最弱能力「毒無効」実は最強だった!

斑目 ごたく

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アランとアレクシア

雪中行軍訓練 1

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 冷たくされるのは、予想出来た。
 自分はこの場に、相応しくないのだから。
 無視されるのも、当然だろう。
 彼らにとって自分は、目障りな存在なのだから。
 爪弾きにされるとしても、それは仕方ない。
 私でもきっとそうする、誰だって自分が一番大事なのだから。
 でも、だったら私はどうすれば良かったのだろう。
 周囲に広がる景色を目にしながら、アレクシア・ハートフィールドは自らの思いを述懐する。
 それはそこに、絶望の景色が広がっているからか。
 見渡す限りの自然の姿は、雪に塗れた山肌だ。
 そこには、助けを呼ぶような人里の気配はない。
 どうしてそれを考える必要があったのかというと、この身体が寒さに凍えなければいけないほどに薄い衣服を纏っている事と、目の前の者達の姿にその理由があった。

「なぁ、知ってるか?この雪中行軍訓練ってのは、毎年何人か行方不明者が出てるんだ。何でそんな訓練が毎年中止されずに行われるか、不思議に思わないか?この学院の生徒は、皆お偉い貴族の子弟様なんだぜ。そんなのが一人でも行方不明になったら、大問題だろう?」

 アレクシアを取り囲むように並んだ男達は、しっかりと防寒着を着込んでいる。
 その服装が過剰に思えるのは、それだけ彼らが手厚く保護される対象であることを示していた。
 つまり自分とは違う、間違いようのない貴族の子弟であるという事を。

「・・・それで、どうして?どうして、こんなことが続いているの?」

 寒さに震える身体を擦り合わせながら、それでもアレクシアは尋ねずにはいられなかった。
 どうして、と。
 その言葉が何を尋ねたかったのかは、彼女自身にも分からない。
 それでも、聞かずにはおられなかったのだ。
 寒さに凍りつく唇は、そこから漏れた湿り気に響いて割れる。
 そこから溢れた血すらも、今は冷たい。

「あん?はっ、それはなぁ・・・お前みたいな不良品を処分するために決まってんだろ!!」

 弱々しく震えるばかりのアレクシアがまさか口を挟んでくるとは思わなかったのか、彼女に向かって得意げに語っていた男は不機嫌そうに表情を歪めている。
 しかしそれも、一瞬の事に過ぎない。
 彼はすぐにその表情を意地悪く歪めると、その手に持った得物を振りかざしていた。
 そこまでくれば誰だって分かる、彼の言う不良品というのが自分であるという事と、この後に待っている運命が。


「へー、そうなんだ。初めて知った」


 両手を頭の上へと掲げ衝撃に備える姿は、結局の所その暴力を受け入れる事を意味している。
 だってその時の私は知らなかったのだから、その後にあんな事が待っているなんて。
 クロスした両手の隙間からは、目の前の男達よりはずっと軽装な、しかししっかりと防寒を計算に入れた服装を身に纏った少年の姿があった。
 その少年の名を、私は知っている。
 いや学院の全ての者が知っていた、その少年アラン・ブレイクの名は。
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