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第一章 最果ての街キッパゲルラ
攻め寄せる軍勢
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最果ての街キッパゲルラ、その周囲には豊かな森とそれに対比するような荒野が広がっている。
その荒野には今、それを埋め尽くすような軍勢の姿があった。
彼らは相手方の出方を待つように布陣を整えて待機しており、その臨戦態勢はいつ敵がやって来ても戦える姿勢を保っていた。
「伝令、伝令ー!!」
その布陣の中を、一頭の馬が駆ける。
よく見ればその背中には、しがみつくように張り付いている兵士の姿があった。
「・・・どうした?」
その伝令の兵士は布陣の中心である陣幕の中へと飛び込むと、そのまま馬の上から転げ落ちていた。
彼が転げ落ちた先には、この軍勢を率いる指揮官の姿が。
その指揮官、フードを被った男は近習の騎士達に取り押さえられている伝令に対して、短くそう尋ねていた。
「オーボリー伯爵指揮の軍が、か、壊滅いたしました!!」
伝令が口にしたその言葉に、陣幕に集まった指揮官達に動揺が広がる。
ゲイラーが指揮する軍が布陣しているゲルダン平原はこの場からは遠く、如何に伝令が馬を飛ばしてもその報告が届くまでにそれなりの時間がかかる筈であった。
それを鑑みると、彼らの軍はかなり早々に、それこそ一当たりしただけ壊滅した事になる。
何より、先ほど戦闘が開始されたと報告してきた伝令がやって来たばかりなのだ。
「・・・早いな」
ざわざわと動揺し色めき立っている指揮官達の中で、フードの男は一人冷静にそう呟く。
しかしそんな彼にしても、その口元は僅かに引きつっているようだった。
「このような事で一々騒ぎ立てるな!私を失望させたいのか!!」
引きつった口元を引き締めたフードの男は、席から立ち上がると肩に掛かっていたマントを翻して力強く声を上げる。
その声に、この場に集まった指揮官達は背筋を伸ばし、落ち着きを取り戻していた。
「ウッド伯爵の軍が壊滅した?結構ではないか!我々はそれを為すような戦力を、まんまと誘き出すことに成功したのだ!!策の成就を喜びこそすれ、落胆する理由がどこにあろうか!!」
エクス達を誘き出すという策略と、その戦力が予想以上であった事は別問題だ。
しかしフードの男は、それを策略の成功を強調する事で自らの手柄として主張する。
その言葉に集まった指揮官達も乗せられ、こぶしを振り上げては雄叫びを上げていた。
「ほ、報告です!て、敵方の軍が打って出てきました!!」
盛り上がる陣幕内に、先ほどとは別の伝令が転がり込んでくる。
それは敵方の軍、つまりヘイニーが率いる軍がキッパゲルラから打って出てきたことを伝えていた。
「ほぅ、打って出てきたか。籠城すると思っていたがな・・・」
その報告に、再び陣幕内は色めき立つ。
しかしそれは、先ほどとは正反対の反応であった。
「はははっ、そうだったそうだった!城壁が崩れていたのだったな、それでは籠城など出来る訳もないか!どうだ?我々の工作員も、中々いい働きをするではないか?」
打って出てきたヘイニー達に意外そうな表情を見せていたフードの男はやがて、膝を叩いては笑い声を上げ始めていた。
それは彼らが打って出てこらざる得なかった事情、城壁の崩壊を思い出し、さらにそれが自らの手によるものである事も思い出したからであった。
「さぁ、本番だ。私を感心させてくれるのだろうな、貴様ら?」
戦の予感に血気に逸っている指揮官達に、フードの男は近くの騎士達に両手を添えるとそう声を掛ける。
その声にその場にいた男達はこぶしを突き上げると、口々に雄叫びを上げていた。
「・・・さて、もう一つの策略の方はどうなっている?」
興奮した様子で陣幕を飛び出していき、戦の準備へと向かっていく指揮官達。
