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決戦、エイルアン城
逃亡の終わりは突然に 2
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「キュー!!キュー、キュー!!」
その時後方から、どこか聞き慣れた高い鳴き声が響いてきた。
それは重厚な足音を轟かせながら近づいてきており、その後ろからさらに騒がしい物音も続いていた。
「えっ!?なに、キュイなの!?え、どこから!?」
「にゃー?キュイなのにゃ!イダは一緒じゃないのにゃ?」
突然現れたキュイに、エミリアとティオフィラはそれぞれに戸惑いの声を上げる。
ティオフィラはその傍に一緒だった筈のイダの姿がない事を不思議がるが、キュイはそれどころではないと彼女達の横を通り過ぎていた。
「キュイ?どうして・・・?きゃあ!!?」
『やった、やったぞ!!ようやく捕まえた、こいつさえ殺っちまえば後は簡単よ!!』
近づいてくる足音と聞きなれた鳴き声、そしてエミリアとティオフィラが口にしたキュイの名前に気を取られたクラリッサは、そちらへと注意を逸らしてしまう。
その隙を見逃さず彼女に飛び掛った虎の頭を持つ獣人は、彼女に馬乗りになると勝ち誇った声を上げた。
「キュー!?キュ!!」
『えっ!?なんだ、うおっ!!?』
組み敷かれているクラリッサの姿に驚きの声を上げたキュイは、すぐに怒りの声を漏らすとその獣人を摘み上げていた。
仲間の方へと振り返り、自らの手柄を誇っていた獣人はいきなり高くなった視界に疑問の声を残すと、そのままキュイによって遠くへと放り投げられてしまう。
『な、なんだあいつは!?』
『あれ、ドラゴンじゃないのか!?』
クラリッサの前へと立ち塞がったキュイは、彼女へと迫りつつあった魔物達へと警戒を強めて頭を巡らせる。
それははっきりとした敵対の合図だ、突然現れた強大な存在に魔物達は驚き戸惑っていた。
『構うもんか!!この数で掛かればドラゴンだろうと、いちころよ!!』
『そ、そうだな!!よく見りゃ、まだ子供じゃねぇか!いけるぞ!!』
ドラゴンだと思われるキュイの登場に恐れ戦いていた魔物達も、圧倒的な数の利がこちらにあると思い出せば勝気にもなれる。
彼らはキュイがまだ子供だということを見抜くとますます戦意を高まらせ、寧ろ手柄になると一斉に襲い掛かり始めていた。
「キュー!!キュ、キュー!!」
「キュイ!無理はしちゃ駄目よ!!」
無理をして魔力を振り絞った影響からか、まだ地面に背中をつけたまま起き上がれていないクラリッサに、キュイは彼女を魔物から守るように立ち塞がっている。
襲い掛かってくる魔物達を簡単に弾き飛ばしている彼も、その数が増えてくると次第に追いつかなくなっていく。
その身体にはいつしか、魔物達が何体も取り付いていた。
『へへっ、取り付いちまえばこっちのもんよ!どうせ小回りもきかねぇんだろ!!』
キュイの身体に取り付いた猿のような獣人は、その手に持った曲刀を振り上げると、それを突き刺そうとする。
キュイもどうにかそれを引き離そうと身体を揺するが、強い握力にしっかりと取り付いた獣人は離れる事はなかった。
『・・・なにをするつもりだ、貴様?』
『リザードマン?一体どこから・・・まぁいい、お前も一緒に・・・?』
曲刀を振り下ろそうとしていた獣人の目の前には、いつの間にかリザードマンの若者が現れていた。
急に現れた彼の存在に戸惑った獣人も、味方は一人でも多い方がいいと彼に声を掛ける。
しかしその頭はゆっくりと横にずれていくと、そのまま地面へと零れ落ちていってしまった。
『なんだ、リザードマンが味方を・・・?』
『俺は見たぞ!!あいつが、あいつが仲間を殺した!!』
そのリザードマンの突然の凶行は、キュイの身体というブラインドによって周りはっきりとは目撃されていない。
しかしキュイに取り付いた獣人に続こうとしていた同種の仲間達はそれを目撃しており、声高にリザードマンの裏切りを喧伝する。
「キュ?キュー?」
『おぉ、竜神様!!我ら、我らリザードマンはあなた様の味方です!!』
