最弱能力「毒無効」実は最強だった!

斑目 ごたく

文字の大きさ
上 下
8 / 61
変わる世界

常識知らずの男

しおりを挟む
「嘘でしょ!?全然感染してないじゃない!!?」

 狭く、薄暗い室内には簡易的なベッドが設えられている。
 それはここに来るまでに見てきた景色と比べれば、かなり清潔な部類だろう。
 それはここが病人を治療するための施設であることと、無関係ではない筈だ。
 乱雑にものが並べられた机には、何やら爬虫類を燻ったものや、木の実や木の根を乾燥したものが散らばっている。
 そんな部屋の中でベッドに座らせたアランの対面に座り、ベタベタと何やら彼の身体を調べていたブレンダは、突如素っ頓狂な大声を上げていた。

「何で!?あんた、馬鹿みたいに外をほっつき歩いてきたんでしょ!?しかもこんなふざけた装備で!なのに何で健康そのものなの!?」

 アランの上半身をひん剥いてはその身体をペタペタと触っていたブレンダは、その健康そのものの彼の様子に信じられないと声を上げている。
 彼女はまるでその状態のアランを許せないように睨み付けると、彼からひん剥いた装備をバンバンと叩いて示していた。
 そこからは埃が上がるばかりで、何も特別な能力を持つものが見つかることはない。

「何でって・・・別に普通に暮らしてただけだぞ?つーか、検査はもう済んだんだろ?だったら服、着ていいか?寒みーわ、ここ」

 何やら不満そうに唸っているブレンダを前に、アランは意味が分からないと顔を傾けるだけ。
 彼は彼女に剥かれてしまった服に身体を震わせると、それをもう着てもいいかと彼女に尋ねていた。

「普通にって・・・こんな状況で外で一人で!?それで何の異変もないって、絶対おかしい・・・あっ!もしかしてあんたの所にも、メイヴィス様の像があったりするの?」

 バンバンと叩けば、いつまでも埃か何かが湧いて出てくるアランの服に、ブレンダは心底嫌そうな表情でそれを彼へと摘まんで渡してやっている。
 それを受け取ってはいそいそと着込んでいるアランに、ブレンダはどうしても信じられないと、彼が健康でいる理由を勘ぐっていた。

「メイヴィス様ぁ?何だよ、それ?知らねぇな・・・あっ、でもそうだな」
「何々、やっぱり何かあったの!?それとも体調が悪くなった!?今頃になって毒が回ってきたの!?」

 ブレンダが口にしたメイヴィス様の像というのは、この村の中心にあった女神像の事だろう。
 しかし神様の名前ならばある程度知っているアランにも、その名前は聞き覚えがなかった。

「いやぁ、実は最近下痢気味でな・・・これももしかして、何かの症状だったりするのか?」
「知るか!!あんたのうんこ事情なんてどうでもいいのよ!!どうせ変なもんでも食べたんでしょ!!」

 アランの何かを思い出したかのような声に、ブレンダはワクワクとした表情で前のめりに食いついてくる。
 彼女はそれに、彼にもこの村と似たような特別な事情があるか、ようやく何らかの症状が出てきたのかと期待したようだったが、その期待はあっさりと裏切られてしまう。

「やっぱそう?そんな気がしたんだよなぁ・・・何が当たったんだろうなぁ?昨日食ったあれか?確かにちょっと怪しかったもんなぁ。いやもしかすると、その前食った・・・」

 どうでもいい話を聞かされ怒りのままに吐き捨てたブレンダの言葉を、アランは真に受けてはお腹の辺りを擦っている。
 そんな彼の様子に、ブレンダは疲れ果てた様子で再び椅子へと座り込んでいた。

「ねぇ、あんた本当にどうして平気なの?何か隠してるなら、教えてよぉ・・・」

 座り込んだ椅子に、足を畳んで縮まるブレンダの声は弱々しい。
 それは自分がこれまでに学んだ知識が通用しない目の前の存在に、自信を失ってしまったからだろう。

「いや、別に?てーかさ、何をそんなに気にしてるんだ?さっきから毒だ何だって言ってるけど・・・一体、何の話?」

 落ち込んだ様子で身体を小さく丸めているブレンダに、アランは不思議そうに首を傾げるばかり。
 彼はそれよりも、彼女たちが何をそんなに気にしているのか分からないと、素朴な疑問を零していた。

「・・・・・・はぁ!!!?」

 しかしその素朴な疑問は、ブレンダに目ん玉が飛び出るほどの衝撃を与える。
 僅かな沈黙を挟んだ後に彼女がようやく絞り出した驚きの声は、これまでのどれよりも大きいものであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

処理中です...