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第二章 王国動乱
どう見ても怪しい男
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王の死という衝撃的なニュースが駆け巡った王都クイーンズガーデン、その王城である黒百合城では衛兵達が慌ただしげに駆け回っていた。
「ちぇ!何でこんな所を・・・今更こんな所に犯人が残ってる訳がないだろ!あーぁ、どうせなら王城の周りとかを探したかったぜ!そこなら犯人がまだ潜んでてもおかしくないからな!そしたら俺が王殺しの犯人をとっちめてやったのに」
「はははっ、お前が?無理無理!」
「何だと!?そんなのやってみなけりゃ分かんねぇだろう!!」
そんな衛兵達の中でも、王殺しの現場であるここ、王の寝室の近くは人気のない場所であった。
それは王殺しなどという大罪を犯した犯人が、そんな場所にまだ潜んでいる訳などないからであり、実際にそう考えている衛兵達もどこかだらけた様子でお互いに冗談を言い合っていた。
「お前達、何をさぼっている!!」
「はっ、上官殿!!自分達はさぼってはおりません!」
冗談を言い合う若い衛兵の二人は、彼らの上官であろう年を取った髭面の男にそれを見咎められ怒鳴りつけられる。
「そこに突っ立ったまま、無駄話を叩いておいてか?」
「はっ!喋りながら周囲を監視しておりました!こうして喋っておれば犯人も油断して出てくると思い、そうした行動を取っていたのです!!」
「ぐっ、相変わらず減らず口だけは達者だな・・・もういい、さっさと捜索に戻れ!怪しい奴の一人も見つけてこなければ、今度こそ容赦はせんぞ!!」
若い衛兵の見え透いた言い訳に、髭面の上官は額に青筋を立てては問い詰めるが、彼はどうやら口がうまいのかスラスラと言い逃れの言葉を述べていく。
それらの言葉にこれ以上追及出来ないと言葉を詰まらせた髭面の上官は、彼らを再び怒鳴りつけると犯人の捜索に戻していた。
「ははっ、うまくやったなおい!」
「へへっ、まぁな!しかし、怪しい奴ったってなぁ。そんなのがこんな所にいる訳・・・」
面倒な上官をうまく言い包めた相棒に、若い衛兵が肘で突いて喜んでいる。
彼の称賛に照れくさそうに鼻を擦っていたもう一人の衛兵はしかし、困ったように頭を掻いていた。
この場所は王城の最奥の近く、しかも王殺しが行われた現場である。
そんな所にわざわざやって来る怪しい奴など、いる訳がないのだ。
「あぁ、恐ろしい恐ろしい!!」
王の殺害現場と思われる寝室、そこの片付けを行っていたのか年老いた侍女が慌ただしくその場を後にする。
その手に抱えられた食器から、一振りのナイフが零れて落ちていた。
「あ、落ちましたよ。あぁ、行っちゃった・・・これ、木苺のジャムかな?どれどれ・・・ん、うまい!っと、こんなことしてる場合じゃなかった!どうにかここまではうまく忍び込めたけど、この後どうしよう?いきなり尋ねても会ってくれる訳はないよなぁ・・・何だか周りも騒がしいし」
そのナイフを拾った青年は立ち去っていく年老いた侍女を呼びかけるが、彼女は足を止めることはない。
それに困ったように頭を掻いた彼は、ナイフについていた木苺のジャムをペロリと舐め取ると、廊下の影に隠れては王の寝室を伺い、辺りへとキョロキョロと視線を向けていた。
「い、い、い、いたーーー!!!」
そして、若い衛兵達は声を上げる。
彼らの目の前に現れた、ナイフという凶器を手にし、口元をべったりと赤く染め、何やら殺害現場である王の寝室を頻りに窺っているという、まさに怪しいとしか言えない奴を見つけて。
「・・・え?」
二人の衛兵の声に、その怪しい奴ことユーリ・ハリントンはキョトンとした表情で振り返る。
