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変わる世界
アラン、世界を知る
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「あー、頭いてー・・・結局、また寝すぎちまったなぁ・・・ふぁ~ぁ」
今も盛大な欠伸を漏らし、そのぼさぼさの頭を掻いてはフケを飛ばしているアランは、先ほどまでよりは整った格好をしていた。
それは流石の彼でも、何の装備もないまま外に出るのは危険だと分かっているからだろう。
人里離れた森の奥で一人暮らしているアランが街へと買い出しに向かえば、当然森を一人で歩くことになる。
それを無防備なままで行うほど、彼は愚かではなかった。
「ん~?ここいらって、こんなんだったか?なーんか前に通った時と雰囲気が違わねぇか・・・?」
欠伸で漏れた涙を拭うと、濁った視界が澄み渡る。
それで目にした景色は、どこか以前と違った姿をしていた。
「うーん、つってもなぁ・・・前に遠出したのなんて随分と前の話だからなぁ。ちっと分かんねぇな」
明らかに以前よりも葉が少なくなり、残ったそれもどこか異様な色へと変容している木々に、そこら中に不自然なほどキノコが生い茂っている。
その景色は明らかに異常なものであったが、比べるべき以前の景色がはるか遠くの記憶にしかないアランは、それを正しく認識するのが難しいようだった。
「こりゃ、なんていうキノコだ?見たことねぇな・・・」
アランは近くの木の根元へと屈みこむと、そこに寄生するかのように生えているキノコを手に取っていた。
それは白い綿毛のようなもので先端を覆ったキノコであり、その見たことのない異様な姿にアランは思わず首を捻る。
「・・・普通はこんなことはしねぇけど、俺はあれだからな。あーん、っと」
見たこともない、異様な姿をしたキノコ。
それを目にしたのならば、まず手を触れないのが普通であろう、どんな毒を持っているのかも分からないのだから。
しかし彼の、アラン・ブレイクのギフトは「毒無効」である。
そんな彼が、毒キノコなど恐れるだろうか。
当然、否である。
「はむはむ・・・うーん、味は普通かな?不味くはねぇが・・・ま、腹が減ってどうしてもってんなら食うかってくらいだな」
得体のしれないキノコを躊躇うことなく口にしたアランは、それを咀嚼しながら味についての品評を口にしている。
そうして一頻りそれを味わった彼は、もはや用済みだとそのキノコの柄の部分を吐き出していた。
「多分、これも毒あんだろーな。ま、こんぐらいは役立ってくれねぇとな・・・どうせ、何の役にも立たねぇ能力なんだから」
柔らかい傘の部分だけを堪能したアランは、自らが吐き出した残りの部分を汚いものを隠すかのように蹴飛ばしている。
周りを見渡せば、彼が口にしたのと同じキノコがそこら中に生えている。
それは今も頻繁に胞子を吐き出しており、おそらく毒をもっていると感じさせる、毒々しい見た目をしていた。
そんなキノコすらも、自分ならば気軽に食べることが出来るのだと、アランは自嘲気味に唇を吊り上がらせる。
自分の能力は、そんなことにしか役に立たないゴミ能力だと。
「はぁー!止めだ止めだ!!んなこたぁ、散々思い知らされたんだ!今更、落ち込んだってしょうがねぇ!それより急がねぇとな、街まで結構遠いんだ。今からだと、下手すりゃ夜までに辿り着きもしねぇ。流石に野宿は嫌だしな・・・」
今まで、周りから散々そう詰られ、こんな辺境の森の中で暮らすことになった要因ともなったそれへと思いを馳せたアランは、それをかき消すように手を振ると無理やり気持ちを切り替えている。
学院の首席卒業生として持ち上げられていたところから、一気に手の平を返されたことによって軽い人間不信に陥っていたアランは、だからこそ人里離れた森の奥を住処に選んでいた。
そこから最寄りの街までは遠く、こんなところで無駄に時間を食っていられる距離ではない。
気持ちを切り替えたアランは、足を急がせて近くの街道へと出ようとしていた。
「・・・ん?何だこれ?人の声か?」
街道へと近づいたアランは、そこで何かの物音を耳にする。
それは複数の人間が、何かと争っているかのような声であった。
「こんな人里遠くで?行商人か、冒険者の類か?」
物音が聞こえてくるのは、どうやら街道の向こう側のようだ。
そちら側にもアランが今まで歩いてきたような鬱蒼とした森が広がっており、およそ人が立ち入りそうな場所ではない。
そんな場所に立ち入るのは、そういった場所でしか手に入らない素材を求める行商人か、冒険者の類しかいないだろう。
「ま、どちらにしろ俺には関係ないね。さ、急ご急ご!」
かつての経験からか、自然とそちらへと注意を割き耳を澄ませていたアランは、肩を竦めるとそんな事どうでもいいと街道へと足を向かわせる。
「・・・・・・あー、嫌だ嫌だ!こんな事したって、一リムの得にもなりゃしないってのに!!」
一歩、二歩と何か争っているような物音から背を向け、街道を進もうとしていたアランはしかし、その足を急に止めてしまう。
そうして彼は、何か誰かに言い訳をするような言葉をわざとらしい大きさで口にしていた。
「ちっ!しゃーねぇよな、気付いちまったもんは!!放っておいたら、寝覚めが悪いったらねぇ!!」
止めた足は、ようやく前へと進む。
街道から逸れ、彼がやってきたのとは逆の森の方へと。
「どうせなら、俺が到着する前にやられといてくれよ!!そうすりゃ、どうしようもなかったって諦めがつくからな!!」