その場に一人残されたフードの男はキッパゲルラの方へと視線を向けると、そう呟く。
その口元には、残酷に歪んだ笑みが浮かんでいた。
その荒野には今、それを埋め尽くすような軍勢の姿があった。
彼らは相手方の出方を待つように布陣を整えて待機しており、その臨戦態勢はいつ敵がやって来ても戦える姿勢を保っていた。
「伝令、伝令ー!!」
その布陣の中を、一頭の馬が駆ける。
よく見ればその背中には、しがみつくように張り付いている兵士の姿があった。
「・・・どうした?」
その伝令の兵士は布陣の中心である陣幕の中へと飛び込むと、そのまま馬の上から転げ落ちていた。
彼が転げ落ちた先には、この軍勢を率いる指揮官の姿が。
その指揮官、フードを被った男は近習の騎士達に取り押さえられている伝令に対して、短くそう尋ねていた。
「オーボリー伯爵指揮の軍が、か、壊滅いたしました!!」
伝令が口にしたその言葉に、陣幕に集まった指揮官達に動揺が広がる。
ゲイラーが指揮する軍が布陣しているゲルダン平原はこの場からは遠く、如何に伝令が馬を飛ばしてもその報告が届くまでにそれなりの時間がかかる筈であった。
それを鑑みると、彼らの軍はかなり早々に、それこそ一当たりしただけ壊滅した事になる。
何より、先ほど戦闘が開始されたと報告してきた伝令がやって来たばかりなのだ。
「・・・早いな」
ざわざわと動揺し色めき立っている指揮官達の中で、フードの男は一人冷静にそう呟く。
しかしそんな彼にしても、その口元は僅かに引きつっているようだった。
「このような事で一々騒ぎ立てるな!私を失望させたいのか!!」
引きつった口元を引き締めたフードの男は、席から立ち上がると肩に掛かっていたマントを翻して力強く声を上げる。
その声に、この場に集まった指揮官達は背筋を伸ばし、落ち着きを取り戻していた。
「ウッド伯爵の軍が壊滅した?結構ではないか!我々はそれを為すような戦力を、まんまと誘き出すことに成功したのだ!!策の成就を喜びこそすれ、落胆する理由がどこにあろうか!!」
エクス達を誘き出すという策略と、その戦力が予想以上であった事は別問題だ。
しかしフードの男は、それを策略の成功を強調する事で自らの手柄として主張する。
その言葉に集まった指揮官達も乗せられ、こぶしを振り上げては雄叫びを上げていた。
「ほ、報告です!て、敵方の軍が打って出てきました!!」
盛り上がる陣幕内に、先ほどとは別の伝令が転がり込んでくる。
それは敵方の軍、つまりヘイニーが率いる軍がキッパゲルラから打って出てきたことを伝えていた。
「ほぅ、打って出てきたか。籠城すると思っていたがな・・・」
その報告に、再び陣幕内は色めき立つ。
しかしそれは、先ほどとは正反対の反応であった。
「はははっ、そうだったそうだった!城壁が崩れていたのだったな、それでは籠城など出来る訳もないか!どうだ?我々の工作員も、中々いい働きをするではないか?」
打って出てきたヘイニー達に意外そうな表情を見せていたフードの男はやがて、膝を叩いては笑い声を上げ始めていた。
それは彼らが打って出てこらざる得なかった事情、城壁の崩壊を思い出し、さらにそれが自らの手によるものである事も思い出したからであった。
「さぁ、本番だ。私を感心させてくれるのだろうな、貴様ら?」
戦の予感に血気に逸っている指揮官達に、フードの男は近くの騎士達に両手を添えるとそう声を掛ける。
その声にその場にいた男達はこぶしを突き上げると、口々に雄叫びを上げていた。
「・・・さて、もう一つの策略の方はどうなっている?」
興奮した様子で陣幕を飛び出していき、戦の準備へと向かっていく指揮官達。
その場に一人残されたフードの男はキッパゲルラの方へと視線を向けると、そう呟く。
その口元には、残酷に歪んだ笑みが浮かんでいた。
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