彼がそうして向けた視線の先では、目を血走らせた若い衛兵二人が猛烈な勢いで突進してくるところであった。
「ちぇ!何でこんな所を・・・今更こんな所に犯人が残ってる訳がないだろ!あーぁ、どうせなら王城の周りとかを探したかったぜ!そこなら犯人がまだ潜んでてもおかしくないからな!そしたら俺が王殺しの犯人をとっちめてやったのに」
「はははっ、お前が?無理無理!」
「何だと!?そんなのやってみなけりゃ分かんねぇだろう!!」
そんな衛兵達の中でも、王殺しの現場であるここ、王の寝室の近くは人気のない場所であった。
それは王殺しなどという大罪を犯した犯人が、そんな場所にまだ潜んでいる訳などないからであり、実際にそう考えている衛兵達もどこかだらけた様子でお互いに冗談を言い合っていた。
「お前達、何をさぼっている!!」
「はっ、上官殿!!自分達はさぼってはおりません!」
冗談を言い合う若い衛兵の二人は、彼らの上官であろう年を取った髭面の男にそれを見咎められ怒鳴りつけられる。
「そこに突っ立ったまま、無駄話を叩いておいてか?」
「はっ!喋りながら周囲を監視しておりました!こうして喋っておれば犯人も油断して出てくると思い、そうした行動を取っていたのです!!」
「ぐっ、相変わらず減らず口だけは達者だな・・・もういい、さっさと捜索に戻れ!怪しい奴の一人も見つけてこなければ、今度こそ容赦はせんぞ!!」
若い衛兵の見え透いた言い訳に、髭面の上官は額に青筋を立てては問い詰めるが、彼はどうやら口がうまいのかスラスラと言い逃れの言葉を述べていく。
それらの言葉にこれ以上追及出来ないと言葉を詰まらせた髭面の上官は、彼らを再び怒鳴りつけると犯人の捜索に戻していた。
「ははっ、うまくやったなおい!」
「へへっ、まぁな!しかし、怪しい奴ったってなぁ。そんなのがこんな所にいる訳・・・」
面倒な上官をうまく言い包めた相棒に、若い衛兵が肘で突いて喜んでいる。
彼の称賛に照れくさそうに鼻を擦っていたもう一人の衛兵はしかし、困ったように頭を掻いていた。
この場所は王城の最奥の近く、しかも王殺しが行われた現場である。
そんな所にわざわざやって来る怪しい奴など、いる訳がないのだ。
「あぁ、恐ろしい恐ろしい!!」
王の殺害現場と思われる寝室、そこの片付けを行っていたのか年老いた侍女が慌ただしくその場を後にする。
その手に抱えられた食器から、一振りのナイフが零れて落ちていた。
「あ、落ちましたよ。あぁ、行っちゃった・・・これ、木苺のジャムかな?どれどれ・・・ん、うまい!っと、こんなことしてる場合じゃなかった!どうにかここまではうまく忍び込めたけど、この後どうしよう?いきなり尋ねても会ってくれる訳はないよなぁ・・・何だか周りも騒がしいし」
そのナイフを拾った青年は立ち去っていく年老いた侍女を呼びかけるが、彼女は足を止めることはない。
それに困ったように頭を掻いた彼は、ナイフについていた木苺のジャムをペロリと舐め取ると、廊下の影に隠れては王の寝室を伺い、辺りへとキョロキョロと視線を向けていた。
「い、い、い、いたーーー!!!」
そして、若い衛兵達は声を上げる。
彼らの目の前に現れた、ナイフという凶器を手にし、口元をべったりと赤く染め、何やら殺害現場である王の寝室を頻りに窺っているという、まさに怪しいとしか言えない奴を見つけて。
「・・・え?」
二人の衛兵の声に、その怪しい奴ことユーリ・ハリントンはキョトンとした表情で振り返る。
彼がそうして向けた視線の先では、目を血走らせた若い衛兵二人が猛烈な勢いで突進してくるところであった。
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