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シーサーペントとの激闘 1

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 舞い上がった景色は、一瞬の内に途切れて消える。
 それは衝撃に、意識が寸断してしまったからだろうか。
 地面へと叩きつけられる衝撃に意識を取り戻したクリスは、背中を叩いた痛みに呼吸を失って、叫び声すら上げることは出来なかった。

「クリス!?くっ、湖の近くなら届くのか!!」

 シーサーペントの尾は、湖岸の走ってその注意を引いていたクリスの身体を弾き飛ばしていた。
 その長く巨大な身体であれば、湖の近くの地面など十分に射程範囲なのだろう。
 シーサーペントが放つブレスだけを警戒していたクリスに、それを避けることなど出来ようもない。
 クリスが地面へと叩きつけられるのを為す術なく見送ったハロルドは、今だに水上を漂っているシーサーペントの尾へと目をやると、慌てて湖岸から距離を取っていた。

「・・・ぅぁ、・・・に・・・げ・・・」

 まだうまく呼吸することの出来ないクリスは、何とか声を絞り出してハロルドに逃げるように促そうとしていた。
 彼は囮役である自分がやられた時点で、ハロルドの作戦はご破算になったと考えたのだろう。
 そんな彼に、無慈悲にもシーサーペントの止めが迫る。
 首を擡げたシーサーペントは、その口腔を地面へと倒れたクリスへと向けていた。

「クリス!今行くから!!」

 クリスのピンチに動いたのは、ハロルドではない。
 通路の縁から飛び出してきたアイリスが、全速力で彼の下へと駆け出している。

『うおおぉぉぉっ!こうなりゃやけだ!!行くぞ、アイリス!!』

 彼女の傍らには、半透明のスライムが跳ね回っている。
 クリスの危機に、アイリスと共に思わず飛び出してきてしまったそのスライム、カイはもはややけくそだと触手を伸ばしている。
 その触手はクリスの傍らにまで伸び、アイリスの身体をその背後から挟み込んでいた。

「え、えっ!?ス、スライムさん?一体何を・・・?」

 カイの行動の意味が分からず戸惑うアイリスも、すぐにそれを理解するだろう。
 クリスのそばの地面へしっかりとその触手を固定したカイは、それを急速に縮ませ始める。
 彼の本体は、丁度アイリスの背後にあった。

「きゃあああぁぁぁ!!?」
『間に、合えぇぇぇ!!!』

 弾けるように縮まっていく距離に、カイの身体はアイリスの背中へとぶつかっている。
 そのスピードによる衝撃も、彼の柔らかな身体であれば大したダメージにもならない。
 カイに背中を押されることで猛スピードで移動しているアイリスは、訳の分からない状態に悲鳴を上げている。
 そのスピードは、シーサーペントの攻撃を上回れるだろうか。
 アイリスの身体を押しているカイからは、その背中によってシーサーペントの姿を見ることは出来なかった。
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