終わる世界のブレイブス チート能力で楽して暮らそうと思ったら、人類が滅びかけてるんだが?

斑目 ごたく

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決戦、エイルアン城

エイルアン城の死闘 2

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『おいおい、俺達を無視してくれるなよ?嬢ちゃん!頼んだぜ!!』
「にゃー!まっかせるにゃー!!」

 近づいてきたクロードを狙って、目一杯腕を伸ばしているオーデンは隙だらけだ。
 彼の周辺で武器を構えているアクスは、同じく近くにいたティオフィラへと合図の声を上げる。
 彼が喋っている言葉の意味は分からずとも、その内容は感じ取れる、ティオフィラは彼の指示を受けてオーデンの懐へと潜り込んでいた。

『そう何度も、同じ手を食うと思うか?おらぁ!!』

 ティオフィラは、その拳に紫色の光を纏わせている。
 これまでも何度も彼女に弱体魔法を掛けられて、その間にちくちくと削られていたオーデンは、今度こそはその手は食わないと、懐へと入り込んでくるティオフィラに膝を飛ばしていた。

『やら、せない!!』
『ぐっ!?なんだっ!?』

 ティオフィラへと迫っていたオーデンの巨大な膝は、その途中でつっかえたように止まっていた。
 そのつま先には、デニスの放った槍が突き刺さっている。
 弱体を掛ける前のオーデンの肌の分厚さは、それにも大したダメージは受けないが、縫い止められた足がその場を動けないのは間違いない。
 自らの目の前まで迫っていたオーデンの膝に、懐まで潜り込む必要のなくなったティオフィラは、そちらへと拳を向ける。

「ウィークネス・アーマー!!おっちゃん!エミリア!後は頼んだにゃ!!」

 硬そうなオーデンの膝を避けたティオフィラは、彼の脛からふくらはぎに掛けての肉へと、その拳を叩き込む。
 思いっきり叩きつけた拳も、彼の硬い皮膚を思えばこちらが痛いばかりだ。
 それでも目的だった弱体魔法を掛けることに成功したティオフィラは、近くの仲間に対して追撃を呼びかける。

『おうともよ!』
「言われなくても!こん、のぉぉぉ!!!」

 ティオフィラがオーデンに弱体魔法を叩き込んだのを目にしたエミリアとアクスは、ほとんど同時に彼へと駆け出していた。
 肩に担いでいた斧を大きく振りかぶり、思いっきり振り下ろしているエミリアと違い、アクスは素早くその二本の鉈を振り払うと、オーデンの足を切りつける。

『ぐぅ!?やらせるかよぉぉぉ!!』
「くっ、このっ!!」

 切りつけられた痛みに短く悲鳴を上げたオーデンも、なんとかエミリアの一撃は自らの斧で受け止めていた。
 その一撃はすでに浅く彼の腹へと突き刺さっていたが、込められていた威力を思えばそれは軽い被害に済んだといえるだろう。
 軽く刺さった一撃を途中で受け止められしまったエミリアは、その攻撃を諦めきれずに両手に力を込めていた。
 その間にもオーデンの身体からは紫色の光が晴れていき、それはやがて消えていく。

「駄目にゃ、エミリア!もう諦めるにゃ!!」
「ちょっと、ティオ!?」

 自らが掛けた魔法だからだろうか、その効果が切れるのをいち早く察したティオフィラは、諦めきれずに攻撃を継続しているエミリアに駆け寄ると、その身体を無理やり抱えて退避していく。
 エミリアはその行いに文句を零していたが、彼女の斧はすでにオーデンに押し返されようとしていて、弱体のなくなった皮膚にそれ以上の被害を与えるのは不可能だと、彼女も薄々感付いていたようだった。  

『逃がすと思うな!!』

 受け止めていたエミリアの斧がなくなったことで手の空いたオーデンは、慌てて彼から距離を取っているティオフィラ達に追撃を放つ。
 自らの腹へと突き刺さっていた攻撃を弾き返そうと、両腕を縮こまらせていた彼は、遠ざかる二人に思う存分に腕を伸ばして斧を振り払っていた。

『この、ぐらいはっ!!』

 身体ごと回転させては短槍の石突でオーデンの斧を下から突き上げたデニスは、その軌道を逸らして彼の攻撃を無駄なものへと変えてしまう。
 オーデンのすぐ傍にいながら攻撃に加われなかったデニスは、その悔しさを力に代えて槍を振るっていた。
 その行いは無駄ではない、彼のおかげでティオフィラ達は安全圏へと抜け出しており、さらに彼が作った隙を狙う者もいるのだから。

『はっはぁ!!やるじゃないか、坊主!こいつは、どうだぁ!!』

 逃げ出したティオフィラ達の背中を狙ったオーデンの一撃は、逸らした狙いにも振り切ってしまっている。
 その隙を狙って、アクスはその両手の鉈を振るっていた。
 しかしそれは弱体の切れたオーデンの肌には軽く傷を作っただけで、大したダメージにもならない。

『あぁ?そんなもん、なんともねぇ・・・ぐぅ?なんだ、これは・・・』
『へっ・・・流石のオーデン様も、毒には弱いようだな』

 アクスの軽く薙いだ傷などなんともないと、嘲笑をぶつけようとしたオーデンは、その途中に違和感のある身体に気づいていた。
 その様子をほくそ笑んだアクスの手に握られている鉈からは、なにやら粘り気のある液体が滴っている。
 彼の表情からも、その液体がなんらかの異常をオーデンに齎したことは間違いないだろう。

『それが、どうしたぁぁぁ!!!』
『ちっ!?まじかよっ、どんな猛獣だってこれなら・・・くっ!?』

 アクスが使った毒によって痺れる身体を、雄叫びを上げる事で無理やり動かしたオーデンは、どうにか片手だけを振るって斧を薙ぎ払う。
 その威力は彼の全力から比べればあまりに弱弱しいものだったが、毒の効果に自信を覗かせて、余裕ぶっていたアクスを弾き飛ばすのには十分だった。

『これでも駄目なのかよっ!?一体どうすりゃ・・・』

 オーデンの攻撃を、クロスさせた鉈で何とか受け止めたアクスは、思ったほどの効果を見せなかった切り札に絶望の呟きを漏らす。
 細かなダメージは与えられても、一向に致命傷に至らない現状に、彼は次第に諦めの色を強くしていた。
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