傍らに佇むリザードマンが自分を助けてくれた事はキュイにも分かったのか、そのリザードマンへと顔を向けると、不思議そうな表情で彼を観察する。
その視線を受けて喜びに身を震わせる若いリザードマン、ブレントは必死に自分はキュイの味方だとアピールしていた。
彼は自らが持つ血に濡れた刀のような武器に目にやると、それを素早く背中へと回しキュイの視線から隠していた。
「キュー?キュ、キュー!!」
『お、おぉ・・・竜神様が我らに道をお示しになられた!!皆、竜神様に続くぞ!!』
ブレントの動きになんとなくその意図を理解したのか、キュイは彼に頭を振って見せると、ついて来いと魔物達に向かって走り出す。
キュイとの意思疎通の成功に滂沱の涙を溢れさしたブレントは、感動の声を高らかに響かせると、意気揚々とキュイについて駆け出し始めていた。
『くそっ!!もうブレントが味方を切っちまったのは見られちまったし・・・こうするしかねぇのか!!』
『い、いいのか?』
『それしかないんだよ、ちくしょう!!』
ブレントに嗾けられたリザードマン達は、簡単にはその指示に従えなかった。
彼らはブレントほどキュイが伝承にある存在だとは信じてはおらず、どちらかというとブレントについてここまでやってきたというのが実情だった。
そのブレントが味方を切ってしまい、今度はそれらに襲い掛かっている状況に、彼らはもはや進退窮まってしまう。
今更ブレントがやらかした事を誤魔化す事などできはしない、覚悟を決めた彼らはやけくそ気味に魔物達へと襲い掛かっていた。
「えぇー・・・?どういう状況なのこれ?」
クラリッサを助け起こしにいったティオフィラに、一人でクロードを支えていたエミリアは、訳の分からない状況に混乱した声を漏らす。
その問いに答えられる者などここにはいないだろう、彼女の視線の先ではリザードマン達と魔物達の戦いが激化し始めていた。
「なんか、リザードマン達はキュイの味方をしてくれてるっぽい」
「そう・・・なの?え、なんで?」
そろそろ呼吸も落ち着いてきたのか、それとも流石にこの状況に無関心でいられなかったのか、リザードマン達の言葉を聞き取っていたクロードは、その内容を端的に解釈する。
彼の言葉は確かに状況を簡潔に説明していたが、その内容を耳にしたエミリアは余計に首を捻って不思議そうな表情をしていた。
「と、とにかく今の内に逃げましょう!!」
「え?キュイは放っておいていいの?」
ティオフィラの助け起こされ、多少体調も回復したクラリッサは、クロードの先ほどの言葉に若干混乱しながらも、早く逃げようと彼を促した。
彼女に腕を掴まれたクロードは、敵の真ん中に躍り出ては軽快にそれらを弾き飛ばしているキュイへと視線を向ける。
キュイだけでは危険もありそうなその状況も、周りのリザードマンが献身的にケアしているのを見れば問題ないようにみえる。
とはいえよく分からない理由で味方をしてくれている彼らを、完全に信用出来はしなかった。
「それは・・・ですが今は」
「キュイー!!やっちゃうにゃー!!!」
場合によってはキュイを見捨てるという選択肢もチラつかせるクラリッサは、それでもどこか迷っているようにみえる。
その真剣なやり取りを吹き飛ばすように、ティオフィラの楽しそうな歓声が響く。
その声に反応したキュイは、さらに気合を入れて魔物達を弾き飛ばしていた。
「なんか、大丈夫そうじゃない?ほら、ティオ」
元気に暴れまわっているキュイの姿に、エミリアは問題ないんじゃないかという感想を漏らす。
彼女はティオフィラの近くに寄ると、その脇腹を膝で突いて何事かを促した。
「にゃ?分かったにゃ!キュイー!!危なくなったら、逃げるのにゃー!!」
「キュ?キュー、キュー!!」
エミリアの指示を受けたティオフィラは、大声を張り上げるとキュイへと注意を促した。
その言葉の意味を理解しているのかは分からないが、キュイはティオフィラの方へと顔を向けると頷くように頭を上下させていた。
その時後方から、どこか聞き慣れた高い鳴き声が響いてきた。
それは重厚な足音を轟かせながら近づいてきており、その後ろからさらに騒がしい物音も続いていた。
