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アランとアレクシア
実力の違い
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「おい、アレクシア!そこ、危ねぇぞ!!」
「っ!わ、分かってるわよ!一々指図しないでよね!!」
遺跡の中を進んでいけば、そこに潜まされた罠の配置にも慣れてくるというもの。
少しでも後ろをついてくるアランを引き離そうと、大股で前へと進むアレクシアが踏もうとしていたその罠を、彼は注意を促すように指摘していた。
「いや、んなこと言われてもよ・・・だったら自分で気を付けちゃくれませんかね?」
「気を付けてたわよ!これだって私は自分で気付いてたの!!それをあんたが後から指摘するもんだから、あんたの手柄みたいになっちゃうんでしょ!?」
アランの言葉に下ろす筈であった足を、それとは別の場所へとそっと下ろしたアレクシアは、もとよりそうするつもりだったのだと主張している。
そんな彼女の主張に対して、アランは肩を竦めては改めてある場所を指し示すばかりであった。
「・・・そこ」
「な、何よ?言いたいことがあるなら、はっきり言いなさいよね!?」
アランが指し示している場所は、言い争う過程でアラクシアが腕をつこうとしていた壁の一部であった。
その短い言葉に何やら不気味なものを感じたアレクシアは、そこへと手を触れる前にそれを引っ込めている。
「いや、そこにも罠があるから気を付けろよ」
「ひゃあ!?」
そしてアランがそこを指し示した理由を明かすと、彼女は慌ててそこから飛び退いていた。
確かにこうして指摘されてそこをよく見てみれば、不自然な出っ張りが見て取れる。
しかしそれは目立つようなものではなく、言われてみなければ気付かないようなものだろう。
そんな罠に気付いたアランへと、アレクシアは関心とも嫉妬とも取れない、複雑な感情の籠った視線を向けていた。
「おやおやおや~?自分で気付いていらっしゃるんじゃなかったんですかねぇ?『ひゃあ』なんて、情けない声上げて・・・それも演技ですかぁ!?」
「う、うるさい!あんたが気付いてたか試したのよ!!良かったわね、テストに合格したわよ!!」
そんな複雑な感情も、その相手があからさまに煽ってくれば単純なものへと変わるだろう。
つまりはより単純な、怒りという感情に。
自らの強がりをアランへと見透かされたアレクシアは、さらに強がりを上乗せすることでそれに対抗することにしたようだった。
「はいはい、そりゃどうも。んじゃまぁ、アレクシア様のテストに合格した私めが先導を務めさせてもらいますかね」
アレクシアが口にした強がりも、受け取り方を変えれば言質にも使える。
彼女の頭を軽く叩きながらその横を通り過ぎたアランは、その前で恭しくお辞儀をしている。
それは自らが、彼女の前を歩くという宣言であった。
「はぁ!?そんなの認める訳ないじゃない!」
「いいからいいから。ま、俺に任せとけって!姫様は配下に危険なことは任せて、後ろを粛々と歩くってね」
そんなアランの言葉に、アレクシアは咄嗟に反対を口にしている。
しかしその語気がどこか弱いのは、それが最善だと彼女自身気付いてしまっているからか。
「別に問題ないだろ?俺が失敗したら、それを踏み台に先を進みゃいいんだから」
「ぐっ・・・わ、分かったわよ!勝手にすれば!!」
「はいはい・・・ったく、可愛げのないお姫様だこって」
アレクシアの前で恭しく頭を下げていたアランは、それを持ち上げると今度は皮肉気な笑みをその口元へと浮かべていた。
そうして彼が口にした自分を踏み台にすればいいという言葉に、アレクシアは反論することが出来ない。
拗ねたように顔を背け勝手にしろと告げるアレクシアに、アランは肩を竦めると鼻から息を深々と吐きながら首を横へと振るばかりであった。
「っ!わ、分かってるわよ!一々指図しないでよね!!」
遺跡の中を進んでいけば、そこに潜まされた罠の配置にも慣れてくるというもの。
少しでも後ろをついてくるアランを引き離そうと、大股で前へと進むアレクシアが踏もうとしていたその罠を、彼は注意を促すように指摘していた。
「いや、んなこと言われてもよ・・・だったら自分で気を付けちゃくれませんかね?」
「気を付けてたわよ!これだって私は自分で気付いてたの!!それをあんたが後から指摘するもんだから、あんたの手柄みたいになっちゃうんでしょ!?」
アランの言葉に下ろす筈であった足を、それとは別の場所へとそっと下ろしたアレクシアは、もとよりそうするつもりだったのだと主張している。
そんな彼女の主張に対して、アランは肩を竦めては改めてある場所を指し示すばかりであった。
「・・・そこ」
「な、何よ?言いたいことがあるなら、はっきり言いなさいよね!?」
アランが指し示している場所は、言い争う過程でアラクシアが腕をつこうとしていた壁の一部であった。
その短い言葉に何やら不気味なものを感じたアレクシアは、そこへと手を触れる前にそれを引っ込めている。
「いや、そこにも罠があるから気を付けろよ」
「ひゃあ!?」
そしてアランがそこを指し示した理由を明かすと、彼女は慌ててそこから飛び退いていた。
確かにこうして指摘されてそこをよく見てみれば、不自然な出っ張りが見て取れる。
しかしそれは目立つようなものではなく、言われてみなければ気付かないようなものだろう。
そんな罠に気付いたアランへと、アレクシアは関心とも嫉妬とも取れない、複雑な感情の籠った視線を向けていた。
「おやおやおや~?自分で気付いていらっしゃるんじゃなかったんですかねぇ?『ひゃあ』なんて、情けない声上げて・・・それも演技ですかぁ!?」
「う、うるさい!あんたが気付いてたか試したのよ!!良かったわね、テストに合格したわよ!!」
そんな複雑な感情も、その相手があからさまに煽ってくれば単純なものへと変わるだろう。
つまりはより単純な、怒りという感情に。
自らの強がりをアランへと見透かされたアレクシアは、さらに強がりを上乗せすることでそれに対抗することにしたようだった。
「はいはい、そりゃどうも。んじゃまぁ、アレクシア様のテストに合格した私めが先導を務めさせてもらいますかね」
アレクシアが口にした強がりも、受け取り方を変えれば言質にも使える。
彼女の頭を軽く叩きながらその横を通り過ぎたアランは、その前で恭しくお辞儀をしている。
それは自らが、彼女の前を歩くという宣言であった。
「はぁ!?そんなの認める訳ないじゃない!」
「いいからいいから。ま、俺に任せとけって!姫様は配下に危険なことは任せて、後ろを粛々と歩くってね」
そんなアランの言葉に、アレクシアは咄嗟に反対を口にしている。
しかしその語気がどこか弱いのは、それが最善だと彼女自身気付いてしまっているからか。
「別に問題ないだろ?俺が失敗したら、それを踏み台に先を進みゃいいんだから」
「ぐっ・・・わ、分かったわよ!勝手にすれば!!」
「はいはい・・・ったく、可愛げのないお姫様だこって」
アレクシアの前で恭しく頭を下げていたアランは、それを持ち上げると今度は皮肉気な笑みをその口元へと浮かべていた。
そうして彼が口にした自分を踏み台にすればいいという言葉に、アレクシアは反論することが出来ない。
拗ねたように顔を背け勝手にしろと告げるアレクシアに、アランは肩を竦めると鼻から息を深々と吐きながら首を横へと振るばかりであった。
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