終わる世界のブレイブス チート能力で楽して暮らそうと思ったら、人類が滅びかけてるんだが?

斑目 ごたく

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決戦、エイルアン城

協力者 2

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「いくぞ!!」
「にゃ、にゃ!!?」
『ぐっ、こんな感じなのか!?』

 掛け声と共にその力を解き放ったクロードによって、二人の足元からは石の柱が伸びてゆく。
 そうなるとは予想していなかったティオフィラは、驚きの声を上げながらもその天性の身軽さによって、うまくその場でバランスを保ってみせる。
 逆に覚悟していた筈のデニスの方が、あまりに勢いの振り落とされそうになってしまい、慌ててその縁へと手を伸ばしてしがみついていた。

『な、なんだあれは!?』
『おい、誰か乗ってるぞ!!』

 ものすごい勢いで頭上を通り過ぎていく石の柱に、魔物達は驚きそれを見上げている。
 彼らはその得体の知れない現象に口々に驚きの声を上げていたが、中にはその先端に人影があることに気づいた者もいたようで、警戒を呼びかけていた。

「にゃははは!!速い、速ーい!!にゃ?もう着いたのかにゃ?とーーーう!!!」

 その方が安定するためか、石の柱の縁の上によじ登り、その上で周りを見渡していたティオフィラは、そのスピードに楽しげな笑い声を響かせていた。
 しかしその楽しみも、凄まじい速度ならばすぐに目的地へと着いてしまう。
 クロードによって伸びるのを止められた石の柱は、レオン達の周辺へと辿り着いていた。
 せっかくの娯楽を奪われたティオフィラは一瞬だけ悲しげに目を伏せるが、すぐに本来の目的を思い出すと顔を上げ、レオンの近くへと飛び降りる。

『このままでは、もたない・・・なんだ、止まった?うぉっ!?』

 その方向は、近くで必死に石の柱へとしがみついていたデニスの脇を通るものだった。
 彼の事など気にも留めないティオフィラの勢いは、彼の身体を叩いて通り過ぎていく。
 その衝撃はギリギリのところで踏みとどまっていた彼の握力を使いきり、あえなく彼は落下していってしまっていた。

「後は、これを・・・これでどうだ?」

 二人が飛び降りたのを確認したクロードは、一旦行使を止めていた能力を再び使い始める。
 彼はその力を使って、伸ばした石の柱の根元を破壊しようとしていた。
 二人の安全のため、それなりに高いところ通過させていた石の柱の質量は軽くはない、それが落下すれば下にいる者は一溜まりもないだろう。
 彼はそれを見越して、仲間のいないルート選んでそれを伸ばしていた。

『今度はなんだ?何か様子が・・・』
『不味い崩れるぞ!!急いで下から逃げろ!!!』

 破壊した根元にミシミシという崩壊の音が響く、最初の方は垂直近い角度の伸びていた石の柱は、そこを失ってもすぐには倒れはしない。
 しかし確実に傾き、崩壊していくそれに魔物達もやがて気づき始めて、慌てて退避を始めていた。

『なにをやってる、早くどけ!!上からあれが降ってきてるんだぞ!!』
『なんだ、何を言っている・・・うおっ!?やばい逃げろ、うぎゃぁ!!?』

 慌てて逃げ始めた魔物達も、密集した彼らがそれほどうまく退避できるわけもない。
 すぐに崩れてくる石の柱に気づいて逃げ出した者もいれば、戦いに夢中で最後までそれに気づかず、そのまま潰される者もいた。
 最終的に多くの者が逃げ遅れ、即死まではいかないものも多くの魔物達が戦闘不能に追い込まれていた。

「よし、うまくいった!!これはこのまま、これを繰り返してればいけるんじゃないか?」

 思ったとおりか、それ以上の成果にガッツポーズを作ったクロードは、その結果に気を良くして更なる攻撃をと、再び両手を床へと延ばす。
 しかしそれほどうまくいく筈もなく、彼の力をその目にした魔物達は、彼を最大の脅威だと認識し、その首目掛けて殺到してきていた。

『あいつだ、あいつがこれを!!』
『魔法使いだ!奴を、奴を殺せぇぇぇ!!!』

 クロードの得体の知れない力は魔法としか表現できないのだろう、口々に魔法使いだと名指しされた彼は、殺到してくる魔物達の迫力に怯えてうまく能力を制御できないでいる。
 クロードがその力によって押し潰した魔物は、今向かってくる魔物達の仲間や同胞なども含まれていたのだろう、彼らの目は一様に血走り強い憎悪を滲ませていた。

「うおっ!?くそ、こんなことやってる場合じゃないか!俺も、向こうにっ!」

 暢気に次の攻撃を企てていたクロードは、自らを目の敵にして迫ってくる魔物達の姿に能力を暴走させて、周りの床を波立たせていた。
 もはや目の前に迫りつつある魔物達に焦った彼は、攻撃なんか考えている場合ではないと足元を輝かせ始める。
 クロードの能力の発露をはっきりと目撃した魔物達は、驚きと怯えの混じった声を上げていた。

『不味い、奴が魔法を使うぞ!!』
『止めろ、早く奴を止めろぉぉぉ!!!』

 能力を発動させたクロードは、足元に石の柱を伸ばしてゆっくりと上昇していく。
 その速度がいまいちなのは、焦りと恐怖から能力の制御がうまく出来ていないからか。
 遅い速度に焦れば焦るほどそのスピードは上がらない、そうこうしているうちに目を血走らせた魔物達が、石の柱に手が届く所まで近づいてきていた。

「嘘だろっ!?不味い不味い不味い!!くそっ、何で早く伸びないんだ!?」
『よし、いいぞ!そのまま引き摺り・・・なんだっ!?』

 焦りを加速させるクロードは、必死に柱を伸びる速度を上げようとするがうまくいかない。
 彼が悪態をついている間に、最も近くにまで迫っていた魔物はその柱の縁へと手を伸ばす。
 しかしその腕は急に下へと落ちると、そのまま見えなくなっていってしまう。

『うわっ!?不味い、離れろ!!ここはっ・・・!』
『お前ら下がれ!床が脆く、うぉぉっ!!?』

 多くの人が押し寄せても問題ないように丈夫に作られた床も、それを素材に作る石の柱が三本も生えてくれば、薄く脆くなっていってしまう。
 脆くなった床は、押し寄せてくる魔物達の体重に耐え切れずに崩壊を始めていた。
 石の柱に最接近した魔物が落ちていくのを目にした彼らは、慌てて逃げようと動き出すがそれはもう遅く、またしても多くの魔物達が巻き込まれ、この部屋の戦いから退場していく。

「なんか・・・うまくいったな。これで、いだっ!!?」

 柱の前方を中心に開いた穴へと飲み込まれていく魔物達の姿を眺めていたクロードは、その思わぬ成果になんともいえない表情で喜びを語る。
 これで少しは戦況を良くなると喜んでいた彼は、不注意な前方に天井へと頭をぶつけていた。
 迫る魔物達から逃れるために、クロードはとにかく上へとその柱を伸ばしており、魔物達が落ちていく姿を眺めていた彼に、迫る天井に気づく術などありはしなかった。

「ぁぁぁぁぁぁ・・・うがっ!!?」

 強烈な衝撃に脳を揺らして、そのままゆっくり倒れては柱から転げ落ちていくクロードは、朦朧とした意識を何とか保っていたが、それも落下の衝撃と共に失ってしまう。
 それは、彼の命も同様だった。
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