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衝突
勝負の始まり
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決戦の朝は早く、まだ空も僅かに夜の気配を残している。
そんな空の下、勝負の相手を待っているアレクシアはばっちりと耐毒スーツを着込み、新しい鞄もその背中に背負っていた。
「ふぁ~ぁ・・・おぉ、もういたのかよ。おはようさん」
そんな準備万端といった様子で待ち構えるアレクシアの前に、明らかに寝起きといった様子のアランが、欠伸を漏らしながらトボトボと歩いてくる。
その後頭部と腹の辺りをボリボリと掻きながら歩いてくる様子からは、とてもではないが決戦に挑む気合などは微塵も感じられなかった。
「遅い!!逃げたのかと思ったわよ!!」
「いや、逃げやしねぇけどさ・・・マジで早いんだな。明朝とは聞いてたけどさぁ・・・流石に早すぎねぇ?普段ならまだ寝てるぞ、俺」
準備万端なアレクシアの様子から、彼女はかなり前からそこで待っていたのだろう。
そこに明らかにやる気がない様子のアランが遅れてやってきたことで、彼女は苛立つように声を上げている。
そんな彼女に、アランは素直に感心した様子の声を漏らしていた。
「当然よ!私は村の皆の命を背負ってるのよ!?世界が変わっても、夜に活動する魔物の方が危険なのは変わってない!それを避けるために、朝早くから活動するのは当然でしょう!?」
「いや、凄ぇなお前・・・感心するわ」
そんなアランの言葉に、アラクシアは殊更自分の凄さを強調するが、それに彼が同調してきたことで調子が狂ってしまう。
「ふ、ふん!そうよ、私は凄いんだから!!今日の勝負で、それを改めて見せつけてやるから覚悟しておきなさい!!」
「おー・・・頑張れ頑張れ」
アランの意外な反応に鼻を鳴らしたアレクシアは、彼を挑発するように強気な言葉を吐いている。
それでもアランは気のない返事を返すだけで、一向にやる気を見せることはなかった。
「な、何か調子狂うわね・・・まぁいいわ、とにかく勝負を始めるわよ!!ダンカンさん、お願い!!」
対戦相手の手応えのない反応に、調子の狂うアレクシアは何とも言えない表情で首を捻っている。
それでもそのアランの様子は、自分に有利に働くだろう。
そう判断したアレクシアは勝負の開始を急ぎ、近くで待機していたダンカンへと声を掛ける。
「うむ、任せるでござる。開門ー!開門ー!!」
彼女の声を受けたダンカンは力強く頷くと、その大きな手の平を掲げ開門の合図を送る。
彼の合図に、重々しい音を立てて門がゆっくりと開き始めていた。
「いい?制限時間は日没まで、それまでに集めた物資の質と量で勝負よ!ちゃんとそれが必要なものかどうかは皆に判定してもらうから、適当なものを集めてきても駄目なんだから!」
見上げるような高さとそれ相応の重さを持った門に、その開閉速度は速くはない。
それを待つ間に、アレクシアは最後にもう一度ルールの確認を口にしていた。
「分かってるって、うっさいなぁ・・・」
それに対して面倒くさそうに腕を振るっているアランの姿からは、やはりやる気は窺うことは出来ない。
「・・・これは勝ったわね」
そんなアランの様子に、アレクシアは勝利を確信して一人呟く。
彼女は彼から見えないように、小さくガッツポーズを決めてすらいた。
「さぁ、勝負スタートよ!!」
門が開ききったのと同時にアレクシアは勝負の開始を宣言すると、勢いよく駆け出していく。
「ふぁ~ぁ・・・張り切るねぇ」
そんな彼女を尻目に、アランは一向にその場から動こうとはしなかった。
「アランー!もう勝負は始まってるんだよー!!急げ急げー!!」
「そうですよ、アランさん!急がないと!!」
欠伸で滲んだ涙を拭おうともせずに、そこでのんびりと佇んでいるアランに、ブレンダや彼の取り巻き達が声を掛けてくる。
「へいへい・・・じゃ、ぼちぼち行きますか」
それに適当に手を振って応えたアランは、今回のために用意された鞄を背負うと、トボトボと歩き出している。
