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変わる世界
常識知らずの男
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「嘘でしょ!?全然感染してないじゃない!!?」
狭く、薄暗い室内には簡易的なベッドが設えられている。
それはここに来るまでに見てきた景色と比べれば、かなり清潔な部類だろう。
それはここが病人を治療するための施設であることと、無関係ではない筈だ。
乱雑にものが並べられた机には、何やら爬虫類を燻ったものや、木の実や木の根を乾燥したものが散らばっている。
そんな部屋の中でベッドに座らせたアランの対面に座り、ベタベタと何やら彼の身体を調べていたブレンダは、突如素っ頓狂な大声を上げていた。
「何で!?あんた、馬鹿みたいに外をほっつき歩いてきたんでしょ!?しかもこんなふざけた装備で!なのに何で健康そのものなの!?」
アランの上半身をひん剥いてはその身体をペタペタと触っていたブレンダは、その健康そのものの彼の様子に信じられないと声を上げている。
彼女はまるでその状態のアランを許せないように睨み付けると、彼からひん剥いた装備をバンバンと叩いて示していた。
そこからは埃が上がるばかりで、何も特別な能力を持つものが見つかることはない。
「何でって・・・別に普通に暮らしてただけだぞ?つーか、検査はもう済んだんだろ?だったら服、着ていいか?寒みーわ、ここ」
何やら不満そうに唸っているブレンダを前に、アランは意味が分からないと顔を傾けるだけ。
彼は彼女に剥かれてしまった服に身体を震わせると、それをもう着てもいいかと彼女に尋ねていた。
「普通にって・・・こんな状況で外で一人で!?それで何の異変もないって、絶対おかしい・・・あっ!もしかしてあんたの所にも、メイヴィス様の像があったりするの?」
バンバンと叩けば、いつまでも埃か何かが湧いて出てくるアランの服に、ブレンダは心底嫌そうな表情でそれを彼へと摘まんで渡してやっている。
それを受け取ってはいそいそと着込んでいるアランに、ブレンダはどうしても信じられないと、彼が健康でいる理由を勘ぐっていた。
「メイヴィス様ぁ?何だよ、それ?知らねぇな・・・あっ、でもそうだな」
「何々、やっぱり何かあったの!?それとも体調が悪くなった!?今頃になって毒が回ってきたの!?」
ブレンダが口にしたメイヴィス様の像というのは、この村の中心にあった女神像の事だろう。
しかし神様の名前ならばある程度知っているアランにも、その名前は聞き覚えがなかった。
「いやぁ、実は最近下痢気味でな・・・これももしかして、何かの症状だったりするのか?」
「知るか!!あんたのうんこ事情なんてどうでもいいのよ!!どうせ変なもんでも食べたんでしょ!!」
アランの何かを思い出したかのような声に、ブレンダはワクワクとした表情で前のめりに食いついてくる。
彼女はそれに、彼にもこの村と似たような特別な事情があるか、ようやく何らかの症状が出てきたのかと期待したようだったが、その期待はあっさりと裏切られてしまう。
「やっぱそう?そんな気がしたんだよなぁ・・・何が当たったんだろうなぁ?昨日食ったあれか?確かにちょっと怪しかったもんなぁ。いやもしかすると、その前食った・・・」
どうでもいい話を聞かされ怒りのままに吐き捨てたブレンダの言葉を、アランは真に受けてはお腹の辺りを擦っている。
そんな彼の様子に、ブレンダは疲れ果てた様子で再び椅子へと座り込んでいた。
「ねぇ、あんた本当にどうして平気なの?何か隠してるなら、教えてよぉ・・・」
座り込んだ椅子に、足を畳んで縮まるブレンダの声は弱々しい。
それは自分がこれまでに学んだ知識が通用しない目の前の存在に、自信を失ってしまったからだろう。
「いや、別に?てーかさ、何をそんなに気にしてるんだ?さっきから毒だ何だって言ってるけど・・・一体、何の話?」
落ち込んだ様子で身体を小さく丸めているブレンダに、アランは不思議そうに首を傾げるばかり。
彼はそれよりも、彼女たちが何をそんなに気にしているのか分からないと、素朴な疑問を零していた。
「・・・・・・はぁ!!!?」
しかしその素朴な疑問は、ブレンダに目ん玉が飛び出るほどの衝撃を与える。
