終わる世界のブレイブス チート能力で楽して暮らそうと思ったら、人類が滅びかけてるんだが?

斑目 ごたく

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決戦、エイルアン城

思わぬ遭遇 2

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『ここだ!この中から声がしたぞ!!』

 収拾のつかない事態に各自が戸惑っていると、その騒ぎを聞きつけて部屋の近くへと魔物達が集まってくる。
 彼らが捜し求めているのは、リザードマンの裏切りを主導したと思われているサリスだろうが、この部屋にそれ以外にも彼らの獲物がたんまりと集まっている。
 そんな訳で、彼らはその声にある種の同じ考えを抱いていた、すなわち不味いという感覚だ。

『おいおいおい!!不味いんじゃないか、これ!?』
『当たり前だ!!どうする?やはりサリスを人質に・・・!』

 流石にこの現場を見られては不味いという感覚はあるのか、アクスも焦った表情を見せ始める。
 彼のようやくの気づきに怒鳴り声を上げたヴァイゼは、サリスを人質にするという当初からの考えを実行しようとする。
 流石の彼も、外の連中がそのサリスを追ってきたとまでは分からなかったようだ。

「どうしよう!?どうしたらいいかな!!?」
「・・・隙を見て逃げる」

 逃げ場のない部屋の中へと追い詰められそうな状況に、アンナはただただおろおろするばかりだった。
 彼女と違い冷静なイダは、どうにか隙を見て逃げ出せないかと部屋の中を窺っていた。

『お前が、お前がブレントを!!死んで詫びろー!!!』
『いい、加減に、しろっ!!!』

 デニスへと組み付いたサリスは、二人のゴブリンに妨害されながらも彼の首へとその手を掛けていた。
 その力は執念と怒りによる賜物だろうか、しかし流石に命の危険のある行為に手を掛けてきた彼に、デニスも無抵抗ではいられず彼を振り払うために力を込める。
 今まで無抵抗に近かったデニスのその急な振る舞いに、虚を突かれたサリスは弾き飛ばされてしまう。
 それは丁度、外の魔物達が扉を蹴破るのと同時だった。

『はっ、ぶち破ってやったぜ!!これでっ!!?』
『おい、立ち止まんなって!?うおっ!!?』

 扉を蹴破った魔物達はその勢いで部屋の中へと雪崩れ込もうとするが、そこにデニスに弾き飛ばされたサリスが突っ込んでいく。
 まさかそちら側から突っ込んでくるとは考えていなかった魔物達は、彼の身体を受け止めるとそのまま押し出されていく。
 それも無理のない事だろう、何故ならサリスの身体には、彼をデニスから引き剥がそうとしていた二人のゴブリンもくっついていたのだから。

「逃げ、るぞ!!」
「えっ!?う、うん!!」
「・・・急ぐ」

 サリスとそれに巻き込まれた二人が突っ込んだことで、部屋に突入しようとしていた魔物達の前にスペースが出来ている。
 そこに素早く駆け込んだデニスは、室内に残っている二人の少女に向かって手を伸ばす。
 展開の速度についていけていなかったアンナも、その仕草にすぐに意味を理解すると慌てて駆け出した。
 アンナは足の遅いイダの手を掴むと、彼女を引っ張ってデニスの後を追いかけていった。

『デニィィィスゥゥゥ!!逃げられると思うなよ!!!』
『くっそ、丈夫だなあのおっさん!!追いかけるぞ、ヴァイゼ!!』
『あ、あぁ・・・しかしな』

 かなり派手にぶつかったにも拘らず真っ先に復帰したサリスは、すぐさまデニスを追いかけて走り出す。
 彼に遅れて立ち上がったアクスは痛む頭を擦ると、まだ倒れたままだったヴァイゼを助け起こした。
 彼らもデニス達を追いかけて走り始めるが、ヴァイゼは本当にそれでいいのかと、どこか躊躇いを抱いていた。

『いってて・・・なんだったんだ、一体?あ、あれは・・・裏切り者だ、裏切り者のゴブリンがリザードマンといるぞ!!』
『やっぱり奴ら組んでいやがったんだ!!まとめて捕まえちまえ!!!』

 サリスに弾き飛ばされ、床へと転がっていた魔物はようやく起き上がると、人間とゴブリン、そしてリザードマンが同じ方向に走っていくのを目撃する。
 それはまさに、情報にあったとおりの裏切りの光景であった。

『何故だ!?俺達はっ!!』
『ヴァイゼ!いいから、今はとにかく追いかけるぞ!!』
『くっ、それしかないのか!!』

 アンナ達の仲間になったつもりのないヴァイゼは、問答無用で裏切り者扱いされた事に憤る。
 それを説明しようにも、人間と一緒の部屋から出てきた事実は拭いようもない。
 アクスはそれよりも、先を走っているデニスの事が気になっていた。
 この訳の分からない状況では、同胞の安全が何よりも優先すべきことだろう。
 ヴァイゼも疑問を振り切ると、追いかける足を急がしていた。

「ねぇ、どうなってるの!?どうなってるのこれ!?」
「・・・分かんない」

 訳の分からない状況に、ただ必死に逃げることしか出来ないアンナは、説明を求めて悲鳴にも似た声を上げる。
 彼女のその疑問に答えられる者はどこにもいない、その場には考えることを放棄したイダの無責任な声だけが響いていた。
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