【二章開始】『事務員はいらない』と実家からも騎士団からも追放された書記は『命名』で生み出した最強家族とのんびり暮らしたい

斑目 ごたく

文字の大きさ
上 下
21 / 210
第一章 最果ての街キッパゲルラ

しおりを挟む
「ちっ、いい気なもんだぜ。こっちは、てめぇらにやられた傷のせいで碌に仕事も出来ねぇってのに・・・」
「はははっ、それは自業自得だろー?」
「うるせぇ!!そんなの分かってんだよ!!」

 冒険者ギルドの片隅、建物に併設された酒場スペースでユーリ達の姿へと目をやりながら管を巻いている男が一人。
 それはネロとプティと試験の相手として戦い、彼女達にコテンパンにされた冒険者オーソンであった。

「それよりよオーソン、あの噂聞いたか?」
「あん、あの噂?何の話だ?」
「おいおい、聞いてないのかよ!?あの噂だよあの噂!ついに黄金樹の森に妖精の湖が発見されたっていう!!」

 オーソンと対面に座る冒険者は、彼に顔を寄せると何やら周りを気にして声を潜める。
 それに手にした杯の中身を飲み干したオーソンは、怪訝そうな表情で聞き返していた。

「はぁ?そんな噂かよ!そんなの今までだって散々言われてきた事だろぉ?今更見つかる訳ないっての!」
「それが今度はマジなんだって!妖精の湖を見つけて帰ってきた奴がいるって話でよ!ついに伝説の失われた聖剣エクスカリバーが発見されるかもって・・・おい、どうよオーソン?二人で探しに行かないか、その妖精の湖をよ」
「おいおい、失われた聖剣エクスカリバーだぁ?そんなのはガキのお伽噺の中だけの・・・うおぉぉ!?」

 噂話を本気にする冒険者は、オーソンに一緒にそれを探しに行かないかと持ち掛ける。
 それにオーソンは軽く手を振っては相手にしない様子を見せていたが、何かに気が付いたかのように動きを止めると、突然大声を上げて席から立ち上がる。

「ねーねー、おっさん。おっさんは何で、仕事に行かないのー?」
「な、何だお前らか。ビビらせやがって・・・あぁ?だからそれはお前らのせいだって言ってんだろ!俺だってギルドから頼まれた討伐の仕事があるってのに・・・」
「ふーん、そうなんだ大変だね。それよりそれより!さっきの話の続き聞かせてよ!!妖精の湖って何?聖剣エクスカリバーって何なの!?」

 それは彼らがついているテーブルに顔を乗せ、二人でオーソンの顔を見上げているネロとプティであった。

「大変だねって、誰のせいだと・・・ったく。あぁん、話の続きが聞きたいだと?何だお前ら、聖剣エクスカリバーも知らねぇのか?聖剣エクスカリバーっつうとあれだよ、大昔のアル何とかいう英雄が使ったっていう伝説の聖剣だろ?そんで最後は妖精の湖に沈められたとか」
「そうそう!それでその妖精の湖が最近発見されたって話!昔から黄金樹の森の中にあるって言われてきたんだけど、実際には見つかってなくてさ」

 テーブルの上に身を乗り出しては興味津々といった様子を見せる二人に、オーソンは渋々それを話し始める。
 それに二人は、一々相槌を打ちながら聞き入っていた。

「ねーねーそれで、その聖剣エクスカリバーって凄いの!?」
「凄いのって、そりゃお前・・・伝説の聖剣って言われてるぐらいなんだから、凄いに決まってるだろ?」
「わー、そうなんだ!!」

 オーソンともう一人から大体の話を聞き終わったネロは、その聖剣がどれくらい凄いのかと尋ねる。
 それに伝説の聖剣なんだから凄いに決まっていると返すオーソンに、彼女はさらに瞳を輝かせていた。

「ね、ね!ネロ、私ね・・・!」
「うん、ボクもそう思ってた!」

 お互いの手を握り合い、ネロとプティの二人はキラキラと輝く瞳で何事かを頷き合う。

「「その聖剣を二人で見つけて、おとーさんに妹にしてもらおう!!」」

 そして二人はそれを大声で宣言し、ユーリの下へと駆けていく。

「は?聖剣を妹にって、何を・・・お、おい!?妖精の湖は常に移動してて、選ばれた者の前にしか現れないんだぞって・・・行っちまった」

 二人が口にした言葉は、彼女達の出生の秘密を知らないオーソンには理解出来ない。
 それに戸惑い思わず固まってしまっていた彼は、二人にそれを伝えることが出来ずに頭を掻く。
 その聖剣が沈められている妖精の湖が常に移動しており、そう容易には見つかりはしないという重要な事実を。
しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます

海夏世もみじ
ファンタジー
 月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。  だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。  彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜

ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。 その一員であるケイド。 スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。 戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。 それでも彼はこのパーティでやって来ていた。 彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。 ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。 途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。 だが、彼自身が気付いていない能力があった。 ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。 その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。 自分は戦闘もできる。 もう荷物持ちだけではないのだと。 見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。 むしろもう自分を卑下する必要もない。 我慢しなくていいのだ。 ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。 ※小説家になろう様でも連載中

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

処理中です...