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決戦、エイルアン城
クロードと魔物達 1
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柱へと叩きつけられた衝撃で吹き飛んだ意識は、そのまま頭から落下し床へと折れた首に彼方へと消えた。
その身体に再び命の灯火が戻るまでに、どれほどの時間が経っただろうか、体感的にはゼロだがそういう訳でもないだろう。
折れた首と柱に預けた背中に支えられていた身体も、傾いた体重に自然と床へと倒れ付している。
周辺からは何か心配するような、引いているような声が聞こえてきていた。
『おいおい、死んでんじゃねぇのかこれ?どうするよ、放っておくと臭くなるんじゃねぇのか?』
『放っておけばいい。それよりもオーデンの注意が向こうに向いてる、今の内に逃げるぞ・・・デニス!!』
こちらへと飛ばされてきた人間の死体に気持ち悪そうに顔を顰めたアクスは、その対処の仕方を相方へと尋ねる。
尋ねられたヴァイゼはそれを一言で切り捨てると、オーデンの様子を窺っていた。
人間の少女達の相手をするのに手一杯な彼は、どうやらこちらに構っている暇はなさそうだ、ヴァイゼはその隙にどうにか逃げられないかと画策する。
これまでの周りの反応から、何故か彼らゴブリンはこの城で裏切り者と目されているらしいと、ヴァイゼは理解していた。
オーデンの反応からも弁明は難しいだろう、そうであるなら一刻も早く逃げ出すべきだ、彼はデニスへと声を掛ける。
『駄目だ!!あいつに会うまで、俺は!!』
『よそ見をしている余裕があるのか!!この糞ガキがぁ!!!』
ヴァイゼの声にも、今だにレオンに会うことに固執するデニスは、否定の言葉を叫んでいた。
彼は寧ろ逃げようと機会を窺っている二人を引きとめようとしていたが、彼と揉み合っているサリスはそんな態度が気に入らないと怒声を張り上げていた。
『もうそんな場合じゃねぇだろ!諦めろ!!』
『駄目だ!!これは俺の、俺達の未来のために必要なんだ!!』
ヴァイゼの考えに同意していたアクスは、駄々を捏ねているデニスを怒鳴りつける。
ヴァイゼはもしかするとデニスを見捨てることも考えていたかもしれないが、彼の事を買っているアクスはそれをさせたくはなかった。
しかしそれでもデニスは反抗を繰り返す、彼はそれを自らだけではなく種族為だと主張していた。
『あぁ!?なにいってんだお前!?』
『アクス、俺達は今のままでいいのか!?この城だけの話じゃない!俺達ゴブリンはどこにいっても下っ端で、いいように使い潰されてばかりだ!!このままじゃ何も変わらない!俺は、俺達は強く!強くならないと駄目なんだ!!』
訳の分からないことを言い出したデニスに、アクスは混乱してただ聞き返すことしか出来ない。
アクスのその疑問に、デニスは強い口調で言い返していた。
彼が語っているのは、ゴブリンの現状だろう。
彼らゴブリンはその強い繁殖力と、弱い個体能力によって他の種族にいいように使われる状態が長く続いている。
もはや彼ら自身もそういった生き物だと、自らを認識しているきらいすらあった。
しかしデニスはそれでは駄目だと声を張り上げる、彼は自らが変わるために、そして種族が変わっていくために、はっきりとした力を求めていると雄叫びを上げた。
『親父はそれを示そうとした!!だけど失敗した!!俺は間違えない、確かな力を手に入れてゴブリンを生まれ変わらしてみせる!!!』
デニスのその強硬な態度は、彼の父親に起因しているのかもしれない。
弱い立場のゴブリンでありながらも、一角の指揮官にまで出世し同胞を守護しようとしていた彼の父親は、半年前の戦いの際に戦死してしまっていた。
彼はその遺志を継ごうと考えていた、そしてそのためにはより強い力が必要だと、レオンの姿にその可能性を見出していたのだった。
『口だけは立派だな、糞ガキィ!!ブレントはそのための生贄かぁ!!!』
『違う!!俺は奴の事など知らない!!!』
デニスの物言いにさらに苛立ちを募らせたサリスは、彼の首を下から掴みかかる。
それをどうにか避けていたデニスは、これまでも何度なく言ってきたように、それは言いがかりだと繰り返していた。
「・・・ぅん、うるっさいなぁ・・・あれ、なんだ?どうなってる?」
『坊主の言い分も分かりはするが、しかし・・・うぉ!?い、生き返った!!?』
デニスたちの言い合う声は大きく、それを近くで聞いていたクロードの意識を呼び起こす。
治った首を床からゆっくりと引き起こし周りを窺った彼は、見当たらない知り合いの顔に疑問の声を上げる。
デニスの言葉に納得できる部分もあると判断を迷わせていたアクスは、目の前で起き上がった死体の姿に、慌てて飛び退いて驚愕の声を上げていた。
『どうした、アクス!?おいっ、そいつは!?アクス、お前何をした!!?』
『お、俺は何もしてないぞ!?こいつが勝手に!』
『馬鹿な!?アンデッドだとでも言うのか!?どう見ても違うだろ!!?』
脱出の機会を窺っていたヴァイゼは動揺したアクスの声に駆け戻ってくると、身体を起こし周りを頻りに窺っているクロードの姿に驚き、アクスを詰問する。
