終わる世界のブレイブス チート能力で楽して暮らそうと思ったら、人類が滅びかけてるんだが?

斑目 ごたく

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決戦、エイルアン城

決着 2

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『おらおら!お前も潰しちまうぞぉ!!』
「・・・ぐぅ。ま、負けない」

 アンナごとレオンを弾き飛ばし、クロードを奪還される恐れのなくなったオーデンは、自らの足元に盾を差し込み、クロードに掛かる圧力を減じているイダを踏み潰そうと体重を掛け始める。
 その重さに潰され、くぐもった声を漏らしたイダはそれでも、クロードの重みを掛けないようにより深くへと盾を差し込んでいた。

「イダ!くっ、何か、何か出来ないか!?床を崩すか?いや、その程度じゃ・・・」

 イダがオーデンから掛かる圧力を軽減してくれているためか、段々と頭がはっきりとしてきたクロードは、必死に圧力に抗い苦しそうにしているイダの姿に、何か出来ないかと考えを巡らせ始める。
 彼は真っ先に床を崩すことを考えるが、明らかに死に掛けてすらぴんぴん動いている彼の丈夫さを考えれば、その程度では大したダメージになるとも思えない。
 その時、必死に他の手段を探す彼の目に、あるものが映っていた。

「あれは・・・イダ、離れろ!!」
「・・・ん、分かった!」

 目にしたものに何かを思いついたクロードは、その手に光を纏わせると、力を発動させる前にイダへと声を掛けていた。
 その声に僅かに逡巡した様子を見せるイダだったが、彼の態度に何かあると感じたのか素早く盾を引き抜くと、その場から退避していく。

『なんだ?まぁいい、まずはお前から踏み潰してくれるわ!!』
「ぐぎぃっ!?がぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 踏み潰そうとしていたイダがあっさりと退避した事に、拍子抜けしたような表情を作ったオーデンは、その行動に対して首を捻っては疑問を漏らす。
 しかしそれによって障害がなくなったのは確かであり、気を取り直した彼はクロードを踏み潰そうと力を込める。
 圧倒的な力と体重を持つオーデンがその気になれば、一瞬で踏み潰されてしまいそうなクロードも、その癒しの力によって絶叫を上げながらも何とか耐えて見せていた。

『なに?何故、潰されない?もっと力を・・・なんだっ!?』

 いくら力を込めても、何故か中々潰れようとしないクロードに疑問を感じたオーデンは、もっと体重を掛けようと片足を浮かせる。
 しかしその時、身体を押し潰されながらも能力を発動させたクロードによって、彼の足元がせり上がり始めていた。
 それは急激に伸びてゆき、部屋の中央へと進んでいく。
 彼らの後方では、その材料にされたのだろう玉座の後ろの壁が次々に厚みをなくしていき、ついには崩れ落ちてしまっていた。

「がぁぁぁぁぁっ!!レオォォォォォン!!!」
「っ!そういう事か!!任せろシラク!!」

 部屋の中央付近にまで伸びた石の柱に、クロードは痛みに悲鳴を上げながらレオンへと合図を送る。
 彼の声に何かに気がついたレオンは、その石の柱の根元へと急いで駆けていった。

『なにが狙いか知らんが・・・無駄な足掻きよ。お前はここで死ね』
「ぐっ、レオ・・・」

 最後に何か呼びかけようとしていたクロードは、その全体重を乗せてきたオーデンによってあっさりと踏み潰されてしまう。
 クロードを踏み潰したオーデンは、彼によって作られた石の柱の結構な高さに、どうやって降りようかと迷っていた。
 そんな彼の顔へと飛来するものがあった、敵の中で一番厄介だと考えていたクロードを潰した事で油断した彼は、それをもろに食らってしまう。

『ちっ!小ざかしい真似を・・・』
「嘘っ!?どんな目してんのよ!!?」

 飛来した矢は石で作られたものだった、それは確かにオーデンの目を射抜いていたが、それを貫くことはなく弾かれて落ちてしまっていた。
 その事実に、それを放ったエミリアは信じられないと驚きの声を上げるが、オーデンは煩わしそうに顔を拭う仕草をする。
 それは傷の具合を確認する動きだろう、エミリアの矢は彼の眼球を貫きはしなかったが、その衝撃は彼の目に一時的に視力を失わせていた。

「様子がおかしい・・・?ダメージはあるって事ね!!」
『あぁ?面倒くせぇなぁ・・・無理してでも、降りちまうか?』

 オーデンの様子になんらかの異常が起きていることを察したエミリアは、立て続けに矢を放つ。
 手を翳してそれを受ける事で大してダメージを受けなくなったオーデンも、煩わしい攻撃に多少無理をしてもここから飛び降りる事を検討し始める。
 その石の柱の縁から下を覗いてみれば、確かに結構な高さだが彼の丈夫な身体を思えば、そこまでのダメージにはならないだろう。
 オーデンが飛び降りる事に考えを傾かせた頃、後ろから近づいてくる足音がする。

「にゃー!!ティオを忘れちゃ、困るにゃー!!!」

 石の柱は玉座の近くから部屋の中央へと伸びるために、それなりの角度がついている。
 とはいえかなり急勾配であるその角度を、まるで気にする様子もなく駆け上ってきたティオフィラは、そのままオーデンの頭へと飛び掛っていた。

『ちっ、このゴミ蝿がっ!!』
「にゃぁ!?」

 大声を上げながら飛び込んできたティオフィラに、オーデンは振り返るとその手に握った斧を振り払う。
 もうすでにすぐ近くにまで飛び込んできていたティオフィラは、その斧の間合いではない。
 しかし先端についている刃は躱せても、その柄までは避けることは出来ずに、彼女はその足を打ち払われてしまう。

「ぐぅ・・・でも、やったにゃ。レオにぃ、今にゃ!!」

 斧の柄によって足を打ち払われたティオフィラは、しかしその勢いまでは失わずに、オーデンの顔へと取り付いていた。
 彼女はそれにしっかりとしがみつくと、後ろを振り返ってレオンへと合図を送る。
 オーデンの頭へとしがみついた彼女の四肢も、その一つだけはだらりと垂れ下がっていた。
 それは先ほどの衝撃で折れてしまっていたのだろう、しかし彼女は懸命に力を込めると、そこから決して放れようとはしなかった。
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