上 下
144 / 210
第二章 王国動乱

ユーリ隊長

しおりを挟む
「おい、隊長さんよ。これもやっといてくれよ」
「はいはい、補給申請ですねー。あ、こっちもですか?はーい、まとめてやっときますねー」

 カンパーベック砦近く、それを取り囲むように広がっているローデライ森を抜けた荒野に、柄の悪い男達が寄り集まって野営を営んでいた。
 そんな男達の間を縫って歩く青年、ユーリに対して男達が何やら粗末な紙切れを差し出していた。
 それらは彼らが補給部隊へと物資の融通を申請する、補給票のようなものだろう。
 欲しいものだけが乱暴に書き殴られ、他の必要事項が埋められていないそれを差し出されても、ユーリは断ることなくニコニコとそれを受け取って回っていた。

「おい、いいのかよ?あんなんで渡しちまって」
「へっ、いいんだって。あんなんでも隊長さんが、残りは適当にやってくれんだから!」
「へぇ、マジかよ!じゃあ俺もやろうかな。こんな雑用までやってくれるなんて、隊長様々だな!」
「ばーか、あいつはあれが好きでやってんだよ!雑用が好きなのさ、それしか能がねぇからよ!」
「ぎゃはは、違いねぇ!!」

 そんなユーリの振る舞いを馬鹿にして、懲罰部隊の囚人達は笑い声を上げる。
 彼らの姿をユーリの後ろについて行きながら眺めていたシャロンは、急ぎ足で彼の横に並ぶとそっとその耳に囁く。

「駄目よユーリちゃん、甘やかしちゃ。このままじゃあの子達、今においたしちゃうわ」
「姉さんの言う通りですよ、兄さん。兄さんは曲がりなりにもこの部隊の隊長なんだ、締めるところは締めとかないと、連中つけ上がりますぜ?」

 ユーリの両隣には、彼と一緒に脱獄を行った時の仲間、シャロンとエディの姿があった。
 彼らは口々にユーリの振る舞いに苦言を呈し、注意した方がいいと告げる。

「え?でも、こういう作業好きなんで・・・別に苦じゃないですよ?」

 そんな二人の言葉にユーリは首を傾げると、彼らが何を言っているのか分からないとポカンとした表情を見せていた。

「うーん、そういう事じゃないんだけど・・・ま、ユーリちゃんがそれでいいって言うんならいいの」
「正気ですかい、姉さん?軍隊ってのは、指揮系統がものを言うんですぜ?上下関係をしっかりしとかないと、後々困るのは兄さんだと思うんですがねぇ」

 ユーリの言葉にシャロンは頬を押さえながらも納得し、エディは肩を竦めながら首を横に振っては不満を示していた。
 彼らは自らの幕舎へとつくとその幕を捲り、中へと足を踏み入れる。
 その中では彼らの脱獄仲間であるデズモンドが、いつものむっつりとした表情のまま何やら荷物を整理している所だった。

「あぁ、デズモンド。それ頼んでいた物資?悪いね、整理を任せて―――」

 デズモンドが整理しているのは、ユーリが頼んで補給部隊から回してもらった物資だろう。
 ユーリが掛けた声にデズモンドがいつもようにむっつり答えようとしていると、彼らの背後で幕舎の幕が上がる音がしていた。

「ユーリ・ハリントン!ユーリ・ハリントンはいるか!!」

 幕舎の幕を上げ、そこから入ってきたのは何やら苛立った様子の赤毛の女性、ケイティであった。

「えっと、ここにいますけど・・・?」

 そんなケイティの様子にユーリが恐る恐る手を上げると、彼女はユーリへと睨み付けるように視線を向ける。

「おい、言われた通り案内してやったぞ!ったく、何であたいがこんな事を・・・」

 その視線にユーリが小さく悲鳴を上げると、ケイティはさっと後ろを振り返りそう怒鳴りつける。

「やれやれ、ようやくかい?随分時間をかけてくれるじゃないか・・・うっ!?何だ、この薄汚い場所は!?何故、高貴な生まれの僕がこんな所に来なければならないんだ!!」

 彼女に呼ばれ、ゆっくりとこの幕舎へと足を踏み入れたのは、この場所に不釣り合いなゆったりとした衣装を身に纏った神経質そうな男だった。
 彼はユーリ達が使っている幕舎へと目を向けると眉を顰め、信じられないと声を上げる。
 彼の手は鼻先を何度も往復し、この場所の空気を吸い込みたくないのだとその態度で示していた。

「はぁ、しかしこれも使命か。そう高貴たるボロリア家に生まれた僕、ボロア・ボロリアに課せられた使命さ!さて、君がこの部隊の隊長ユーリ・ハリントンかい?」
「は、はぁ・・・そうですが」

