章開始】『事務員はいらない』と実家からも騎士団からも追放された書記は『命名』で生み出した最強家族とのんびり暮らしたい

斑目 ごたく

文字の大きさ
上 下
149 / 210
第二章 王国動乱

もう一人の仲間

しおりを挟む
「こいつら・・・結構やるぞ!」

 流麗な技量を誇るシャロンと、圧倒的な体格を持つデズモンド、彼らは例え徒手空拳であってもそれらの強みを生かし、襲い掛かってくる兵士達と互角以上の戦いを見せていた。
 そんな彼らの戦いぶりに、碌な装備もない相手に余裕だと高を括っていた兵士達に焦りの色が浮かぶ。

「おい、見ろよ」
「あぁ」

 しかし兵士達もすぐに気づくだろう、彼らに付け入る隙がある事を。

「あいつだ・・・あいつを狙え!!」

 強敵であるシャロン達から距離を取り、息を整えていた兵士達はある事に気づきお互いに肘を突き合う。
 そして同時に同じ事に気づいた彼らは、ある人物を指し示しては声を上げていた。
 シャロンやデズモンドと違い争いに慣れておらず、碌に戦えないままおろおろとその場を右往左往するばかりであったユーリという人物を。

「ユーリちゃん!?」
「ユーリ!?」

 ユーリに狙いを定め、一斉に飛び掛かっていく兵士達にシャロンとデズモンドの鋭い声が飛ぶ。

「えっ?」

 得物すらなく戦いに挑んだ事で何をしたらいいのか分からず、その場をおろおろと右往左往するばかりであったユーリには、突然自分が敵の標的になったこともすぐには呑み込めない。
 そんな彼は迫りくる敵の刃にも、間の抜けた顔でポカンと見上げるだけ。
 シャロンとデズモンドはそんな彼を助けようと身を投げ出すが、それが果たして間に合うか。
 どちらにせよこのままでは、二人が代わりに敵の刃を受けるか、ユーリが無防備なまま敵の刃に沈むか、そのどちらかの結末しか残されていなかった。

「・・・あ、あれ?」

 そう、このままであれば。

「ふぅー・・・危ないところだったですな兄さん。大丈夫ですかい?」

 死の予感にきつく目を瞑ったユーリの頭上から聞こえてきたのは、どこか皮肉げな響きの声。

「エディさん!!」

 その声の主は、ユーリのもう一人の仲間である詐欺師のエディであった。

「ちょっと!遅いんじゃないのエディちゃん!?危ないところだったじゃない!」
「・・・遅刻だ」
「いやいや、ギリギリ間に合っただけ褒めてくださいよ姉さん!?あっしがここに来るまでどれだけ苦労したか・・・大体予定ではもうちょっと後だった筈でがしょ?それでも何やら物音がするからって慌てて駆けつけたんですから、ちったぁ褒めてもらっても損はしないと思いますがね」

 敵の兵士達と同じ格好をし、鎧を身に纏ったエディが差し出した手を握り、ユーリはその場に立ち上がる。
 ユーリは危ないところを助けられた感謝の視線をエディへと送っていたが、残る二人の仲間はちょっと登場が遅すぎるんじゃないかと彼に文句を零していた。
 それにエディは大げさに身振り手振りを交えて反論するが、その度に身に纏った鎧ががしゃがしゃと耳障りな音を立てていた。

「それで、収穫はどうなの?」
「へへっ、そりゃ勿論たんまりと」

 エディはそう言うと、抱えていた荷物からこの砦からかっぱらってきた獲物の数々を見せていた。

「姉さんにはこれを、デズモンドの旦那にはこんなんでいかがでがしょ」
「あら、良いじゃない」
「・・・悪くない」

 エディはその荷物から適当な得物を取り出すと、シャロンには細身の剣を、デズモンドには大ぶりな斧を投げて寄越していた。

「お、お前・・・一体何をしている!?そいつらは敵だ、味方はこちらなんだぞ!?気でも狂ったのか!?」
「何をしているかと聞かれましても・・・ほれこの通り、見ての通りの事情ですので」

 増援に現れた筈の兵士が味方の兵士を殴り倒し、あまつさえ敵に得物を提供している。
 そんな訳の分からない事態に混乱する兵士達に、エディは冗談めかしてウインクを投げると、芝居掛かった仕草で自らの正体を告げる。

