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決戦、エイルアン城
集う者たち 5
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「覚悟するにゃ!!ウィークネス―――」
『ふざけた真似を!!』
戦いへと意識を切り替えたクラリッサよりも、始めから何も取り戻すものがなかったティオフィラの方がずっと早い。
彼女はオーデンへと飛び掛ると、彼に弱体魔法を掛けようとその拳に紫色の光を纏わせていた。
しかし彼女達が歯向かってくることなど、クロードを弾き飛ばしたときから分かっている、当然オーデンはそれを予想し、ティオフィラを叩き落そうと拳を振るう。
『なにっ!!?』
オーデンの頭に拳を叩きつけようとしていたのか、大きく飛び上がったティオフィラに彼の攻撃を避ける術などない。
叩きつけられようとしていたその巨大な拳は、彼女の身体へと届く間際に大きく跳ね上がる。
それは、彼の足場が崩れた事によるものだった。
能力を発動しきる前に吹き飛ばされた事で、一部だけ崩れた床もオーデンの巨体の負荷が掛かれば重みに耐え切れなくもなる。
崩れた床と繋がるようにして崩壊していく床に、オーデンはバランス崩して尻餅をついていた。
「っ!?アァァマァァァ!!!」
紙一重で目前を過ぎ去っていくオーデンの拳を、身体を翻すことでやり過ごしたティオフィラは、急に体勢を変えた彼に狙いを修正すると、その紫色に輝く拳を叩き込んだ。
『くっ!?この、何をしやがった!!』
「後は任せたにゃ!!」
崩れた床の溝へと挟まったオーデンは、近くに着地したティオフィラを捕まえようと腕を振り回す。
彼女はそれから逃れるためか、素早く彼の傍から離れると一目散に逃げ出していた。
「・・・任せる」
「私も忘れないでよ、ね!」
ティオフィラを追いかけるのと、溝から一刻も早く抜け出そうと身体を捻っているオーデンには、それ以外に気をかける余裕などない。
ティオフィラの弱体魔法によって柔らかくなった彼の皮膚には、さぞやナイフが突き刺さるだろう。
イダとクラリッサはそれぞれに、構えたナイフをアンナを拘束するオーデンの指へと放っていた。
『ぐわぁ!?何故だ、こんなもので!!?』
突き立ったナイフの痛みに思わず指を開いてしまったオーデンは、アンナを取り逃がしてしまう。
投げナイフ程度の攻撃を耐え切れない事に驚いた彼は、思わずそれをまじまじと見詰めるが突き刺さっているものに変化などなかった。
「きゃあ!?」
オーデンから解放されたアンナは、その突然のタイミングに受身も取ることが出来ずに床へと転がり落ちる。
幸いオーデンが崩れた床の溝に嵌っている事もあって、その高さはそれほどでもなく彼女は短い悲鳴を上げる程度の痛みを味わうだけで済んでいた。
「アンナ!!」
「エミリア、ありが―――」
「邪魔!!」
聞こえてきた声に顔を向けると、こちらへと走ってきているエミリアの姿があった。
彼女の声に迎えに来てくれたと感じたアンナは、喜びに両手を広げるが、斧を両手で振りかぶっているエミリアは、アンナの後ろのオーデンを狙っていた。
「えっ!?あ、はい!!」
「おっらぁぁぁぁぁぁ!!!」
エミリアの声に一瞬面食らったアンナも、彼女の形相にすぐに事態を理解すると慌てて飛び退いた。
飛び退いたアンナに、オーデンとエミリアを隔てるものはもはやない、彼女は振りかぶった斧を気合の込めた雄叫びと共に振り下ろしていた。
『この程度で、やられるものかぁ!!この雑魚共がぁぁ!!!』
「くっ!?こんのぉぉぉ!!!」
眼前へと迫るエミリアの刃に、命の危険を感じたオーデンはその秘めたる膂力を解放させる。
嵌った溝から無理やり身体を引っ張り出した彼は、その勢いに瓦礫も一緒に吹き飛ばしている。
それは彼のすぐ近くにいたエミリアの身体を直撃し彼女を怯ませたが、それによって逸れた斧の軌道を彼女は無理やりオーデンへと修正していた。