 ボロアと名乗った男は、こんな場所に来る羽目になった事を自らに課せられた使命だと解釈すると、それに打ち勝って見せると両腕を組んで決意する。
 そしてこの幕舎の中へと再び視線を向けた彼は、その真ん中に立っていたユーリへと指を向けていた。

「君にあの忌々しい砦、カンパーベック砦の奪還を命ずる。そうだな・・・三日もあれば十分だろう?それまでに取り返してくれたまえ」

 ボロアが口にしたその命令に、幕舎の中では波が広がるように衝撃が走る。

「あ、あんた、正気ですかい!?あの難攻不落のカンパーベック砦を三日で!?今の倍の兵がいたって難しいってのに・・・それを三日でだって!?大体、あの砦はあんたの不注意で奪われたって聞いてやすぜ!その尻拭いをあっしたちにやらせようってのは、ちょっと虫が良すぎるんじゃねぇですかい!!」

 ボロアの言葉にユーリ以外の幕舎の人間は衝撃を受けていたようだったが、それを代表してエディがそのよく回る口を披露している。

「え、そうなの?」
「そうなのって・・・散々噂になってたじゃねぇですかい!?聞いてなかったんですかい、兄さん!?」
「へぇ~、そうだったんだ・・・」

 カンパーベック砦がボロアの不注意によって奪われた、そのためそこに入る筈であった彼らはこんな所で陣を張っていたのだった。
 それを初めて聞いたと口にするユーリに、エディは信じられないと両手を広げて叫んでいた。

「ふんっ!尻拭いだと・・・結構じゃないか?聞けば懲罰部隊というのは、この戦いで功績を上げれば上げるほど罪を免除されるのだろう?ならば手柄を上げる機会を作ってやったと感謝されこそすれ、文句を言われる筋合いはない!!んん~?どうしたぁ、感謝の言葉が聞こえてこないぞぉ?」

 エディが口にした文句に、ボロアはそう言い返すと逆に自慢気にふんぞり返っている。

「ふんっ、まぁいい!とにかく三日だ!三日後の夜明けまでに奪い返すのだぞ!!それが出来なければ、全てお前の責任だと上には報告してやるからな!!」

 ボロアが言う通り、功績を上げる必要があると分かっていたのか、エディ達は思わず口を噤み黙ってしまう。
 そんな彼らに勝ち誇ったように胸を逸らしたボロアは、もはや文句は許さないと命令を繰り返すと、そのまま踵を返して去っていく。

「・・・そんなにやばい砦なの?」
「やばいってもんじゃないですぜ、兄さん!!カンパーベック砦っつうのは、この国がオスティア王国に責められた時の最終防衛拠点として想定されてる砦なんです!!あのボロアがやらかしてなきゃ、敵に奪われるような砦じゃねぇんですよ!それを奪い返すだけでも大変なのに、それを三日でなんて・・・」

 ボロアが立ち去った後の幕舎には、沈黙が訪れる。
 その沈黙を破り、ユーリが恐る恐る訪ねると、返ってきたのはそのエディの滝のような言葉だった。

「・・・あたいらは手伝わないよ」
「え?」

 そう口にするまでそこにまだいたという事すら忘れられていたケイティが、そうポツリと呟く。
 その意味が分からず、ユーリはポカンと彼女の顔を見詰めていた。

「あたいらは手伝わないって言ったのさ。あたいらだけじゃなく、他の皆もおんなじだと思うけどね。ま、精々頑張んな」

 それだけを素っ気なく告げ、ケイティは幕舎を後にする。
 そして彼女を言ったことは、確かに間違ってはいなかった。



「もー、信じられない!!この部隊の隊長は、ユーリちゃんなのよ!?その命令に誰も従わないなんて!!」
「だから言ったでがしょ?舐められたらいけねぇと」

 カンパーベック砦の攻略、それへの協力を頼もうと囚人達の下へと向かったユーリ達、彼らが自分達の幕舎へと帰ってくると開口一番、シャロンがそう叫んでいた。
 そう彼らはケイティの言う通り、誰からの協力も得られなかったのだ。

「今更そんなの言ったって遅いわよ!!もぅ、こうなったら私達だけで攻略しちゃいましょうよ!その何たらベックっていう砦!!」
「そんな無茶な・・・」

 隊長の命令に従わない、しかもその理由がユーリを舐めているからという事実に、シャロンは激昂すると自棄になって思わずそう口にしていた。
 そんな彼の言葉に、エディはそんなこと出来る訳がないと呆れるように肩を竦めている。

