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裏切り者達
少女はそれを知ってしまう
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薄暗い室内に、色づいた光が瞬いている。
それはそこに漂っている埃の姿を映し出し、この部屋の淀んだ空気を物語っていた。
「うぅ・・・大丈夫かなぁ?大丈夫だよね?」
そこに一人座り込み、携帯ゲーム機へと目線を落としているのは殺人鬼の少女、あさひだ。
ツンとした匂いが鼻につくこの部屋に、そこは彼女が翔と出会ったボイラー室なのだろう。
彼女がそこに戻ってきたのは、それがその思い出の場所だったからか。
それが正しいかは分からないが、少なくとも彼女が今、そのゲームに夢中であることだけは確かであった。
「よしよしよし、いけるいけるよ!」
視力を悪くしそうな距離感でゲームの画面を覗き込むあさひは、先ほど呟いていた不安そうな声とは打って変わって、急に勢いづいた声を上げ始める。
それは彼女がプレイしているゲームのボスか何かとの戦いが、佳境に入ったことを知らせる合図だろう。
必要以上の力でボタンを押し込んでいる彼女の仕草に、その盛り上がりが否が応にも伝わってくる。
「嘘っ!?それが、当たるの!?でも、もうちょっとの筈・・・」
あさひの熱の篭った実況は、その戦いの白熱具合を余す事なく伝えている。
際どい戦いに、さらに姿勢を前のめりにしていく彼女はもはや、膝とおでこを重ねるようにしていた。
「いけ、いけいけいけ・・・いった?や、やったー!!!」
ギリギリの戦いは、その勝利に対する喜びを飛躍的に増大させる。
その結末を直接目にするのを恐れるように、顔を背け画面へと窺うように視線を向けていたあさひは、倒れゆくボスの姿に勝利を確信すると、両手を振り上げて喜びを爆発させていた。
「あ、あれ?ゲームは・・・あわわわわっ!?」
爆発した喜びは、今まさに握り締めていたその存在さえも忘却させてしまうのだろう。
喜びに振り上げた両手は、その手に握り締めていたゲーム機さえもぶち上げている。
自らの手の平からなくなった感触に、ようやくその事実を気付いたあさひが天井を見上げると、そこには丁度ゆっくりとした放物線を描いて、再び地上へと落ちてくるゲーム機の姿があった。
「あ、危なかったー・・・だ、大丈夫かな?」
どうにか、それが地面へと墜落する前に受け止めたあさひは、それが壊れてしまっていないかと心配そうに揺すっている。
受け止めた衝撃に僅かに奔ったノイズも、それ一度きりで収まり、今もそれはこの薄暗い部屋の中で煌々と光を放っていた。
「良かったぁ・・・じゃあ、続き続きっと」
画面のそんな様子に安堵の息を漏らしたあさひは、再びいつものポジションへと戻ると、ゲームの続きが楽しみでしょうがないという様子で足をパタパタと遊ばせている。
ゲーム機の画面を食い入るように見詰める彼女のは、その続きを促しては強く、ボタンを押していた。
『何故だ、何故我に従わん!?この・・・父である我に!!』
『・・・あなたのした事は許されない。だから・・・例え父だとしても、僕はあなたを討つ!!』
ゲーム機の画面では、その物語のクライマックスであろう場面が映し出していた。
ギリギリの戦いを制した後の興奮ためか、ポーっとした表情でその画面を見詰めるあさひは、まるで魅入られたようにその台詞を耳にする。
「お父さんなのに殺しちゃうんだ・・・」
自らの父親すら倒すと口にするゲームの中の主人公に、あさひはどこかうなされるようにその言葉を呟いていた。
その唇から漏れ出した熱は果たして、先ほどの興奮によるものか、それともまた別のものによるものなのか。
「そっか・・・そうなんだ」
彼女が呟いたその声は、まるで自分に言い聞かせるような言葉だった。
ゲームの画面の中では今まさに、ゲームの主人公がその剣を父親へと突き刺している。
ゲームの中の彼はその悲劇に頬へと涙を伝わせているが、果たしてそれを彼女が目にしているだろうか。
熱に浮かれているように視線を彷徨わせているあさひは、その口元を笑みのような形へと変えてしまっていた。
「どこで油を売っているの!?早く来なさい!!」
そんな彼女に、早く戻って来いと呼ぶ声がする。
それは彼女の、母親の声であろう。
「・・・はーい」
その声に応え、その場から腰を上げたあさひは、頭の後ろへとやっていたホッケーマスクを被り直す。
部屋の隅の方へと放置していたチェーンソーも抱え込んだ彼女は、唇に浮かべた笑みを隠したままで、その声がした方へと歩いていく。