『そんなものが当たると思っているのか!!おっらぁぁぁ!!!』
「ぐぅっ!!?」
無理やりの軌道変更はそのスピードも減じている、溝から抜け出し万全の状態となったオーデンが放った拳はそれよりも速く、エミリアの身体へと突き刺さっていた。
『あぁ?なんだよ、当たってんじゃねぇか、よ!!』
エミリアの斧を上回る速度で拳を振るっても、先に攻撃していた彼女のそれを完全に上回ることなど出来ない。
オーデンの脇腹には、彼女が放った斧が浅く突き刺さっていた。
彼はそれを引き抜くと、自らが吹き飛ばしたエミリアに向かって投げつけていた。
「エミリア!?大丈・・・うわっ!!?」
「・・・危ない」
吹き飛ばされたエミリアは、クラリッサとイダによって受け止められていた。
クラリッサは受け止めた彼女の状態を気遣おうとするが、すぐに迫りくる斧に気がつくと慌てて避けようと動き始める。
二人で受け止めたエミリアに、咄嗟に動けば方向が分かれもしそうだが、冷静に状況を見ていたイダは、クラリッサの動きに合わせて素早く退避することが可能だった。
『ちっ、人質がいなくなっちまったな・・・まぁいい、仕切り直しといこうや!!』
クラリッサ達が斧から逃げようとしている間に、玉座まで移動したオーデンは、その後ろへと回る。
彼はその後ろに隠していた武器を取り出すと、それを両手に構えていた。
彼が選んだのは、その体格に見合う大きさの大剣と槍だった。
それは力任せの戦い方を好むトロールからすればあまりに合わない武器かもしれない、しかしトロールらしくない器用さを誇る彼にとっては、気に入りの武装である。
「・・・あ、あれ?私は・・・?」
「エミリア、目が覚めた?良かった・・・」
「・・・でも、不味い」
クラリッサに抱えられた腕の中で目を覚ましたエミリアは、記憶が飛んでいるのか焦点の合わない瞳で周りを窺っている。
彼女の目覚めにクラリッサは安堵した表情を見せるが、同じく彼女を支えていたイダの表情は晴れない。
それもその筈だ、彼女達の後方では騒ぎを聞きつけた魔物達が駆けつけ始めていた。
「装備を取ってきたよ!あれ、ティオは?」
「クロード様の所に!アンナは前をお願い!!イダは後ろを警戒して!!」
「・・・ん」
どさくさに紛れて取り落としていた装備を取り戻したアンナは、クラリッサ達の下へと戻ってくると、一人姿が見えないティオフィラの事を気にしていた。
彼女の疑問に簡潔に答えたクラリッサは、不味くなる一方の状況に素早く指示を飛ばす。
その声にアンナはぽかんとした顔をしていたが、イダはすぐに頷くと後ろに迫りつつある魔物達を警戒していた。
「私は、何をすればいい!!」
「エミリア・・・あなたはアンナと一緒に、あいつの相手をお願い!!」
自分の足で投げ飛ばされた斧を回収してきたエミリアは、戻ってくるとクラリッサに指示を求めていた。
彼女の姿に一瞬心配そうな瞳を向けたクラリッサも、彼女の覚悟を汲み取ったのかすぐに指示を飛ばす。
「分かった!ほら、アンナも!!」
「う、うん!」
クラリッサの指示に頷いたエミリアは、今だに戸惑っている様子のアンナの手を引くと、オーデンへと対面する位置へと向かう。
彼女の身体には自らが手放していた短弓と、クロードが放り出したままだった弓が括り付けられていた。
『はっはぁ!!健気なもんだ!!まだ戦える気でいるのかぁ!?お前らぁ、磨り潰しちまえ!!!』
『『おおぉぉ!!!』』
謁見の間まで辿り着いた魔物達が、オーデンの号令で一斉に雪崩れ込んでくる。
その扉は大きな作りのものではあったが、廊下に溢れかえっている魔物達が一気に通れるほどのものではなく、迫力のある雄叫びのボリュームの割りに、部屋に入って魔物の数は少ない。
しかしそれでもそれは、少女達を囲むには十分な数だった。
今も途切れる事なく増えていく魔物達に、オーデンが言った事が真実にも思える。