しかし何を言われた所でアクスにそれを答えることなど出来る筈もない、彼は何もしていないと主張するが、常識の範疇のないクロードの姿にヴァイゼは混乱を深めるばかりだった。
その身体に再び命の灯火が戻るまでに、どれほどの時間が経っただろうか、体感的にはゼロだがそういう訳でもないだろう。
折れた首と柱に預けた背中に支えられていた身体も、傾いた体重に自然と床へと倒れ付している。
周辺からは何か心配するような、引いているような声が聞こえてきていた。
『おいおい、死んでんじゃねぇのかこれ?どうするよ、放っておくと臭くなるんじゃねぇのか?』
『放っておけばいい。それよりもオーデンの注意が向こうに向いてる、今の内に逃げるぞ・・・デニス!!』
こちらへと飛ばされてきた人間の死体に気持ち悪そうに顔を顰めたアクスは、その対処の仕方を相方へと尋ねる。
尋ねられたヴァイゼはそれを一言で切り捨てると、オーデンの様子を窺っていた。
人間の少女達の相手をするのに手一杯な彼は、どうやらこちらに構っている暇はなさそうだ、ヴァイゼはその隙にどうにか逃げられないかと画策する。
これまでの周りの反応から、何故か彼らゴブリンはこの城で裏切り者と目されているらしいと、ヴァイゼは理解していた。
オーデンの反応からも弁明は難しいだろう、そうであるなら一刻も早く逃げ出すべきだ、彼はデニスへと声を掛ける。
『駄目だ!!あいつに会うまで、俺は!!』
『よそ見をしている余裕があるのか!!この糞ガキがぁ!!!』
ヴァイゼの声にも、今だにレオンに会うことに固執するデニスは、否定の言葉を叫んでいた。
彼は寧ろ逃げようと機会を窺っている二人を引きとめようとしていたが、彼と揉み合っているサリスはそんな態度が気に入らないと怒声を張り上げていた。
『もうそんな場合じゃねぇだろ!諦めろ!!』
『駄目だ!!これは俺の、俺達の未来のために必要なんだ!!』
ヴァイゼの考えに同意していたアクスは、駄々を捏ねているデニスを怒鳴りつける。
ヴァイゼはもしかするとデニスを見捨てることも考えていたかもしれないが、彼の事を買っているアクスはそれをさせたくはなかった。
しかしそれでもデニスは反抗を繰り返す、彼はそれを自らだけではなく種族為だと主張していた。
『あぁ!?なにいってんだお前!?』
『アクス、俺達は今のままでいいのか!?この城だけの話じゃない!俺達ゴブリンはどこにいっても下っ端で、いいように使い潰されてばかりだ!!このままじゃ何も変わらない!俺は、俺達は強く!強くならないと駄目なんだ!!』
訳の分からないことを言い出したデニスに、アクスは混乱してただ聞き返すことしか出来ない。
アクスのその疑問に、デニスは強い口調で言い返していた。
彼が語っているのは、ゴブリンの現状だろう。
彼らゴブリンはその強い繁殖力と、弱い個体能力によって他の種族にいいように使われる状態が長く続いている。
もはや彼ら自身もそういった生き物だと、自らを認識しているきらいすらあった。
しかしデニスはそれでは駄目だと声を張り上げる、彼は自らが変わるために、そして種族が変わっていくために、はっきりとした力を求めていると雄叫びを上げた。
『親父はそれを示そうとした!!だけど失敗した!!俺は間違えない、確かな力を手に入れてゴブリンを生まれ変わらしてみせる!!!』
デニスのその強硬な態度は、彼の父親に起因しているのかもしれない。
弱い立場のゴブリンでありながらも、一角の指揮官にまで出世し同胞を守護しようとしていた彼の父親は、半年前の戦いの際に戦死してしまっていた。
彼はその遺志を継ごうと考えていた、そしてそのためにはより強い力が必要だと、レオンの姿にその可能性を見出していたのだった。
『口だけは立派だな、糞ガキィ!!ブレントはそのための生贄かぁ!!!』
『違う!!俺は奴の事など知らない!!!』
デニスの物言いにさらに苛立ちを募らせたサリスは、彼の首を下から掴みかかる。
それをどうにか避けていたデニスは、これまでも何度なく言ってきたように、それは言いがかりだと繰り返していた。
「・・・ぅん、うるっさいなぁ・・・あれ、なんだ?どうなってる?」
『坊主の言い分も分かりはするが、しかし・・・うぉ!?い、生き返った!!?』
デニスたちの言い合う声は大きく、それを近くで聞いていたクロードの意識を呼び起こす。
治った首を床からゆっくりと引き起こし周りを窺った彼は、見当たらない知り合いの顔に疑問の声を上げる。
デニスの言葉に納得できる部分もあると判断を迷わせていたアクスは、目の前で起き上がった死体の姿に、慌てて飛び退いて驚愕の声を上げていた。
『どうした、アクス!?おいっ、そいつは!?アクス、お前何をした!!?』
『お、俺は何もしてないぞ!?こいつが勝手に!』
『馬鹿な!?アンデッドだとでも言うのか!?どう見ても違うだろ!!?』
脱出の機会を窺っていたヴァイゼは動揺したアクスの声に駆け戻ってくると、身体を起こし周りを頻りに窺っているクロードの姿に驚き、アクスを詰問する。
しかし何を言われた所でアクスにそれを答えることなど出来る筈もない、彼は何もしていないと主張するが、常識の範疇のないクロードの姿にヴァイゼは混乱を深めるばかりだった。
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