171 / 308
勇者がダンジョンにやってくる!
リタはそのダンジョンに興味がある 6
しおりを挟む
「リタ、逃げますよっ!!」
「えー!なんでさー!!」
「お勘定を!お代はここに置いておきますから!!」
まだ子供であるリタをここに連れて来ただけでも不味いのに、こんな騒ぎを起こしては大問題だ。
マーカスは慌てて聖剣を拾い上げると、リタの背中を押してはこの場から立ち去ろうと急いでいる。
リタはそれに不満を訴えていたが、体格に勝るマーカスにぐいぐいとその背中を押されれば、その場にいつまでも留まる事も出来はしない。
「うー・・・じゃあさ、『冒険者の友』っていうダンジョンに行ってもいい?」
「はいはい!分かりました!分かりましたから、今は急いで!!」
「やった、約束だからね!」
お勘定をテーブルへと叩きつけたマーカスの振る舞いに、彼が相当焦っているのを感じ取ったリタは、これ以上は粘れないと即座に悟り、別の狙いへと行動を遷移させる。
マーカスが一刻も早くここから立ち去りたい一心で、他の事に気が回っていない事に気付いたリタは、彼に先ほど聞いたダンジョンに行ってもいいかと尋ねていた。
その内容を特に吟味する事もなく頷いたマーカスは、はいはいと適当に流している。
そんな彼の反応に、リタは軽く跳ねては喜びを表していた。
周りからの注目を気にしては、それにきょろきょろと目をやっているマーカスは、目の前で起こった彼女のそんな反応にすら、気付く事はないのだろう。
「あ、それってボク達の注文?もーらいっと!」
「リタ、はしたないですよ!貴方はもっと、マナーというものを・・・」
「もぐもぐ・・・ん~、結構美味しいよ!マーカスは食べないの?あ、でもこのジュースとは合わないかな?」
ずるずると背中を押されているリタは、その途中で彼らの注文の品を持った給仕の女性をすれ違う。
そのすれ違い様に注文したウインナーとジュースを摘み取った彼女は、それをもぐもぐと楽しんでいた。
マーカスは彼女のそんなはしたない振る舞いを窘めるが、彼女はどこ吹く風と気にする様子も見せはしない。
「なんだったんだ、一体・・・」
「何って、勇者様とそのお付の司祭様だろ?」
飲み干したジュースの杯を適当に近くテーブルへと置いたリタは、そのままマーカスに押されてこの酒場から退出していく。
彼らが立ち去った後の酒場は、ざわざわと落ち着く事はない。
エルトンとケネスの二人が話した内容は、その酒場の至る所で話されているものと変わらぬ呟きであった。
「それでどうするんだ、例の件は?」
「例の件?あぁ、ダンジョンについてか・・・いや、行くよ。行くけど・・・もう少し後でもいいかな」
「あぁ・・・そうだな、全く同感だよ」
先ほどまであれほど行きたがっていたダンジョンに、エルトンは今はいいやと呟いている。
その疲れたような発言に、ケネスも深々と頷いていた。
彼らのテーブルには、温いビールが満たされた木の杯がまだ残されていた。
それを飲み干すまでには、どうやらまだ随分と時間が掛かりそうであった。
「えー!なんでさー!!」
「お勘定を!お代はここに置いておきますから!!」
まだ子供であるリタをここに連れて来ただけでも不味いのに、こんな騒ぎを起こしては大問題だ。
マーカスは慌てて聖剣を拾い上げると、リタの背中を押してはこの場から立ち去ろうと急いでいる。
リタはそれに不満を訴えていたが、体格に勝るマーカスにぐいぐいとその背中を押されれば、その場にいつまでも留まる事も出来はしない。
「うー・・・じゃあさ、『冒険者の友』っていうダンジョンに行ってもいい?」
「はいはい!分かりました!分かりましたから、今は急いで!!」
「やった、約束だからね!」
お勘定をテーブルへと叩きつけたマーカスの振る舞いに、彼が相当焦っているのを感じ取ったリタは、これ以上は粘れないと即座に悟り、別の狙いへと行動を遷移させる。
マーカスが一刻も早くここから立ち去りたい一心で、他の事に気が回っていない事に気付いたリタは、彼に先ほど聞いたダンジョンに行ってもいいかと尋ねていた。
その内容を特に吟味する事もなく頷いたマーカスは、はいはいと適当に流している。
そんな彼の反応に、リタは軽く跳ねては喜びを表していた。
周りからの注目を気にしては、それにきょろきょろと目をやっているマーカスは、目の前で起こった彼女のそんな反応にすら、気付く事はないのだろう。
「あ、それってボク達の注文?もーらいっと!」
「リタ、はしたないですよ!貴方はもっと、マナーというものを・・・」
「もぐもぐ・・・ん~、結構美味しいよ!マーカスは食べないの?あ、でもこのジュースとは合わないかな?」
ずるずると背中を押されているリタは、その途中で彼らの注文の品を持った給仕の女性をすれ違う。
そのすれ違い様に注文したウインナーとジュースを摘み取った彼女は、それをもぐもぐと楽しんでいた。
マーカスは彼女のそんなはしたない振る舞いを窘めるが、彼女はどこ吹く風と気にする様子も見せはしない。
「なんだったんだ、一体・・・」
