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勇者がダンジョンにやってくる!

中間管理職レクスはストレスで胃を痛める 2

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「そ、それは彼らも十分理解を―――」
『やはり、一度皆殺してアンデッドとして再生させた方が簡単かしら?私ならば、ある程度知性を残した状態で復活させる事も出来るのだし』

 彼らを必死に擁護するレクスの言葉は、その向こう側から聞こえてきた、ぞっとするほどに冷たい声によって遮られていた。
 その声は彼らゴブリンの命など、欠片ほども気にしていないと示している。
 それはレクスの勘違いなどではないだろう。
 彼女はそれが必要とあれば、躊躇いなく実行するつもりだ。
 そしてそれが本当に実行されるかどうかは、どうやらレクスの振る舞いに掛かっているように思える。
 勘弁してくれ、それが彼の正直な思いであった。

「それだけは、それだけはどうかご勘弁を!!私からもよく言って聞かせておきますので!どうかそれだけは!!」

 自分達の命など何とも思っていないとあっさりと言いのけた存在に、果たして掛けられる言葉などあるだろうか。
 答えは簡単だ、ありはしない。
 そのためレクスはただひたすら平身低頭し、下手に出る事で彼女に許しを請う事しかなかった。

『あらそう?それじゃあお願いしようかしら』
「ははっ、この命に代えましても!!」

 レクスの言葉にあっさりと態度を翻した事が、彼女にとってそれがどうでもいい事であることを裏付けている。
 それでもそれを再び翻させる訳にはいかないレクスは、間髪を入れずに彼女へと了承の言葉を叫んでいた。

『それじゃあ、お話はお終いかしら。あぁ、そう言えば・・・貴方の部下のニックが負傷しているのに、治療室に向かおうとしないの。貴方から言って聞かせてくれるかしら、レクスエリアマネージャー?』
「ニックが・・・了解致しました、すぐにでも連れて参ります!」

 一つの部屋を管理するだけのルームマネージャーと違い、エリアマネージャーは複数の部屋に対する権限を与えられた上位者だ。
 このダンジョンで初めてその役割を与えられ、そして今だにただ一人のエリアマネージャーであるレクスは、上からは睨まれ下からも突き上げられる存在であった。
 そのため、そのストレスは尋常なものではない。

「はぁ・・・もうやだ、この仕事。辞めたい、辞めたいけど・・・辞めたらもっと酷い事になるんだろうなぁ・・・」

 ストレスに痛むお腹を押さえるレクスは、悲痛な呟きを思わず漏らしてしまっていた。
 その呟きを耳にする者はどこにもいない。
 彼は一人、降りかかるストレスを抱え込んでは苦しんでいる。
 しかしそれでも彼は一歩一歩、前へと進んでいく。
 自分がしっかりしなければ、滅ぶかもしれない同族達のために。
 そして今は取り合えず、自分がこれだけ苦しんでいるにもかかわらず、一人好き勝手振舞っては楽をしている相棒をぶん殴るために。
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