「・・・やっちゃいますか」

 そんな彼らへと視線を向けながら、ユーリはポツリと呟く。

「は?ちょ、ちょっと兄さん!?正気ですかい!?まさか本気で、俺達だけであのカンパーベック砦を落とそうってんですかい!?」

 ユーリの言葉を耳にしたエディが驚き、彼の方へと顔を向ける。
 そうしてユーリの表情が冗談をいったものではないと気付くと、大慌てで彼の真意を確かめていた。

「あら、いいじゃない!やっちゃいましょうよ!!あの子達に目にもの見せてやるわ!!」
「・・・乗った」

 しかし意外な事に、ユーリのその無茶な提案にシャロンとデズモンドが乗っかってしまう。

「じょ、冗談でしょ?しょ、正気なんですかい皆さん?」

 そんな彼らの事を、エディだけが信じられないと頭を抱えながら見まわしていた。
しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始! 2024/2/21小説本編完結! 旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です ※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。 ※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。 生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。  伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。 勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。  代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。 リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。  ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。  タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。  タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。  そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。  なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。 レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。 いつか彼は血をも超えていくーー。  さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。  一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。 彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。 コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ! ・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持 ・12/28 ハイファンランキング 3位

パーティーの役立たずとして追放された魔力タンク、世界でただ一人の自動人形『ドール』使いになる

日之影ソラ
ファンタジー
「ラスト、今日でお前はクビだ」 冒険者パーティで魔力タンク兼雑用係をしていたラストは、ある日突然リーダーから追放を宣告されてしまった。追放の理由は戦闘で役に立たないから。戦闘中に『コネクト』スキルで仲間と繋がり、仲間たちに自信の魔力を分け与えていたのだが……。それしかやっていないことを責められ、戦える人間のほうがマシだと仲間たちから言い放たれてしまう。 一人になり途方にくれるラストだったが、そこへ行方不明だった冒険者の祖父から送り物が届いた。贈り物と一緒に入れられた手紙には一言。 「ラストよ。彼女たちはお前の力になってくれる。ドール使いとなり、使い熟してみせよ」 そう記され、大きな木箱の中に入っていたのは綺麗な少女だった。 これは無能と言われた一人の冒険者が、自動人形(ドール)と共に成り上がる物語。 7/25男性向けHOTランキング1位

神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~

雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!

よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。 10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。 ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。 同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。 皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。 こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。 そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。 しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。 その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。 そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした! 更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。 これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。 ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。

初めて入ったダンジョンに閉じ込められました。死にたくないので死ぬ気で修行したら常識外れの縮地とすべてを砕く正拳突きを覚えました

陽好
ファンタジー
 ダンジョンの発生から50年、今ではダンジョンの難易度は9段階に設定されていて、最も難易度の低いダンジョンは「ノーマーク」と呼ばれ、簡単な試験に合格すれば誰でも入ることが出来るようになっていた。  東京に住む19才の男子学生『熾 火天(おき あぐに)』は大学の授業はそれほどなく、友人もほとんどおらず、趣味と呼べるような物もなく、自分の意思さえほとんどなかった。そんな青年は高校時代の友人からダンジョン探索に誘われ、遺跡探索許可を取得して探索に出ることになった。  青年の探索しに行ったダンジョンは「ノーマーク」の簡単なダンジョンだったが、それでもそこで採取できる鉱物や発掘物は仲介業者にそこそこの値段で買い取ってもらえた。  彼らが順調に探索を進めていると、ほとんどの生物が駆逐されたはずのその遺跡の奥から青年の2倍はあろうかという大きさの真っ白な動物が現れた。  彼を誘った高校時代の友人達は火天をおいて一目散に逃げてしまったが、彼は一足遅れてしまった。火天が扉にたどり着くと、ちょうど火天をおいていった奴らが扉を閉めるところだった。  無情にも扉は火天の目の前で閉じられてしまった。しかしこの時初めて、常に周りに流され、何も持っていなかった男が「生きたい!死にたくない!」と強く自身の意思を持ち、必死に生き延びようと戦いはじめる。白いバケモノから必死に逃げ、隠れては見つかり隠れては見つかるということをひたすら繰り返した。  火天は粘り強く隠れ続けることでなんとか白いバケモノを蒔くことに成功した。  そして火天はダンジョンの中で生き残るため、暇を潰すため、体を鍛え、精神を鍛えた。  瞬発力を鍛え、膂力を鍛え、何事にも動じないような精神力を鍛えた。気づくと火天は一歩で何メートルも進めるようになり、拳で岩を砕けるようになっていた。  力を手にした火天はそのまま外の世界へと飛び出し、いろいろと巻き込まれながら遺跡の謎を解明していく。

処理中です...