その速度はそれでも、とても勝負に赴くとは思えないゆっくりとしたものだった。
そんな空の下、勝負の相手を待っているアレクシアはばっちりと耐毒スーツを着込み、新しい鞄もその背中に背負っていた。
「ふぁ~ぁ・・・おぉ、もういたのかよ。おはようさん」
そんな準備万端といった様子で待ち構えるアレクシアの前に、明らかに寝起きといった様子のアランが、欠伸を漏らしながらトボトボと歩いてくる。
その後頭部と腹の辺りをボリボリと掻きながら歩いてくる様子からは、とてもではないが決戦に挑む気合などは微塵も感じられなかった。
「遅い!!逃げたのかと思ったわよ!!」
「いや、逃げやしねぇけどさ・・・マジで早いんだな。明朝とは聞いてたけどさぁ・・・流石に早すぎねぇ?普段ならまだ寝てるぞ、俺」
準備万端なアレクシアの様子から、彼女はかなり前からそこで待っていたのだろう。
そこに明らかにやる気がない様子のアランが遅れてやってきたことで、彼女は苛立つように声を上げている。
そんな彼女に、アランは素直に感心した様子の声を漏らしていた。
「当然よ!私は村の皆の命を背負ってるのよ!?世界が変わっても、夜に活動する魔物の方が危険なのは変わってない!それを避けるために、朝早くから活動するのは当然でしょう!?」
「いや、凄ぇなお前・・・感心するわ」
そんなアランの言葉に、アラクシアは殊更自分の凄さを強調するが、それに彼が同調してきたことで調子が狂ってしまう。
「ふ、ふん!そうよ、私は凄いんだから!!今日の勝負で、それを改めて見せつけてやるから覚悟しておきなさい!!」
「おー・・・頑張れ頑張れ」
アランの意外な反応に鼻を鳴らしたアレクシアは、彼を挑発するように強気な言葉を吐いている。
それでもアランは気のない返事を返すだけで、一向にやる気を見せることはなかった。
「な、何か調子狂うわね・・・まぁいいわ、とにかく勝負を始めるわよ!!ダンカンさん、お願い!!」
対戦相手の手応えのない反応に、調子の狂うアレクシアは何とも言えない表情で首を捻っている。
それでもそのアランの様子は、自分に有利に働くだろう。
そう判断したアレクシアは勝負の開始を急ぎ、近くで待機していたダンカンへと声を掛ける。
「うむ、任せるでござる。開門ー!開門ー!!」
彼女の声を受けたダンカンは力強く頷くと、その大きな手の平を掲げ開門の合図を送る。
彼の合図に、重々しい音を立てて門がゆっくりと開き始めていた。
「いい?制限時間は日没まで、それまでに集めた物資の質と量で勝負よ!ちゃんとそれが必要なものかどうかは皆に判定してもらうから、適当なものを集めてきても駄目なんだから!」
見上げるような高さとそれ相応の重さを持った門に、その開閉速度は速くはない。
それを待つ間に、アレクシアは最後にもう一度ルールの確認を口にしていた。
「分かってるって、うっさいなぁ・・・」
それに対して面倒くさそうに腕を振るっているアランの姿からは、やはりやる気は窺うことは出来ない。
「・・・これは勝ったわね」
そんなアランの様子に、アレクシアは勝利を確信して一人呟く。
彼女は彼から見えないように、小さくガッツポーズを決めてすらいた。
「さぁ、勝負スタートよ!!」
門が開ききったのと同時にアレクシアは勝負の開始を宣言すると、勢いよく駆け出していく。
「ふぁ~ぁ・・・張り切るねぇ」
そんな彼女を尻目に、アランは一向にその場から動こうとはしなかった。
「アランー!もう勝負は始まってるんだよー!!急げ急げー!!」
「そうですよ、アランさん!急がないと!!」
欠伸で滲んだ涙を拭おうともせずに、そこでのんびりと佇んでいるアランに、ブレンダや彼の取り巻き達が声を掛けてくる。
「へいへい・・・じゃ、ぼちぼち行きますか」
それに適当に手を振って応えたアランは、今回のために用意された鞄を背負うと、トボトボと歩き出している。
その速度はそれでも、とても勝負に赴くとは思えないゆっくりとしたものだった。
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