「そんじゃ、後はお任せしますよ。姉さん、旦那」

 そしてそんな彼の両脇から飛び出すようにして、得物を手にした二人が敵兵へと向かっていく。
 決着は、あっという間についた。

◇◆◇◆◇◆

「それにしても、よく一人でこんなところまで潜入出来たわねぇ」

 ボコボコにのした兵士達を太い縄で縛り上げたシャロンは、一仕事を終えたと手を叩きながらエディにそう尋ねる。

「まぁ、あっしに掛かればこれぐらいちょろいもんでさぁ・・・と、言いたいところですがね。ま、本当のところはこいつのお陰でさぁね」

 シャロンの質問に腕を組んで胸を逸らしたエディは、その途中で片目を瞑ると皮肉げに唇を吊り上がらせては懐から何やら書類の束を取り出して、それをパタパタと振って見せていた。

「あら、それは?」
「この砦の全兵士、その詳しいプロフィールでさぁ。こんなもんを渡されちゃあ・・・詐欺師としてはこんぐらいやってのけねぇと、沽券に関わるってもんでさぁね」

 エディが懐から取り出したのは、ユーリがそのスキル「書記」で書き出したこの砦の全兵士のプロフィールであった。
 一般人からすれば何に使うか分からないそんな情報も、凄腕の詐欺師であるエディからすれば魔法のステッキに等しい。
 それを手に入れたエディはまさに魔法使いとなり、この砦の兵士達に魔法を掛けてはここまでやって来たのであった。

「あぁ、そういえばそんなものも書いてたわねぇ・・・でも、そんなものがあるんなら私達も一緒に正面から侵入しちゃったら良かったのに。そうすればこんなびしょ濡れになる事もなかったでしょ?」
「ちっちっち、舐めてもらっちゃ困りますぜ姉さん?幾らこんなデータがあるからって、相手を騙してこっちをお仲間だと信じ込ませるには色々とコツがいるんですぜ?姉さん方にそれが出来やすか?正直、幾らあっしでも足手まといを背負ってここまでやってくるのは無理ってもんでさぁ」
「ふーん、そういうものなのねぇ」

 水浸しになったことがそれだけ嫌だったのか、シャロンは恨みがましい視線をエディに向けながら文句を零す。
 その撫でつけ、ツンと尖ったもみあげの頂点からは今だに水滴が零れ続けていた。

「まぁその代わりと言っちゃなんですが、注文された品はしっかりと用意してありやす。いやぁ、デズモンド旦那の体格に合う鎧を探すのにどれだけ苦労したか・・・こいつを聞けば、あっしの苦労もちったぁ身に染みるってもんでさぁね。それでですね、まずあっしが探したのは―――」
「・・・後にしてくれ」
「あ、そうですかい?いやぁ残念だなぁ、奇想天外スペクタクル間違いなしの大冒険譚なんでやすがねぇ」

 エディは彼の小さな身体がすっぽりと収まりそうなほどの大きな荷物袋を引きずると、その中から様々なサイズの鎧を取り出していた。
 それらが今回、彼が砦に潜入した目的なのだろう。
 彼はそれを手に入れるのに辿った苦難の道のりを語りたがっていたが、それをあっさりとデズモンドに却下され残念そうに笑みを浮かべていた。

「おっとそうだ、こっちは兄さんの分でさぁ。万が一に備えて用意しておいたもんですが、早速役に立ったようで」

 それぞれに用意された鎧をユーリ達が着込んでいると、エディがその小さな頭を荷物袋に突っ込み何かを漁り始める。
 そうして彼が取り出したのは、真新しい筆記用具の一式であった。

「おぉこれは、助かります!持ってきたのは全部流されちゃって」
「ははっ、大変でしたね兄さんも」

 今回の潜入に際して、ユーリは当然筆記用具一式を持ち込んでいた。
 しかし先ほどの騒動でそれらは全て流されてしまっており、このままでは彼はまたその能力を一切使うことの出来ない役立たずになってしまう所であった。

「おいエディ!てめぇ、俺様の鎧どこに隠しやがった!!」
「そうよ、私の鎧も見当たらないんだから!絶対あんたの仕業でしょ!!」
「ま、まぁまぁ、二人とも落ち着いて」

 その時、先ほど兵士達がやって来た螺旋状になっている通路から、普段着のような軽装をした男達が現れていた。

「・・・エディちゃん、あれは?」
「何か嫌な予感が・・・って、あれ?エディさん?」

 現れた兵士達と思われる男達の人数は三人で、それらの背格好もユーリ達とそっくりだった。
 それにある事情を察したユーリ達がそれをエディに尋ねようとすると、そこには既に彼の姿はなかった。