彼女が去った後のボイラー室には、どこか悲しげなBGMだけが、放置されたゲーム機から流れ続けていた。
それはそこに漂っている埃の姿を映し出し、この部屋の淀んだ空気を物語っていた。
「うぅ・・・大丈夫かなぁ?大丈夫だよね?」
そこに一人座り込み、携帯ゲーム機へと目線を落としているのは殺人鬼の少女、あさひだ。
ツンとした匂いが鼻につくこの部屋に、そこは彼女が翔と出会ったボイラー室なのだろう。
彼女がそこに戻ってきたのは、それがその思い出の場所だったからか。
それが正しいかは分からないが、少なくとも彼女が今、そのゲームに夢中であることだけは確かであった。
「よしよしよし、いけるいけるよ!」
視力を悪くしそうな距離感でゲームの画面を覗き込むあさひは、先ほど呟いていた不安そうな声とは打って変わって、急に勢いづいた声を上げ始める。
それは彼女がプレイしているゲームのボスか何かとの戦いが、佳境に入ったことを知らせる合図だろう。
必要以上の力でボタンを押し込んでいる彼女の仕草に、その盛り上がりが否が応にも伝わってくる。
「嘘っ!?それが、当たるの!?でも、もうちょっとの筈・・・」
あさひの熱の篭った実況は、その戦いの白熱具合を余す事なく伝えている。
際どい戦いに、さらに姿勢を前のめりにしていく彼女はもはや、膝とおでこを重ねるようにしていた。
「いけ、いけいけいけ・・・いった?や、やったー!!!」
ギリギリの戦いは、その勝利に対する喜びを飛躍的に増大させる。
その結末を直接目にするのを恐れるように、顔を背け画面へと窺うように視線を向けていたあさひは、倒れゆくボスの姿に勝利を確信すると、両手を振り上げて喜びを爆発させていた。
「あ、あれ?ゲームは・・・あわわわわっ!?」
爆発した喜びは、今まさに握り締めていたその存在さえも忘却させてしまうのだろう。
喜びに振り上げた両手は、その手に握り締めていたゲーム機さえもぶち上げている。
自らの手の平からなくなった感触に、ようやくその事実を気付いたあさひが天井を見上げると、そこには丁度ゆっくりとした放物線を描いて、再び地上へと落ちてくるゲーム機の姿があった。
「あ、危なかったー・・・だ、大丈夫かな?」
どうにか、それが地面へと墜落する前に受け止めたあさひは、それが壊れてしまっていないかと心配そうに揺すっている。
受け止めた衝撃に僅かに奔ったノイズも、それ一度きりで収まり、今もそれはこの薄暗い部屋の中で煌々と光を放っていた。
「良かったぁ・・・じゃあ、続き続きっと」
画面のそんな様子に安堵の息を漏らしたあさひは、再びいつものポジションへと戻ると、ゲームの続きが楽しみでしょうがないという様子で足をパタパタと遊ばせている。
ゲーム機の画面を食い入るように見詰める彼女のは、その続きを促しては強く、ボタンを押していた。
『何故だ、何故我に従わん!?この・・・父である我に!!』
『・・・あなたのした事は許されない。だから・・・例え父だとしても、僕はあなたを討つ!!』
ゲーム機の画面では、その物語のクライマックスであろう場面が映し出していた。
ギリギリの戦いを制した後の興奮ためか、ポーっとした表情でその画面を見詰めるあさひは、まるで魅入られたようにその台詞を耳にする。
「お父さんなのに殺しちゃうんだ・・・」
自らの父親すら倒すと口にするゲームの中の主人公に、あさひはどこかうなされるようにその言葉を呟いていた。
その唇から漏れ出した熱は果たして、先ほどの興奮によるものか、それともまた別のものによるものなのか。
「そっか・・・そうなんだ」
彼女が呟いたその声は、まるで自分に言い聞かせるような言葉だった。
ゲームの画面の中では今まさに、ゲームの主人公がその剣を父親へと突き刺している。
ゲームの中の彼はその悲劇に頬へと涙を伝わせているが、果たしてそれを彼女が目にしているだろうか。
熱に浮かれているように視線を彷徨わせているあさひは、その口元を笑みのような形へと変えてしまっていた。
「どこで油を売っているの!?早く来なさい!!」
そんな彼女に、早く戻って来いと呼ぶ声がする。
それは彼女の、母親の声であろう。
「・・・はーい」
その声に応え、その場から腰を上げたあさひは、頭の後ろへとやっていたホッケーマスクを被り直す。
部屋の隅の方へと放置していたチェーンソーも抱え込んだ彼女は、唇に浮かべた笑みを隠したままで、その声がした方へと歩いていく。
彼女が去った後のボイラー室には、どこか悲しげなBGMだけが、放置されたゲーム機から流れ続けていた。
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