最弱能力「毒無効」実は最強だった!

斑目 ごたく

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アランとアレクシア

強者と弱者 2

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「―――ならば、奪い取るだけでござる」

 その時どこかから聞こえてきた声は、野太く低い響きをしていた。
 それと同時に放たれた矢によって、森から出てきたゴブリン達が射抜かれていく。

「はははっ!そうだ、その通りだよ!!弱者は何としてもそれを強者から奪い取るんだよ、どんな手を使ってもな!!なぁそうだろう、ダンカン!!」

 まさに我が意に叶ったりと、邪悪に口元を歪めてはゴブリンが射殺されていく様を眺めるアランは、笑い声を上げながらそれらがやってきた方へと目を向ける。
 そこには見上げるような大男、ダンカンの姿があった。

「全くその通りでござるな、アラン殿」

 興奮している様子のアランに対して、それに答えるダンカンは冷静そのものだ。
 それは彼の背後に並んでいる部下達が、耐毒機能を失ったスーツを気休めに身に纏っているのに対して、彼だけが普段通りの格好であることも無関係ではないだろう。
 毒に対する備えのない彼は、なるべく呼吸をしなくて済むように控えめな態度をしているようだ。

「いいねぇ・・・おいダンカン、替えの武器の一つぐらい用意してんだろ?そいつを寄越しな、俺ん奴はこうだからよ」
「・・・これしかないでござるが、良いでござるか?」
「斧かよ。苦手なんだけどな・・・まぁいいや、そいつで満足してやるよ」

 自らが手にしていた柄だけになってしまった剣を放り投げると、アランはダンカンに代わりの武器を要求している。
 その意図をダンカンは見抜いているのか、自らの得物である斧を彼へと手渡していた。

「そんじゃ、ダンカン。お前はそれとそいつを抱えて、とっとと帰りな!後は俺が何とかしてやっから!てめぇら、俺に続けぇ!!」

 ダンカンから斧を受け取ったアランは、そのまま彼の部下を引き連れてゴブリン達へと突撃していく。
 気休めのスーツすら身に纏わずこの場にいるダンカンを、アランは余り引き留めたくなかったのだろう。
 そして何より彼に遺物と、その場に力なく蹲っているアレクシアを一刻も早く回収して欲しかったようだ。

「お前ら、あれの胸と背中の装置はなるべく傷つけんじゃねぇぞ!!奪って使うんだからな!そら、手早く済ませっぞ!!」

 そう口にしたアランが早速、目の前のゴブリンを真っ二つにしている。
 それは例え破損したスーツでも、補修や何かに使えるだろうという判断の下なんだろう。
 アランの指示の下にゴブリンを攻撃している部下達の動きは、先ほどまでより慎重なものとなっている。
 しかしそれを埋めて余りあるようなペースで、アランがそれらを薙ぎ払っていっていた。

「お姉様ー!!」

 その光景を、アレクシアは力なく眺めている。
 そんな彼女に駆けよってくる、ずんぐりとしたシルエットが一つ。
 それはそのまま、アレクシアの下へと飛び込んでいっていた。 

「・・・ブレンダ?きゃあ!?」
 力なくその場に佇んでいたアレクシアは、飛び込んでくるそのシルエットを受け止めることなど出来ない。
 彼女はそれが自らの妹だと気付いた時には、それに押し倒されてしまっていた。

「お姉様、お姉様、お姉様ぁぁぁ!!!」
「ちょ、ちょっとブレンダ。痛いよ・・・」

 アレクシアを押し倒し、それと絡みつくように抱き着いたブレンダは、彼女の顔へと自らの頬を擦りつけている。
 実際にはそれは、二人とも耐毒スーツを身に纏っている関係上、ガラス状の覆いをコツンコツンとぶつけるだけであったが、その感情に違いはないだろう。

「・・・そっか。もう、私一人で頑張らなくてもいいんだ・・・」

 涙ながらに激しく抱きしめてくるブレンダの力は、正直ちょっと痛い。
 それでもそれを暖かいと感じることの出来たアレクシアは、安堵に緊張を緩めた表情でアラン達の方へと顔を向けていた。
 そこにはアランを先頭に、ゴブリンと戦っている仲間達の姿があった。
 そこに自分の姿がないことを悔しいと感じた今は、暖かな体温に絆されていく。
 そうして伝った涙は一筋、それも冷たくはなかった。

「むぅ、思ったよりも重いでござるな・・・うっ、不味いでござる!?こ、呼吸が・・・そ、そこのお二方!これを運ぶのを手伝ってもらえないでござるか?あ、あのー・・・聞いてるござるか?アレクシア殿、ブレンダ殿ー・・・?」

 アランが託した遺物の下へとその大きな身体を潜り込ませたダンカンはしかし、その思った以上の重量に中々運び出せずにいる。
 そうしてまごまごしている内に、この場で気休めのスーツすら身に纏っていない唯一の人物であるダンカンの呼吸はみるみる苦しくなっていき、もはや限界へと近づいてしまっていた。
 そんな彼は当然、近くにいるアレクシア達へと救援を求めるが、お互いの事に夢中な彼女ら姉妹には彼の悲痛な叫びはどうやら届くことはないようだった。
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