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第二章 王国動乱
変身
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「そろそろだな」
そう呟くジョンの背後では、ネロとプティそしてヌーボが孤児院の子供達に手を振って別れを惜しんでいた。
ジョン達はそんな彼らを待つように、あるスラム街の入り口に佇んでいた。
「・・・来た!」
孤児院の子供達と別れを済ませたネロ達を、リリーナが温かく迎え入れている。
そんな光景を背にしながらスラム街の方へと視線を向けるジョンの目には、慌てた様子で何かから逃げている住民の姿が映っていた。
「ねぇ、あれ・・・何か変じゃない?」
「えっ?本当だ!だ、大丈夫かな?」
何かから逃げ惑っている様子の住民達の姿に、合流したばかりのネロが気付いて指を向ける。
その声にそちらへと顔を向けたプティもまたその姿を捉え、心配そうな表情で腕を胸の前で抱きしめていた。
「ふふふ、まぁそう心配せずともよい。ここは余が―――」
彼女達の間に漂う不穏な雰囲気にジョンは嬉しそうな笑みを漏らすと、もったいぶった様子でゆっくりと前へと進み出る。
そして彼はネロ達を制するように手を掲げると、目の前で起きようとしている自作自演の騒動を止めようと声を上げようとしていた。
「ぎゃあああ!!?」
そんな彼の目の前で、逃げ惑っていたスラム街の住民の一人が背後から切り捨てられていた。
「・・・は?」
予想もしていなかったその事態に、ジョンは呆気に取られ口をポカンと開ける。
「ふぅ、手こずらせやがって・・・さーて、何か証拠の品でも持ってますかねーっと?んだよ、外れかよ。何も持ってねぇじゃねぇか!この糞アマ!!」
住民を切り殺した衛兵は、彼の身体を弄って何か犯罪の証拠になるものを探している。
しかしそれが何も見つからないとなると、彼はそれを蹴りつけ唾を吐いてはまた別の住民を追い始めていた。
見れば彼のように住民に襲いかかっている衛兵の姿が、そのスラム街のそこら中に見受けられていた。
「これが、これがこの国のやり方か!!」
「俺達は何もしちゃいない!!」
「そうだ!俺達は悪くないんだ!このまま殺されるぐらいなら・・・やっちまえ!!」
衛兵達の一方的な暴力は、それに晒される者達からの暴力も引き出していた。
仲間を切り殺され怒れるスラム街の住民達は、それぞれに適当な得物を手に取ると、衛兵に襲い掛かっていく。
「不味いよ、これ・・・止めないと、何とかして止めないと!!」
「う、うん!でもどうすれば・・・」
反撃を開始した住民達の姿は、衛兵達から見れば犯罪組織の抵抗にも見える。
それによりさらに激しさを増した争いを目にして、ネロとプティはその顔を真っ青に染めていた。
「マーカス、貴方ならば何とか出来ませんか?」
「・・・貴方を危険に晒す訳には」
「そう、ですか」
助けを求めるリリーナに対してマーカスが言葉を濁したのは、彼の任務が彼女の護衛にあるからだろう。
暴動になりつつある目の前の事態に、彼がその鎮圧に向かえば彼女の身が危険に晒される、そんな事は彼には許されていないのだ。
俯き悔しそうにしている彼の表情に、リリーナはそれを察し唇を噛んでいた。
「こんな、こんな筈では・・・ガララ、奴らを止めろ!止めさせるんだ!!」
「へ、へぇ!」
目の前で繰り広げられる悲惨な光景に、ジョンはふらふらと後ろへと後ずさる。
そしてそこに立ち尽くしていたガララにぶつかると、ジョンは彼に縋りつき目の前の事態を止めるように、縋りつくようにして命令を下していた。
「おい、お前達今すぐこれを止めろ!王様の命令だ、王様の命令だぞ!!」
ジョンの命令に、血相を変えたガララが叫ぶ。
その声に、衛兵達も住民達も次第に手を止め始めていた。
「王様の命令・・・?何だよ、ここを襲えって言ったのもその王様だろ?」
最後に、一人の衛兵がジョンの目の前まで逃げてきていた住民を切り殺しながら、そう口にする。
その住民から溢れ出した返り血が、ジョンの身体にべったりと張り付いていた。
「えっ、ジョンがこれを・・・?どういう事?どういう事なんだよ、ジョン!?答えろ!!」
「ジョン君、それが本当なら・・・いくら貴方でも、許さないから!!」
衛兵が口にした言葉、それはこの悲劇が全てジョンによって齎された事を語っていた。
それを耳にしたネロとプティは、烈火の如く怒り彼を睨み付ける。
「ち、違う・・・余は、余は」
そんな二人にジョンは首を横に振りながら、こんな筈ではなかったのだと涙目で訴える。
「ひっ!?こ、来ないで!!」
しかしその縋りつくように伸ばした手の平すら、真っ赤な血で染まっていた。
それを目にしたネロとプティは悲鳴を上げ、怯えたように彼から距離を取る。
「っ!?ははっ、そうか余が怖いか・・・」
初めて出来た友達が、自らの存在に怯え悲鳴を上げて逃げていく。
その姿を目にしたジョンの顔には、ひび割れたような笑みが浮かんでいた。
「そうか、そうか・・・はははっ、ははははは、はーっはっはっは!!!」
そして彼は嗤いだす、壊れたように。
「酷い有様だな・・・ネロ、プティ、余のものになるのだ。こうなりたくないのであれば、な」
血に濡れた手の平で髪をかき上げ、その美しかった金色の髪を真っ赤に染め上げたジョンは背後の惨状をへとチラリと目をやると、そう嗤いながら告げる。