少女達は圧倒的に分の悪い戦いに、重たい覚悟で臨む。
その姿も、魔物達の波に紛れてすぐに見えなくなっていた。
『ふざけた真似を!!』
戦いへと意識を切り替えたクラリッサよりも、始めから何も取り戻すものがなかったティオフィラの方がずっと早い。
彼女はオーデンへと飛び掛ると、彼に弱体魔法を掛けようとその拳に紫色の光を纏わせていた。
しかし彼女達が歯向かってくることなど、クロードを弾き飛ばしたときから分かっている、当然オーデンはそれを予想し、ティオフィラを叩き落そうと拳を振るう。
『なにっ!!?』
オーデンの頭に拳を叩きつけようとしていたのか、大きく飛び上がったティオフィラに彼の攻撃を避ける術などない。
叩きつけられようとしていたその巨大な拳は、彼女の身体へと届く間際に大きく跳ね上がる。
それは、彼の足場が崩れた事によるものだった。
能力を発動しきる前に吹き飛ばされた事で、一部だけ崩れた床もオーデンの巨体の負荷が掛かれば重みに耐え切れなくもなる。
崩れた床と繋がるようにして崩壊していく床に、オーデンはバランス崩して尻餅をついていた。
「っ!?アァァマァァァ!!!」
紙一重で目前を過ぎ去っていくオーデンの拳を、身体を翻すことでやり過ごしたティオフィラは、急に体勢を変えた彼に狙いを修正すると、その紫色に輝く拳を叩き込んだ。
『くっ!?この、何をしやがった!!』
「後は任せたにゃ!!」
崩れた床の溝へと挟まったオーデンは、近くに着地したティオフィラを捕まえようと腕を振り回す。
彼女はそれから逃れるためか、素早く彼の傍から離れると一目散に逃げ出していた。
「・・・任せる」
「私も忘れないでよ、ね!」
ティオフィラを追いかけるのと、溝から一刻も早く抜け出そうと身体を捻っているオーデンには、それ以外に気をかける余裕などない。
ティオフィラの弱体魔法によって柔らかくなった彼の皮膚には、さぞやナイフが突き刺さるだろう。
イダとクラリッサはそれぞれに、構えたナイフをアンナを拘束するオーデンの指へと放っていた。
『ぐわぁ!?何故だ、こんなもので!!?』
突き立ったナイフの痛みに思わず指を開いてしまったオーデンは、アンナを取り逃がしてしまう。
投げナイフ程度の攻撃を耐え切れない事に驚いた彼は、思わずそれをまじまじと見詰めるが突き刺さっているものに変化などなかった。
「きゃあ!?」
オーデンから解放されたアンナは、その突然のタイミングに受身も取ることが出来ずに床へと転がり落ちる。
幸いオーデンが崩れた床の溝に嵌っている事もあって、その高さはそれほどでもなく彼女は短い悲鳴を上げる程度の痛みを味わうだけで済んでいた。
「アンナ!!」
「エミリア、ありが―――」
「邪魔!!」
聞こえてきた声に顔を向けると、こちらへと走ってきているエミリアの姿があった。
彼女の声に迎えに来てくれたと感じたアンナは、喜びに両手を広げるが、斧を両手で振りかぶっているエミリアは、アンナの後ろのオーデンを狙っていた。
「えっ!?あ、はい!!」
「おっらぁぁぁぁぁぁ!!!」
エミリアの声に一瞬面食らったアンナも、彼女の形相にすぐに事態を理解すると慌てて飛び退いた。
飛び退いたアンナに、オーデンとエミリアを隔てるものはもはやない、彼女は振りかぶった斧を気合の込めた雄叫びと共に振り下ろしていた。
『この程度で、やられるものかぁ!!この雑魚共がぁぁ!!!』
「くっ!?こんのぉぉぉ!!!」
眼前へと迫るエミリアの刃に、命の危険を感じたオーデンはその秘めたる膂力を解放させる。
嵌った溝から無理やり身体を引っ張り出した彼は、その勢いに瓦礫も一緒に吹き飛ばしている。
それは彼のすぐ近くにいたエミリアの身体を直撃し彼女を怯ませたが、それによって逸れた斧の軌道を彼女は無理やりオーデンへと修正していた。
『そんなものが当たると思っているのか!!おっらぁぁぁ!!!』
「ぐぅっ!!?」
