最弱能力「毒無効」実は最強だった!

斑目 ごたく

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アランとアレクシア

いつか憧れた姿

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(あぁ、そうか。あんたはあの時から何も、変わってないんだ。ふふふっ、もう見た目は全然変わっちゃったのに・・・そっか、そうなんだ)

 いつか憧れた、真っ直ぐな瞳をした純真な少年はもういない。
 それでもその在り方は変わらずにここにあるのだと、アレクシアは目の前の男の凶悪な姿から感じ取っていた。

(だったら、私も変わらないと)

 迷いに俯いていた顔も、それを振り切れば覚悟の決まった表情へと変わる。
 いつか抱いた憧れは、やがて嫉妬へと変わっていた。
 それも今、また別の感情へと変わる。
 その名前をまだ、彼女は知らない。

「おい、いつまで黙って―――」
「避けなさい!!」

 言葉を濁したまま、いつまでも結論を口にしないアレクシアに、アランは痺れを切らしたようにその顔を覗き込もうとしている。
 その隙だらけな姿を、全身傷だらけのゴブリンが後ろから狙っている。
 その様子は、彼女の方からはよく見えていた。

「うおっ!?危ねぇな、おい!・・・って、何だこいつら?後ろから来てたのか?」
「ふんっ!偉そうなこと言っちゃって!そんなのにも気付かないなんて、とんだ救世主様ね!!」

 アレクシアが投げつけたナイフは、アランを背中から襲おうとしていたゴブリンの眉間へと突き刺さっている。
 それは見事な腕前であったが、彼女の指示にアランが慌てて屈まなければ、そちらの方に突き刺さっていた軌道であった。

「あぁ?んだと、こら!ここまで誰のおかげでこれたと思ってんだ!?」
「だから、その救世主様のお陰でしょ?私はここの物資を集めるから、それまで援護して!分かった?」
「お、おぅ・・・任せろ」

 助けられた事実も、挑発的な言葉をぶつけられれば怒りに変わる。
 アレクシアからぶつけられた言葉に応えるように荒い言葉を返していたアランはしかし、彼女のその実力を認めるような態度に拍子を抜けしてしまっていた。

「まぁ?そんな風に言われたしょうがあるめぇなぁ!!はっ、ようやくてめぇも俺様のありがたさが分かったか!!お前ら運がいいぜ!俺様みたいな強者が手を貸してくれるんだからな!!精々感謝しろよな!!」

 最初こそ面食らっていたアランも、時間が経つにつれじわじわと嬉しさが込み上げてきたのか、ニヤニヤとその口元を緩ませると、それを誤魔化すように頭を掻いている。
 そうしてこの部屋に残ったゴブリンを警戒するように剣を振るったアランの太刀筋は、先ほどまでのものよりもさらに鋭いものであった。

「はいはい、分かったから。しっかりやってよね」
「あぁ?誰にもの言ってんだ?このアラン・ブレイク様が負けるわきゃねぇ・・・おぉ!?」

 アランの調子の乗った発言と態度は、まともに受け取れば苛立ちを覚えてしまうものだろう。
 しかしアレクシアはそれを適当に聞き流すと、この部屋の物資を集めることに集中している。
 その姿は無防備で、まだこの部屋に残っているゴブリンの事を考えれば危険であったが、彼女にはそれで問題ないという絶対の信頼があった。

「何よ?変な声上げないでよね・・・って、嘘でしょ!?」

 背中の鞄に向かってこの部屋にある有用そうな物資を放り込んでいたアレクシアは、アランが上げた素っ頓狂な声にそちらへと顔を向ける。
 その先には、通路の奥から次から次へとゴブリンがやってきている所であった。
 そしてそのゴブリン達は、例外なく完全にいきり立ち殺気に満ちた表情を見せていたのだ。

「はっ!これはこれは大勢での歓迎、痛み入るね!ウエルカムドリンクはどこで貰えるのかな?おっと、そういえばもう貰ってたな・・・うえっ、不味ぃ!?」
「はぁ?何、恰好つけてんのよ!?完全にあんたの所為でしょ、これ!!どうするつもりなのよ!?」

 そんな状況にあっても、アランは余裕の態度を崩さない。
 彼が格好つけた言葉を飾るために舐めた剣先は、ゴブリンの血に塗れている。
 それを舐め取ったアランは、その余りの不味さに必死にそれを吐き出そうとしていた。
 そんな状態の彼には、アレクシアの焦った言葉に応える余裕はなさそうだった。

「ぺっ!ぺっぺっ!!あぁ?そんなの決まってんだろ?」
「っ、そうよね!もう十分な成果はあったんだし、ここで退いても―――」

 一頻り口の中のえぐみを吐き出したアランは、振り返ると不敵な笑みを見せている。
 彼のそんな表情を目にしても、アレクシアはこの状況で当然の結論である逃走を願って、一歩後ろへと重心を引いてしまっていた。

「強行突破だ!!」

 そんなアレクシアの期待を裏切って、アランは前へと踏み出している。
 その一太刀はこの部屋へとやってきたゴブリンの先頭を切り裂いているが、その数はまだまだ集団の一握りに過ぎない。

「なんでよ!?馬鹿じゃないの!!?」

 アレクシアが口にしたその突っ込みは、もっともなものだ。
 しかし幾つかの物資を回収し、背中の荷物が重くなってしまった彼女は今ここに一人になる訳にもいかず、前へと飛び出していくアランの後ろについていくしかなかった。

「はっ!こんなもんで満足すんのかよ?まだ荷物には余裕があんだろ?だったらもっと欲張れよ!ゴブリン共がわんさか出てくんだ、こっちの方にお宝が残ってるかもしれないだろ?」
「だからって、わざわざ自分から危険に踏み込むことないでしょ!?あー、もうっ!!やっぱりこんな奴、信じるんじゃなかったぁ!!」

 アレクシアがいくら文句を言ったところで、アランは止まる様子を見せない。
 しかし重たい荷物を背負い動きが鈍くなってしまった彼女にとって、安全な場所はもはやその背中にしかない。
 そうしてアレクシアは心からの不満を叫びながらも、その背中にくっついて先に進む道を選ばざるを得なくなっていた。
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