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カイ・リンデンバウムの恐ろしき計画

お目当ての代物と叶わない光景

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「あらよっと!こんなもんか・・・おっ!出たじゃねぇか!」

 先ほどの戦いよりも随分とあっさりとした結末を迎えた戦闘は、その終わりに望んだ結果を齎していた。
 戦いの終わりにその得物を担いでいたエルトンは、それが間違いないかを確認する過程で出現したそれの姿を捉えていた。

「おおっ!これが宝箱か、綺麗なのだ!早速、中身を見てみるのだ!」
「お待ちください、レイモンド様!罠が仕掛けてあるかもしれません、ここは私が」
「そうなのか?うむ、では任せるのだ!」

 エルトンの声にそちらへと視線を向けたエヴァンは、まるで自ら光を放っているかのようにキラキラと輝いている宝箱を目にして、その瞳を輝かせていた。
 早速とばかりにそれに手を掛けようとしていたエヴァンを、ケネスが慌てて止めている。
 このダンジョンに出現する宝箱は、冒険者に協力的だと示すダンジョンの名前の通り、罠が仕掛けられていることは少ないが、それでもその可能性がゼロという訳ではない。
 そのためその宝箱を安全に開けるためには、まず罠の解除技術を習得しているケネスがそれをみてみる必要があるのだった。

「罠は・・・無さそうだな。鍵も掛かってない、っと。大丈夫そうですね、どうぞレイモンド様」
「ん?もう開けてもいいのか?では、開けるぞ!」

 地面に現れた宝箱を様々な角度から観察したケネスは、早々にそれに罠が仕掛けられていないと断定している。
 彼は次にそれに鍵が掛かっていないかと箱の上部へと手を掛けるが、それはあっさりと開いてしまいそうになっていた。
 それをどうにか寸前で踏み止まったケネスは、後ろで今か今かと待ち構えているエヴァンに、その権利を献上する。
 ケネスから宝箱を開ける事を託されたエヴァンは、すぐにそれへと手を伸ばすと躊躇う事なく開いていた。

「おおっ!何だこれは!?綺麗な瓶だが、何かの薬なのか!?」
「これは・・・おそらく、治癒のポーションですね」
「おおっ、これがそうなのか!話には聞いていたが・・・良いものなのだろう?」

 宝箱を開けた瞬間に、その中から光り溢れて見えたのはきっと錯覚だろう。
 ともかくその中身を手にしては、エヴァンがキラキラとその瞳を輝かせているのは間違いない。
 なにやら色の付いた液体の入った瓶を、その宝箱から取り出して掲げているエヴァンは、大袈裟に驚きながらもそれが何かも分からないようだった。
 そんなエヴァンの疑問に、彼が掲げる瓶を横から覗き込んだケネスが答えている。
 彼の言葉に、これが聞いていたアイテムかと感心の呟きを漏らしたエヴァンは、一層それが価値があるものに思えてきたのか、それを大事に抱え込んでいた。

「おいおい、そんな程度で満足してんじゃねぇぞ?まだまだ冒険はこれからじゃねぇか!」
「おお、確かにアーネットの言う通りなのだ!」

 宝箱の周りに集まっては、ちんたらと何事かをやっているエヴァン達に対して、エルトンがまだまだ冒険は始まったばかりだと急かしている。
 確かに彼の言う通り、ここはまだダンジョンの最初のフロア、その中間を超えた辺りといった所でしかない。
 エルトンの言葉に手にしたお宝へと心を奪われていたエヴァンは、どうやら再び冒険への熱意を取り戻したようで、その瞳を前へと向けていた。

「・・・おかしいな、何かさっきよりも敵が弱かったような?あれ、もしかしてまだ仕掛けとか始まってない感じ?う、う~ん・・・まぁ、時間の問題だよな、きっと」

 先ほどの戦いよりも明らかにあっさりとかたのついた戦闘に、カイは一人不安そうな表情を見せている。
 先ほどの戦いでエヴァンが危険な目に遭ったために勘違いしてしまったが、もしかするとヴェロニカ達の仕掛けはまだ始まっていないのではないかと、彼は考えを改める。
 エルトンとケネスという二人の優秀な冒険者のお陰で危険の少ない道中に、彼はもはや勇者であるエヴァンの実力を目にしてみたいという欲求の方が強くなりつつあった。

「よし、では先に進むぞ!皆の者、私についてくるのだ!!」
「先頭は、俺達だけどな」
「そうだったな。では頼んだぞアーネット、ガスリー!」

 冒険心を取り戻したエヴァンの号令に、一行は先に進んでいく。
 カイもそれにつき従い、一行の中へと歩みを進めていた。
 今度こそエヴァンの力をその目に出来るのではと、密かな期待をその心に潜ませて。
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