僅かな沈黙を挟んだ後に彼女がようやく絞り出した驚きの声は、これまでのどれよりも大きいものであった。
狭く、薄暗い室内には簡易的なベッドが設えられている。
それはここに来るまでに見てきた景色と比べれば、かなり清潔な部類だろう。
それはここが病人を治療するための施設であることと、無関係ではない筈だ。
乱雑にものが並べられた机には、何やら爬虫類を燻ったものや、木の実や木の根を乾燥したものが散らばっている。
そんな部屋の中でベッドに座らせたアランの対面に座り、ベタベタと何やら彼の身体を調べていたブレンダは、突如素っ頓狂な大声を上げていた。
「何で!?あんた、馬鹿みたいに外をほっつき歩いてきたんでしょ!?しかもこんなふざけた装備で!なのに何で健康そのものなの!?」
アランの上半身をひん剥いてはその身体をペタペタと触っていたブレンダは、その健康そのものの彼の様子に信じられないと声を上げている。
彼女はまるでその状態のアランを許せないように睨み付けると、彼からひん剥いた装備をバンバンと叩いて示していた。
そこからは埃が上がるばかりで、何も特別な能力を持つものが見つかることはない。
「何でって・・・別に普通に暮らしてただけだぞ?つーか、検査はもう済んだんだろ?だったら服、着ていいか?寒みーわ、ここ」
何やら不満そうに唸っているブレンダを前に、アランは意味が分からないと顔を傾けるだけ。
彼は彼女に剥かれてしまった服に身体を震わせると、それをもう着てもいいかと彼女に尋ねていた。
「普通にって・・・こんな状況で外で一人で!?それで何の異変もないって、絶対おかしい・・・あっ!もしかしてあんたの所にも、メイヴィス様の像があったりするの?」
バンバンと叩けば、いつまでも埃か何かが湧いて出てくるアランの服に、ブレンダは心底嫌そうな表情でそれを彼へと摘まんで渡してやっている。
それを受け取ってはいそいそと着込んでいるアランに、ブレンダはどうしても信じられないと、彼が健康でいる理由を勘ぐっていた。
「メイヴィス様ぁ?何だよ、それ?知らねぇな・・・あっ、でもそうだな」
「何々、やっぱり何かあったの!?それとも体調が悪くなった!?今頃になって毒が回ってきたの!?」
ブレンダが口にしたメイヴィス様の像というのは、この村の中心にあった女神像の事だろう。
しかし神様の名前ならばある程度知っているアランにも、その名前は聞き覚えがなかった。
「いやぁ、実は最近下痢気味でな・・・これももしかして、何かの症状だったりするのか?」
「知るか!!あんたのうんこ事情なんてどうでもいいのよ!!どうせ変なもんでも食べたんでしょ!!」
アランの何かを思い出したかのような声に、ブレンダはワクワクとした表情で前のめりに食いついてくる。
彼女はそれに、彼にもこの村と似たような特別な事情があるか、ようやく何らかの症状が出てきたのかと期待したようだったが、その期待はあっさりと裏切られてしまう。
「やっぱそう?そんな気がしたんだよなぁ・・・何が当たったんだろうなぁ?昨日食ったあれか?確かにちょっと怪しかったもんなぁ。いやもしかすると、その前食った・・・」
どうでもいい話を聞かされ怒りのままに吐き捨てたブレンダの言葉を、アランは真に受けてはお腹の辺りを擦っている。
そんな彼の様子に、ブレンダは疲れ果てた様子で再び椅子へと座り込んでいた。
「ねぇ、あんた本当にどうして平気なの?何か隠してるなら、教えてよぉ・・・」
座り込んだ椅子に、足を畳んで縮まるブレンダの声は弱々しい。
それは自分がこれまでに学んだ知識が通用しない目の前の存在に、自信を失ってしまったからだろう。
「いや、別に?てーかさ、何をそんなに気にしてるんだ?さっきから毒だ何だって言ってるけど・・・一体、何の話?」
落ち込んだ様子で身体を小さく丸めているブレンダに、アランは不思議そうに首を傾げるばかり。
彼はそれよりも、彼女たちが何をそんなに気にしているのか分からないと、素朴な疑問を零していた。
「・・・・・・はぁ!!!?」
しかしその素朴な疑問は、ブレンダに目ん玉が飛び出るほどの衝撃を与える。
僅かな沈黙を挟んだ後に彼女がようやく絞り出した驚きの声は、これまでのどれよりも大きいものであった。
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