「・・・あそこだ」

 デズモンドの声にそちらへと目を向ければ、いつの間にかまんまとこの場にやって来た兵士達の背後に回ったエディがこちらへとひらひらと手を振っている姿があった。

「そんじゃ、あっしはこれで」

 そして彼はそのまま頭を引っ込めると、その場を後にするのだった。

「もぉー、エディちゃんったらいけない子ねぇ!!こうなったら仕方ないわ、やるわよデズモンドちゃん!」
「・・・任せろ」

 エディが押しつけた敵にシャロンはぷりぷりと怒りながらも、こうなっては仕方がないと得物を手にする。
 デズモンドもまた彼に続くと、その手に大ぶりな斧を構えていた。

「俺も、今度は俺も戦います!」

 そんな二人を前に、またしても一人蚊帳の外に置かれそうだったユーリは勇気を振り絞るとそう叫ぶ。

「あらそう?だったら・・・向こうをお願いしようかしら?」

 ユーリの声に足を止め振り返ったシャロンは唇に指を添えると、その指を明後日の方向へと伸ばす。

「・・・へ?」

 そちらへと目を向ければ、暗くて今までよく分からなかったがそちらにも通路があったようで、兵士達が近づいてくるガチャガチャとした物音がそこから響いてきていた。

「・・・コツは、流れに身を任せることだ」

 予想していなかった事態に呆気に取られるユーリを前に、デズモンドは先ほどの木の板を手にすると励ますようにそう口にする。

「それは・・・波乗りのコツでしょおぉぉぉ!?」

 ユーリのその悲痛な叫びはカンパーベック砦の地下深く、忘れられた水路に空しく響き渡っていた。
しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

パーティーの役立たずとして追放された魔力タンク、世界でただ一人の自動人形『ドール』使いになる

日之影ソラ
ファンタジー
「ラスト、今日でお前はクビだ」 冒険者パーティで魔力タンク兼雑用係をしていたラストは、ある日突然リーダーから追放を宣告されてしまった。追放の理由は戦闘で役に立たないから。戦闘中に『コネクト』スキルで仲間と繋がり、仲間たちに自信の魔力を分け与えていたのだが……。それしかやっていないことを責められ、戦える人間のほうがマシだと仲間たちから言い放たれてしまう。 一人になり途方にくれるラストだったが、そこへ行方不明だった冒険者の祖父から送り物が届いた。贈り物と一緒に入れられた手紙には一言。 「ラストよ。彼女たちはお前の力になってくれる。ドール使いとなり、使い熟してみせよ」 そう記され、大きな木箱の中に入っていたのは綺麗な少女だった。 これは無能と言われた一人の冒険者が、自動人形(ドール)と共に成り上がる物語。 7/25男性向けHOTランキング1位

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます

海夏世もみじ
ファンタジー
 月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。  だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。  彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ
ファンタジー
「ディーナ。お前には今日で、俺たちのパーティーを抜けてもらう。異論は受け付けない」  勇者ラジアスはそう言い、私をパーティーから追放した。……異論がないわけではなかったが、もうずっと前に僧侶と戦士がパーティーを離脱し、必死になって彼らの抜けた穴を埋めていた私としては、自分から頭を下げてまでパーティーに残りたいとは思わなかった。  ほとんど喧嘩別れのような形で勇者パーティーを脱退した私は、故郷には帰らず、戦闘もこなせる武闘派聖女としての力を活かし、賞金首狩りをして生活費を稼いでいた。  そんなある日のこと。  何気なく見た新聞の一面に、驚くべき記事が載っていた。 『勇者パーティー、またも敗走! 魔王軍四天王の前に、なすすべなし!』  どうやら、私がいなくなった後の勇者パーティーは、うまく機能していないらしい。最新の回復職である『ヒーラー』を仲間に加えるって言ってたから、心配ないと思ってたのに。  ……あれ、もしかして『ヒーラー』って、完全に回復に特化した職業で、聖女みたいに、防御の結界を張ることはできないのかしら?  私がその可能性に思い至った頃。  勇者ラジアスもまた、自分の判断が間違っていたことに気がついた。  そして勇者ラジアスは、再び私の前に姿を現したのだった……

処理中です...