「何って、勇者様とそのお付の司祭様だろ?」
飲み干したジュースの杯を適当に近くテーブルへと置いたリタは、そのままマーカスに押されてこの酒場から退出していく。
彼らが立ち去った後の酒場は、ざわざわと落ち着く事はない。
エルトンとケネスの二人が話した内容は、その酒場の至る所で話されているものと変わらぬ呟きであった。
「それでどうするんだ、例の件は?」
「例の件?あぁ、ダンジョンについてか・・・いや、行くよ。行くけど・・・もう少し後でもいいかな」
「あぁ・・・そうだな、全く同感だよ」
先ほどまであれほど行きたがっていたダンジョンに、エルトンは今はいいやと呟いている。
その疲れたような発言に、ケネスも深々と頷いていた。
彼らのテーブルには、温いビールが満たされた木の杯がまだ残されていた。
それを飲み干すまでには、どうやらまだ随分と時間が掛かりそうであった。
0
お気に入りに追加
183
あなたにおすすめの小説
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜
ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。
その一員であるケイド。
スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。
戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。
それでも彼はこのパーティでやって来ていた。
彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。
ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。
途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。
だが、彼自身が気付いていない能力があった。
ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。
その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。
自分は戦闘もできる。
もう荷物持ちだけではないのだと。
見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。
むしろもう自分を卑下する必要もない。
我慢しなくていいのだ。
ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。
※小説家になろう様でも連載中
2度追放された転生元貴族 〜スキル《大喰らい》で美少女たちと幸せなスローライフを目指します〜
フユリカス
ファンタジー
「お前を追放する――」
貴族に転生したアルゼ・グラントは、実家のグラント家からも冒険者パーティーからも追放されてしまった。
それはアルゼの持つ《特殊スキル:大喰らい》というスキルが発動せず、無能という烙印を押されてしまったからだった。
しかし、実は《大喰らい》には『食べた魔物のスキルと経験値を獲得できる』という、とんでもない力を秘めていたのだった。
《大喰らい》からは《派生スキル:追い剥ぎ》も生まれ、スキルを奪う対象は魔物だけでなく人にまで広がり、アルゼは圧倒的な力をつけていく。
アルゼは奴隷商で出会った『メル』という少女と、スキルを駆使しながら最強へと成り上がっていくのだった。
スローライフという夢を目指して――。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
『殺す』スキルを授かったけど使えなかったので追放されました。お願いなので静かに暮らさせてください。
晴行
ファンタジー
ぼっち高校生、冷泉刹華(れいぜい=せつか)は突然クラスごと異世界への召喚に巻き込まれる。スキル付与の儀式で物騒な名前のスキルを授かるも、試したところ大した能力ではないと判明。いじめをするようなクラスメイトに「ビビらせんな」と邪険にされ、そして聖女に「スキル使えないならいらないからどっか行け」と拷問されわずかな金やアイテムすら与えられずに放り出され、着の身着のままで異世界をさまよう羽目になる。しかし路頭に迷う彼はまだ気がついていなかった。自らのスキルのあまりのチートさゆえ、世界のすべてを『殺す』権利を手に入れてしまったことを。不思議なことに自然と集まってくる可愛い女の子たちを襲う、残酷な運命を『殺し』、理不尽に偉ぶった奴らや強大な敵、クラスメイト達を蚊を払うようにあしらう。おかしいな、俺は独りで静かに暮らしたいだけなんだがと思いながら――。
ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~
名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる