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アランとアレクシア
作戦開始
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「おい、アレクシア。それの修繕は、いい加減終わってもいい頃だろ?」
ヒリヒリと漂う緊張感は、先ほどまでのものとは比べ物にならない。
それはそれだけ、敵対している者が本気になったことを示してした。
そんな守護者に対して警戒の視線を向けながら、アランはアレクシアへと話しかけている。
彼女と彼の距離は、大きく飛び退いた関係で小声で話しても声が届く距離にまで近づいていた。
「えっ?う、うん。もう大体終わったけど・・・」
「なら戦えるな。あいつを倒すのに協力してくれ」
「はぁ?あんな奴、倒せる訳ないでしょ!?馬鹿じゃないの!?」
元々、アランが守護者と対峙していたのは、彼女が鞄を補修するための時間を稼ぐ意味合いが大きい。
それを無事達成したのならば、後は散乱してしまった荷物を回収してこの場から逃げ出せばいい。
そうアランから提案されることを期待していたアレクシアに、彼は全く別の言葉を掛けていた。
「そんな事より、ここからさっさと逃げた方がいいに決まってるじゃない!あんたもそのために、私に鞄を直させたんじゃないの?だから荷物を回収して―――」
「いいから聞け!俺に考えがある!それにあれを回収しときたいのは、お前も同じだろう?あれを持って帰るには、あいつを倒すしかねぇぞ?」
「うぅ・・・確かにそうだけど」
逃げ出すための算段を既に考え始めていたのであろうアレクシアは、アランの言葉に信じられないと驚いている。
しかしアランはそんな彼女に、ここまで苦労して運んできた遺物の存在を引き合いにだし説得しようと試みている。
確かにアレクシアも。浄水施設の可能性もあるその施設を手放すには惜しいと感じており、先ほどまでよりも明らかに反論の勢いがなくなってしまっていた。
「はいはい、分かったわよ!とにかく聞いてあげるから、話してみないよね!つまらない話だったら、承知しないから!」
「おし!それじゃあまずは―――」
井戸が枯れてしまった村に、残りのそれらもいつ枯れてしまうか分からない。
それを考えれば、恒久的な飲み水の確保はアレクシア達にとって至上命題であった。
その可能性のある遺物を手放すのは惜しいと考えるのは、自然なことだろう。
アランの説得に渋々といった様子で折れて見せたアレクシアは、彼の計画を聞いてから判断するという態度を見せている。
それに早速とばかりに、アランは身を乗り出して自らの計画を披露し始めていた。
「はぁ!?そんなの無理に決まってるでしょ!?」
アランから計画の詳細を説明されたアレクシアは、そのとんでもない内容に驚きの声を上げている。
それは、否定の意味を持った態度だろう。
「いやいや、いけるって!アレクシアなら、出来る出来る!」
「そ、そう?やっぱりそう思う?」
「思う思う!!いやー、アレクシアがここにいてくれて助かったなぁ!!飛び切り優秀な奴にしか、こんな役目任せられないからなー」
アレクシアのそんな態度に、アランは慌てて彼女をおだて始めている。
それはあからさまなおべっかであったが、どうやら彼女にはそれがお気に召したようで、もっと言って欲しそうにチラチラとこちらに視線を向けていた。
「ふーん、そうなんだ。まぁ?そこまで言うんならやってやらないこともないわよ?そこまで言うんならね?」
「お願いします、アレクシア・ハートフィールド様!!」
「ふふーん、仕方ないわねぇ!そこまで言われちゃ、やるしかないじゃない!」
明らかに自らを讃える言葉を欲しがっているアレクシアに、アランは素早く頭を下げると彼女を持ち上げる言葉を吐いている。
それを受けて頬を上気させたアレクシアは、腰に手を当てるとはっきりと了承を告げる。
その表情からは、この計画の困難さなど完全に忘れさられてしまっていることが窺えた。
「・・・ちょろいな」
「?何か言った?」
「い、いや!何でもないっすよ!」
そんなアレクシアの姿に、思わず漏れてしまったアランの余計な一言は、どうにか彼女には聞かれずに済んだようだ。
「ふーん、まぁなんでもいいけど。それより、早く始めるわよ!私の実力、見せてやるんだから!」
「期待してるぞ、アレクシア!」
「まっかせなさい!!」
作戦の始まりに合図と上げた声は、守護者の鉄槌によってかき消された。
しかしその攻撃を二人は当然のように読んでおり、当初の予定通りに素早く左右へと分かれている。
それは図らずとも、作戦の開始を告げていた。
ヒリヒリと漂う緊張感は、先ほどまでのものとは比べ物にならない。
それはそれだけ、敵対している者が本気になったことを示してした。
そんな守護者に対して警戒の視線を向けながら、アランはアレクシアへと話しかけている。
彼女と彼の距離は、大きく飛び退いた関係で小声で話しても声が届く距離にまで近づいていた。
「えっ?う、うん。もう大体終わったけど・・・」
「なら戦えるな。あいつを倒すのに協力してくれ」
「はぁ?あんな奴、倒せる訳ないでしょ!?馬鹿じゃないの!?」
元々、アランが守護者と対峙していたのは、彼女が鞄を補修するための時間を稼ぐ意味合いが大きい。
それを無事達成したのならば、後は散乱してしまった荷物を回収してこの場から逃げ出せばいい。
そうアランから提案されることを期待していたアレクシアに、彼は全く別の言葉を掛けていた。
「そんな事より、ここからさっさと逃げた方がいいに決まってるじゃない!あんたもそのために、私に鞄を直させたんじゃないの?だから荷物を回収して―――」
「いいから聞け!俺に考えがある!それにあれを回収しときたいのは、お前も同じだろう?あれを持って帰るには、あいつを倒すしかねぇぞ?」
「うぅ・・・確かにそうだけど」
逃げ出すための算段を既に考え始めていたのであろうアレクシアは、アランの言葉に信じられないと驚いている。
しかしアランはそんな彼女に、ここまで苦労して運んできた遺物の存在を引き合いにだし説得しようと試みている。
確かにアレクシアも。浄水施設の可能性もあるその施設を手放すには惜しいと感じており、先ほどまでよりも明らかに反論の勢いがなくなってしまっていた。
「はいはい、分かったわよ!とにかく聞いてあげるから、話してみないよね!つまらない話だったら、承知しないから!」
「おし!それじゃあまずは―――」
井戸が枯れてしまった村に、残りのそれらもいつ枯れてしまうか分からない。
それを考えれば、恒久的な飲み水の確保はアレクシア達にとって至上命題であった。
その可能性のある遺物を手放すのは惜しいと考えるのは、自然なことだろう。
アランの説得に渋々といった様子で折れて見せたアレクシアは、彼の計画を聞いてから判断するという態度を見せている。
それに早速とばかりに、アランは身を乗り出して自らの計画を披露し始めていた。
「はぁ!?そんなの無理に決まってるでしょ!?」
アランから計画の詳細を説明されたアレクシアは、そのとんでもない内容に驚きの声を上げている。
それは、否定の意味を持った態度だろう。
「いやいや、いけるって!アレクシアなら、出来る出来る!」
「そ、そう?やっぱりそう思う?」
「思う思う!!いやー、アレクシアがここにいてくれて助かったなぁ!!飛び切り優秀な奴にしか、こんな役目任せられないからなー」
アレクシアのそんな態度に、アランは慌てて彼女をおだて始めている。
それはあからさまなおべっかであったが、どうやら彼女にはそれがお気に召したようで、もっと言って欲しそうにチラチラとこちらに視線を向けていた。
「ふーん、そうなんだ。まぁ?そこまで言うんならやってやらないこともないわよ?そこまで言うんならね?」
「お願いします、アレクシア・ハートフィールド様!!」
「ふふーん、仕方ないわねぇ!そこまで言われちゃ、やるしかないじゃない!」
明らかに自らを讃える言葉を欲しがっているアレクシアに、アランは素早く頭を下げると彼女を持ち上げる言葉を吐いている。
それを受けて頬を上気させたアレクシアは、腰に手を当てるとはっきりと了承を告げる。
その表情からは、この計画の困難さなど完全に忘れさられてしまっていることが窺えた。
「・・・ちょろいな」
「?何か言った?」
「い、いや!何でもないっすよ!」
そんなアレクシアの姿に、思わず漏れてしまったアランの余計な一言は、どうにか彼女には聞かれずに済んだようだ。
「ふーん、まぁなんでもいいけど。それより、早く始めるわよ!私の実力、見せてやるんだから!」
「期待してるぞ、アレクシア!」
「まっかせなさい!!」
作戦の始まりに合図と上げた声は、守護者の鉄槌によってかき消された。
しかしその攻撃を二人は当然のように読んでおり、当初の予定通りに素早く左右へと分かれている。
それは図らずとも、作戦の開始を告げていた。
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