終わる世界のブレイブス チート能力で楽して暮らそうと思ったら、人類が滅びかけてるんだが?

斑目 ごたく

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決戦、エイルアン城

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「っ!うわぁぁぁっ!!?・・・あれ?どうなってんだ、これ?」

 二人によって運ばれているクロードは、道中に目を覚ますとその浮遊感に落下の続きを幻視する。
 しかしそれもすぐに勘違いだと気がつくと、今度は自分がどういう状況にあるのかという疑問が湧いてくる。
 微妙な高さでゆっさゆっさと揺すられている身体は、周りを見れば玉座の方向へと進んでいた。

「クロード様!お目覚めになられましたか!!」
「・・・心配した」

 悲鳴を上げたクロードに彼の目覚めを知った二人は、口々に安堵の声を上げていた。
 彼女達は一旦立ち止まり、目覚めたクロードを下ろそうと身を屈める、そこは部屋の入り口と玉座の周辺で戦っている集団の間ぐらいの位置だった。

「おぉ!クラリッサ、イダ!二人とも無事だったんだな!それで・・・俺はどうして、ここに?」
「えっと、それは・・・どういう事かは私達にも・・・」

 二人によって床に下ろされたクロードは、まだどこかふらついていた。
 彼は再会した二人に喜びの声を上げると、早速その身体へと手を伸ばし傷を癒している。
 頭をぶつけた事によって、その前後の記憶が曖昧になっているのか、ここに来るまでの経緯をクラリッサへと尋ねたクロードに、彼女は言葉を濁すことしか出来なかった。

『あそこだ!奴らが逃げたぞ!!』
『逃がすな!あの力は野放しにするのは不味い!!』

 瓦礫によってダメージを負った魔物達もゆっくりと起き上がり始め、逃げ出したクロード達へとその矛先を向ける。
 彼らの一番の標的はなんと言ってもクロードだろう、彼の力によってこれまでも多くの魔物が被害にあっている。
 そのため彼らは口々クロードに対する警戒の言葉を吐くと、彼に向かって一斉に殺到してきていた。

「クロード様、お下がりください!ここは私達が!」
「・・・頑張る」

 クロードの力によって癒され、僅かながらも元気を取り戻したクラリッサとイダが、クロードへと殺到してくる魔物達に対して前へと出ていた。
 見ため的にはほとんど回復したように見える彼女達も、実際には表面が治っただけに過ぎない。
 武器すら失っているクラリッサに到っては、その杖を両手で握り締めて威嚇するばかりだった。

「いや、ここは俺に任せてもらおう」
「クロード様!?ですがっ!」
「・・・不安」

 二人の方に後ろから手をやって、彼女達の前へと進み出たクロードは、自信満々に振舞ってみせる。
 しかし彼の戦闘能力のなさを知っている二人は、揃って不安を口にしていた。

「さっきやった感じで、と・・・あ、そこだと危ないぞ。もっと後ろに下がって」

 二人が口にした不安も、自分がやろうとしている事に自信を滲ませているクロードの耳には届かない。
 彼はさっさと二人の間を通り抜けると、床の具合を確かめながらそこに手をついていた。

「はぁ・・・イダ、こっちに」
「・・・ん」

 聞く耳を持とうともしないクロードの様子に、釈然としないながらも引き下がったクラリッサは、イダの肩に触れると彼女と共に指示された位置まで後退していく。
 彼女達が後ろに下がった事をチラリと目をやって確認したクロードは、床についた手に黄金の光を纏わせると、その力を発動させる。

『な、なんだ!?くっ、こんな事も出来るのか!?』
『あんな壁、乗り越えればいい!!』
『馬鹿止めろ!!さっきのを見てなかったのか、うかつに近づくな!床が脆くなってるぞ!!』

 クロードはその力で、壁を作り出していた。
 その壁は部屋の両脇に聳え立つ柱の間を繋ぐように生み出され、先ほどまでの経験で感覚を掴んだのか、素材にされた床は壁の向こう側だけが薄く、脆くなっているようだった。
 その光景に魔物達の多くは驚き戸惑っているが、中にはそのまま乗り越えようと飛び込んでいく者もいた。
 しかしそんな魔物も、先ほどの光景を憶えていた周りの魔物達の手によって制止され、彼らは口惜しそうにその壁を眺めるだけとなっていた。

『おい見ろ!向こうからなら行けそうだぞ!!』
『よし!皆、向こうから回り込むぞ!!』

 部屋全体を横断するような壁も、実際には柱の所までで途切れてしまっている。
 クロードが石の柱を伸ばし戦っていた方は、床が崩れ全体が脆くなってしまっているため進むのは難しそうだが、逆側からならば問題なさそうだ。
 それに気づいた魔物達は、急いでそちら側へと向かっていく。

「あー・・・まぁ、そうなるよな。ま、いっか。向こうにはゴブリンがいるけど・・・これで戦ってくれれば儲けもんだし」

 魔物達の言葉を盗み聞きしていたクロードは、彼らが向かう方向へとそっと視線を向ける。
 そこには部屋の隅に固まり、どっちつかずの態度の見せているゴブリンの集団がいた。

「どうかしましたか、クロード様?」
「・・・いや、なんでもない。それより急ごう、アンナ達の所に」
「・・・ん」

 敵を隔てる壁が出来た事で、安心してアンナ達へと合流に向かおうとしていたクラリッサは、一向にその場を動こうとしないクロードに振り返っていた。
 彼女にその理由を説明しようとしたクロードは、一瞬の逡巡の後にその必要はないと判断して足を急がせる。
 彼の斜め後ろをイダがそっとつき従う、その気合の入った瞳には彼の背中をしっかりと守るという覚悟が現れていた。
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