無理やりの軌道変更はそのスピードも減じている、溝から抜け出し万全の状態となったオーデンが放った拳はそれよりも速く、エミリアの身体へと突き刺さっていた。
『あぁ?なんだよ、当たってんじゃねぇか、よ!!』
エミリアの斧を上回る速度で拳を振るっても、先に攻撃していた彼女のそれを完全に上回ることなど出来ない。
オーデンの脇腹には、彼女が放った斧が浅く突き刺さっていた。
彼はそれを引き抜くと、自らが吹き飛ばしたエミリアに向かって投げつけていた。
「エミリア!?大丈・・・うわっ!!?」
「・・・危ない」
吹き飛ばされたエミリアは、クラリッサとイダによって受け止められていた。
クラリッサは受け止めた彼女の状態を気遣おうとするが、すぐに迫りくる斧に気がつくと慌てて避けようと動き始める。
二人で受け止めたエミリアに、咄嗟に動けば方向が分かれもしそうだが、冷静に状況を見ていたイダは、クラリッサの動きに合わせて素早く退避することが可能だった。
『ちっ、人質がいなくなっちまったな・・・まぁいい、仕切り直しといこうや!!』
クラリッサ達が斧から逃げようとしている間に、玉座まで移動したオーデンは、その後ろへと回る。
彼はその後ろに隠していた武器を取り出すと、それを両手に構えていた。
彼が選んだのは、その体格に見合う大きさの大剣と槍だった。
それは力任せの戦い方を好むトロールからすればあまりに合わない武器かもしれない、しかしトロールらしくない器用さを誇る彼にとっては、気に入りの武装である。
「・・・あ、あれ?私は・・・?」
「エミリア、目が覚めた?良かった・・・」
「・・・でも、不味い」
クラリッサに抱えられた腕の中で目を覚ましたエミリアは、記憶が飛んでいるのか焦点の合わない瞳で周りを窺っている。
彼女の目覚めにクラリッサは安堵した表情を見せるが、同じく彼女を支えていたイダの表情は晴れない。
それもその筈だ、彼女達の後方では騒ぎを聞きつけた魔物達が駆けつけ始めていた。
「装備を取ってきたよ!あれ、ティオは?」
「クロード様の所に!アンナは前をお願い!!イダは後ろを警戒して!!」
「・・・ん」
どさくさに紛れて取り落としていた装備を取り戻したアンナは、クラリッサ達の下へと戻ってくると、一人姿が見えないティオフィラの事を気にしていた。
彼女の疑問に簡潔に答えたクラリッサは、不味くなる一方の状況に素早く指示を飛ばす。
その声にアンナはぽかんとした顔をしていたが、イダはすぐに頷くと後ろに迫りつつある魔物達を警戒していた。
「私は、何をすればいい!!」
「エミリア・・・あなたはアンナと一緒に、あいつの相手をお願い!!」
自分の足で投げ飛ばされた斧を回収してきたエミリアは、戻ってくるとクラリッサに指示を求めていた。
彼女の姿に一瞬心配そうな瞳を向けたクラリッサも、彼女の覚悟を汲み取ったのかすぐに指示を飛ばす。
「分かった!ほら、アンナも!!」
「う、うん!」
クラリッサの指示に頷いたエミリアは、今だに戸惑っている様子のアンナの手を引くと、オーデンへと対面する位置へと向かう。
彼女の身体には自らが手放していた短弓と、クロードが放り出したままだった弓が括り付けられていた。
『はっはぁ!!健気なもんだ!!まだ戦える気でいるのかぁ!?お前らぁ、磨り潰しちまえ!!!』
『『おおぉぉ!!!』』
謁見の間まで辿り着いた魔物達が、オーデンの号令で一斉に雪崩れ込んでくる。
その扉は大きな作りのものではあったが、廊下に溢れかえっている魔物達が一気に通れるほどのものではなく、迫力のある雄叫びのボリュームの割りに、部屋に入って魔物の数は少ない。
しかしそれでもそれは、少女達を囲むには十分な数だった。
今も途切れる事なく増えていく魔物達に、オーデンが言った事が真実にも思える。
少女達は圧倒的に分の悪い戦いに、重たい覚悟で臨む。
その姿も、魔物達の波に紛れてすぐに見えなくなっていた。
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