出来れば間に合わないでくれと、アランは叫びながら足を急がせる。
その足は彼の言葉と裏腹に、見る見るうちに速度を上げているようだった。
今も盛大な欠伸を漏らし、そのぼさぼさの頭を掻いてはフケを飛ばしているアランは、先ほどまでよりは整った格好をしていた。
それは流石の彼でも、何の装備もないまま外に出るのは危険だと分かっているからだろう。
人里離れた森の奥で一人暮らしているアランが街へと買い出しに向かえば、当然森を一人で歩くことになる。
それを無防備なままで行うほど、彼は愚かではなかった。
「ん~?ここいらって、こんなんだったか?なーんか前に通った時と雰囲気が違わねぇか・・・?」
欠伸で漏れた涙を拭うと、濁った視界が澄み渡る。
それで目にした景色は、どこか以前と違った姿をしていた。
「うーん、つってもなぁ・・・前に遠出したのなんて随分と前の話だからなぁ。ちっと分かんねぇな」
明らかに以前よりも葉が少なくなり、残ったそれもどこか異様な色へと変容している木々に、そこら中に不自然なほどキノコが生い茂っている。
その景色は明らかに異常なものであったが、比べるべき以前の景色がはるか遠くの記憶にしかないアランは、それを正しく認識するのが難しいようだった。
「こりゃ、なんていうキノコだ?見たことねぇな・・・」
アランは近くの木の根元へと屈みこむと、そこに寄生するかのように生えているキノコを手に取っていた。
それは白い綿毛のようなもので先端を覆ったキノコであり、その見たことのない異様な姿にアランは思わず首を捻る。
「・・・普通はこんなことはしねぇけど、俺はあれだからな。あーん、っと」
見たこともない、異様な姿をしたキノコ。
それを目にしたのならば、まず手を触れないのが普通であろう、どんな毒を持っているのかも分からないのだから。
しかし彼の、アラン・ブレイクのギフトは「毒無効」である。
そんな彼が、毒キノコなど恐れるだろうか。
当然、否である。
「はむはむ・・・うーん、味は普通かな?不味くはねぇが・・・ま、腹が減ってどうしてもってんなら食うかってくらいだな」
得体のしれないキノコを躊躇うことなく口にしたアランは、それを咀嚼しながら味についての品評を口にしている。
そうして一頻りそれを味わった彼は、もはや用済みだとそのキノコの柄の部分を吐き出していた。
「多分、これも毒あんだろーな。ま、こんぐらいは役立ってくれねぇとな・・・どうせ、何の役にも立たねぇ能力なんだから」
柔らかい傘の部分だけを堪能したアランは、自らが吐き出した残りの部分を汚いものを隠すかのように蹴飛ばしている。
周りを見渡せば、彼が口にしたのと同じキノコがそこら中に生えている。
それは今も頻繁に胞子を吐き出しており、おそらく毒をもっていると感じさせる、毒々しい見た目をしていた。
そんなキノコすらも、自分ならば気軽に食べることが出来るのだと、アランは自嘲気味に唇を吊り上がらせる。
自分の能力は、そんなことにしか役に立たないゴミ能力だと。
「はぁー!止めだ止めだ!!んなこたぁ、散々思い知らされたんだ!今更、落ち込んだってしょうがねぇ!それより急がねぇとな、街まで結構遠いんだ。今からだと、下手すりゃ夜までに辿り着きもしねぇ。流石に野宿は嫌だしな・・・」
今まで、周りから散々そう詰られ、こんな辺境の森の中で暮らすことになった要因ともなったそれへと思いを馳せたアランは、それをかき消すように手を振ると無理やり気持ちを切り替えている。
学院の首席卒業生として持ち上げられていたところから、一気に手の平を返されたことによって軽い人間不信に陥っていたアランは、だからこそ人里離れた森の奥を住処に選んでいた。
そこから最寄りの街までは遠く、こんなところで無駄に時間を食っていられる距離ではない。
気持ちを切り替えたアランは、足を急がせて近くの街道へと出ようとしていた。
「・・・ん?何だこれ?人の声か?」
街道へと近づいたアランは、そこで何かの物音を耳にする。
それは複数の人間が、何かと争っているかのような声であった。
「こんな人里遠くで?行商人か、冒険者の類か?」
物音が聞こえてくるのは、どうやら街道の向こう側のようだ。
そちら側にもアランが今まで歩いてきたような鬱蒼とした森が広がっており、およそ人が立ち入りそうな場所ではない。
そんな場所に立ち入るのは、そういった場所でしか手に入らない素材を求める行商人か、冒険者の類しかいないだろう。
「ま、どちらにしろ俺には関係ないね。さ、急ご急ご!」
かつての経験からか、自然とそちらへと注意を割き耳を澄ませていたアランは、肩を竦めるとそんな事どうでもいいと街道へと足を向かわせる。
「・・・・・・あー、嫌だ嫌だ!こんな事したって、一リムの得にもなりゃしないってのに!!」
一歩、二歩と何か争っているような物音から背を向け、街道を進もうとしていたアランはしかし、その足を急に止めてしまう。
そうして彼は、何か誰かに言い訳をするような言葉をわざとらしい大きさで口にしていた。
「ちっ!しゃーねぇよな、気付いちまったもんは!!放っておいたら、寝覚めが悪いったらねぇ!!」
止めた足は、ようやく前へと進む。
街道から逸れ、彼がやってきたのとは逆の森の方へと。
「どうせなら、俺が到着する前にやられといてくれよ!!そうすりゃ、どうしようもなかったって諦めがつくからな!!」
出来れば間に合わないでくれと、アランは叫びながら足を急がせる。
その足は彼の言葉と裏腹に、見る見るうちに速度を上げているようだった。
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