【二章開始】『事務員はいらない』と実家からも騎士団からも追放された書記は『命名』で生み出した最強家族とのんびり暮らしたい

斑目 ごたく

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第一章 最果ての街キッパゲルラ

聖剣エクスカリバー捜索

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 翌日、何故か相変わらず冷たい態度のトリニアの機嫌を取るために、ユーリは久しぶりに黄金樹の森を訪れ、万霊草の採取へとやってきていた。

「さて、と・・・早速仕事に取り掛かるか。それにしてもトリニアは何をあんなに怒ってるんだ?周りに聞いても誰も教えてくれないし・・・」

 トリニアが機嫌を損ねている理由を周りに尋ねても、皆笑うばかりで碌に相手をしてくれない。
 その事実に、訳が分からないと彼は首を捻っていた。

「まぁいいや、万霊草を採って帰れば機嫌も直るだろ。おーいネロ、プティ!そろそろ・・・あれ、どこ行ったんだ二人とも?」

 今だに供給不足の状態が続いており、大金になる万霊草を採って帰ればギルドの経営も潤う。
 そうすればトリニアの機嫌も直るだろうと考えるユーリは早速採取を始めようとするが、そこに一緒についてきたはずの二人の姿はなかった。

「「おとーーーさーーーん!!」」
「おっ、いたいた。二人とも、どこに・・・うわぁ!?」

 二人の姿を探すユーリに、その二人が大声を上げながら向かってくる。
 それに安堵するユーリに対して、二人は全く勢いを緩めないまま突っ込んできていた。

「ねーねー、おとーさん!全然、見つかんないよー!!」
「だから、ね・・・一緒に探そ、おとーさん?」

 突っ込んできた二人はそのままユーリに馬乗りになると、その身体を激しく揺すり始める。

「い、一緒に探してって?な、何を?万霊草なら今から・・・」

 前に位置取りユーリの首根っこを掴んで激しく揺するネロに、その後ろから顔を覗かせては訴えかけてくるプティ。
 そんな二人に押し倒されながら、ユーリは訳が分からないと首を捻る。

「万霊草?違うよ、おとーさん!聖剣だよ聖剣!!聖剣エクスカリバー!!」
「駄目だよ、ネロ!まずは妖精の湖を探さないと・・・」
「あ、そうだった!ねーねー、おとーさん!妖精の湖、一緒に探そうよー!」

 ユーリの的外れな言葉に、二人はその身体の上で暴れ始める。
 幾ら小柄で体重の軽い二人といえどそれは堪えたのか、ユーリは小さく呻き声を上げていた。

「聖剣?妖精の湖?そういえばそんなこと言ってたっけ・・・ん?そういえば湖なら、前に地図を書いた時見かけたような・・・」
「本当、おとーさん?」
「えー、そうなのー!?じゃあ早く、早くー!!教えて、教えてー!!」

 トリニアの冷たい態度にそれどころではなかったユーリは、今ようやく二人がそんな事を言っていたと思い出していた。
 そしてさらに彼は思い出す、二人が口にする湖という言葉、それに相当するものを以前見かけた事を。

「ちょ、ちょっと待てって!!今書くから!えーっと、どうだったかな・・・?とりあえずこの黄金樹の森の地図を書けばいいか?」

 ユーリはお腹に乗っかる二人を下ろすと、その能力「自動筆記」を発動させこの森、黄金樹の森の地図を書き出し始める。

「よし、これでどうだ。あれ?これ、前と位置が違うような・・・?」

 書き出した地図、そこには確かに湖の姿が記されている。
 しかしその位置は、前に書き出した時とは明らかに異なっていた。

「あ、湖だ!じゃあ、これが妖精の湖?やったー!!」
「良かったね、ネロ」
「うん!ありがとー、おとーさん!ほら、行くよプティ!」
「ま、待ってよー!」
「あ、おい!?」

 ユーリが書き上げた地図を後ろから覗き込んできたネロは、そこに湖の姿を見つけるとそれを奪い取りそのまま駆け出していく。
 それにプティもついて行き、ユーリは一人取り残されてしまう。

「全く、あの二人は・・・ま、一人の方が静かでいいか。あいつらなら大丈夫だろうし、何せ俺より強いからな」

 一直線に駆けて行き、もはや後ろ姿も見えなくなった二人にユーリは一人頭を掻く。
 そうして散らばった荷物を背負い直したユーリは、一人で万霊草の採取へと向かうのだった。
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