そう告げる彼の表情からは、先ほどまでの無邪気さは消え失せていた。
そう呟くジョンの背後では、ネロとプティそしてヌーボが孤児院の子供達に手を振って別れを惜しんでいた。
ジョン達はそんな彼らを待つように、あるスラム街の入り口に佇んでいた。
「・・・来た!」
孤児院の子供達と別れを済ませたネロ達を、リリーナが温かく迎え入れている。
そんな光景を背にしながらスラム街の方へと視線を向けるジョンの目には、慌てた様子で何かから逃げている住民の姿が映っていた。
「ねぇ、あれ・・・何か変じゃない?」
「えっ?本当だ!だ、大丈夫かな?」
何かから逃げ惑っている様子の住民達の姿に、合流したばかりのネロが気付いて指を向ける。
その声にそちらへと顔を向けたプティもまたその姿を捉え、心配そうな表情で腕を胸の前で抱きしめていた。
「ふふふ、まぁそう心配せずともよい。ここは余が―――」
彼女達の間に漂う不穏な雰囲気にジョンは嬉しそうな笑みを漏らすと、もったいぶった様子でゆっくりと前へと進み出る。
そして彼はネロ達を制するように手を掲げると、目の前で起きようとしている自作自演の騒動を止めようと声を上げようとしていた。
「ぎゃあああ!!?」
そんな彼の目の前で、逃げ惑っていたスラム街の住民の一人が背後から切り捨てられていた。
「・・・は?」
予想もしていなかったその事態に、ジョンは呆気に取られ口をポカンと開ける。
「ふぅ、手こずらせやがって・・・さーて、何か証拠の品でも持ってますかねーっと?んだよ、外れかよ。何も持ってねぇじゃねぇか!この糞アマ!!」
住民を切り殺した衛兵は、彼の身体を弄って何か犯罪の証拠になるものを探している。
しかしそれが何も見つからないとなると、彼はそれを蹴りつけ唾を吐いてはまた別の住民を追い始めていた。
見れば彼のように住民に襲いかかっている衛兵の姿が、そのスラム街のそこら中に見受けられていた。
「これが、これがこの国のやり方か!!」
「俺達は何もしちゃいない!!」
「そうだ!俺達は悪くないんだ!このまま殺されるぐらいなら・・・やっちまえ!!」
衛兵達の一方的な暴力は、それに晒される者達からの暴力も引き出していた。
仲間を切り殺され怒れるスラム街の住民達は、それぞれに適当な得物を手に取ると、衛兵に襲い掛かっていく。
「不味いよ、これ・・・止めないと、何とかして止めないと!!」
「う、うん!でもどうすれば・・・」
反撃を開始した住民達の姿は、衛兵達から見れば犯罪組織の抵抗にも見える。
それによりさらに激しさを増した争いを目にして、ネロとプティはその顔を真っ青に染めていた。
「マーカス、貴方ならば何とか出来ませんか?」
「・・・貴方を危険に晒す訳には」
「そう、ですか」
助けを求めるリリーナに対してマーカスが言葉を濁したのは、彼の任務が彼女の護衛にあるからだろう。
暴動になりつつある目の前の事態に、彼がその鎮圧に向かえば彼女の身が危険に晒される、そんな事は彼には許されていないのだ。
俯き悔しそうにしている彼の表情に、リリーナはそれを察し唇を噛んでいた。
「こんな、こんな筈では・・・ガララ、奴らを止めろ!止めさせるんだ!!」
「へ、へぇ!」
目の前で繰り広げられる悲惨な光景に、ジョンはふらふらと後ろへと後ずさる。
そしてそこに立ち尽くしていたガララにぶつかると、ジョンは彼に縋りつき目の前の事態を止めるように、縋りつくようにして命令を下していた。
「おい、お前達今すぐこれを止めろ!王様の命令だ、王様の命令だぞ!!」
ジョンの命令に、血相を変えたガララが叫ぶ。
その声に、衛兵達も住民達も次第に手を止め始めていた。
「王様の命令・・・?何だよ、ここを襲えって言ったのもその王様だろ?」
最後に、一人の衛兵がジョンの目の前まで逃げてきていた住民を切り殺しながら、そう口にする。
その住民から溢れ出した返り血が、ジョンの身体にべったりと張り付いていた。
「えっ、ジョンがこれを・・・?どういう事?どういう事なんだよ、ジョン!?答えろ!!」
「ジョン君、それが本当なら・・・いくら貴方でも、許さないから!!」
衛兵が口にした言葉、それはこの悲劇が全てジョンによって齎された事を語っていた。
それを耳にしたネロとプティは、烈火の如く怒り彼を睨み付ける。
「ち、違う・・・余は、余は」
そんな二人にジョンは首を横に振りながら、こんな筈ではなかったのだと涙目で訴える。
「ひっ!?こ、来ないで!!」
しかしその縋りつくように伸ばした手の平すら、真っ赤な血で染まっていた。
それを目にしたネロとプティは悲鳴を上げ、怯えたように彼から距離を取る。
「っ!?ははっ、そうか余が怖いか・・・」
初めて出来た友達が、自らの存在に怯え悲鳴を上げて逃げていく。
その姿を目にしたジョンの顔には、ひび割れたような笑みが浮かんでいた。
「そうか、そうか・・・はははっ、ははははは、はーっはっはっは!!!」
そして彼は嗤いだす、壊れたように。
「酷い有様だな・・・ネロ、プティ、余のものになるのだ。こうなりたくないのであれば、な」
血に濡れた手の平で髪をかき上げ、その美しかった金色の髪を真っ赤に染め上げたジョンは背後の惨状をへとチラリと目をやると、そう嗤いながら告げる。
そう告げる彼の表情からは、先ほどまでの無邪気さは消え失せていた。
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