「えっ!?なに、キュイなの!?え、どこから!?」
「にゃー?キュイなのにゃ!イダは一緒じゃないのにゃ?」
突然現れたキュイに、エミリアとティオフィラはそれぞれに戸惑いの声を上げる。
ティオフィラはその傍に一緒だった筈のイダの姿がない事を不思議がるが、キュイはそれどころではないと彼女達の横を通り過ぎていた。
「キュイ?どうして・・・?きゃあ!!?」
『やった、やったぞ!!ようやく捕まえた、こいつさえ殺っちまえば後は簡単よ!!』
近づいてくる足音と聞きなれた鳴き声、そしてエミリアとティオフィラが口にしたキュイの名前に気を取られたクラリッサは、そちらへと注意を逸らしてしまう。
その隙を見逃さず彼女に飛び掛った虎の頭を持つ獣人は、彼女に馬乗りになると勝ち誇った声を上げた。
「キュー!?キュ!!」
『えっ!?なんだ、うおっ!!?』
組み敷かれているクラリッサの姿に驚きの声を上げたキュイは、すぐに怒りの声を漏らすとその獣人を摘み上げていた。
仲間の方へと振り返り、自らの手柄を誇っていた獣人はいきなり高くなった視界に疑問の声を残すと、そのままキュイによって遠くへと放り投げられてしまう。
『な、なんだあいつは!?』
『あれ、ドラゴンじゃないのか!?』
クラリッサの前へと立ち塞がったキュイは、彼女へと迫りつつあった魔物達へと警戒を強めて頭を巡らせる。
それははっきりとした敵対の合図だ、突然現れた強大な存在に魔物達は驚き戸惑っていた。
『構うもんか!!この数で掛かればドラゴンだろうと、いちころよ!!』
『そ、そうだな!!よく見りゃ、まだ子供じゃねぇか!いけるぞ!!』
ドラゴンだと思われるキュイの登場に恐れ戦いていた魔物達も、圧倒的な数の利がこちらにあると思い出せば勝気にもなれる。
彼らはキュイがまだ子供だということを見抜くとますます戦意を高まらせ、寧ろ手柄になると一斉に襲い掛かり始めていた。
「キュー!!キュ、キュー!!」
「キュイ!無理はしちゃ駄目よ!!」
無理をして魔力を振り絞った影響からか、まだ地面に背中をつけたまま起き上がれていないクラリッサに、キュイは彼女を魔物から守るように立ち塞がっている。
襲い掛かってくる魔物達を簡単に弾き飛ばしている彼も、その数が増えてくると次第に追いつかなくなっていく。
その身体にはいつしか、魔物達が何体も取り付いていた。
『へへっ、取り付いちまえばこっちのもんよ!どうせ小回りもきかねぇんだろ!!』
キュイの身体に取り付いた猿のような獣人は、その手に持った曲刀を振り上げると、それを突き刺そうとする。
キュイもどうにかそれを引き離そうと身体を揺するが、強い握力にしっかりと取り付いた獣人は離れる事はなかった。
『・・・なにをするつもりだ、貴様?』
『リザードマン?一体どこから・・・まぁいい、お前も一緒に・・・?』
曲刀を振り下ろそうとしていた獣人の目の前には、いつの間にかリザードマンの若者が現れていた。
急に現れた彼の存在に戸惑った獣人も、味方は一人でも多い方がいいと彼に声を掛ける。
しかしその頭はゆっくりと横にずれていくと、そのまま地面へと零れ落ちていってしまった。
『なんだ、リザードマンが味方を・・・?』
『俺は見たぞ!!あいつが、あいつが仲間を殺した!!』
そのリザードマンの突然の凶行は、キュイの身体というブラインドによって周りはっきりとは目撃されていない。
しかしキュイに取り付いた獣人に続こうとしていた同種の仲間達はそれを目撃しており、声高にリザードマンの裏切りを喧伝する。
「キュ?キュー?」
『おぉ、竜神様!!我ら、我らリザードマンはあなた様の味方です!!』
傍らに佇むリザードマンが自分を助けてくれた事はキュイにも分かったのか、そのリザードマンへと顔を向けると、不思議そうな表情で彼を観察する。
その視線を受けて喜びに身を震わせる若いリザードマン、ブレントは必死に自分はキュイの味方だとアピールしていた。
彼は自らが持つ血に濡れた刀のような武器に目にやると、それを素早く背中へと回しキュイの視線から隠していた。
「キュー?キュ、キュー!!」
『お、おぉ・・・竜神様が我らに道をお示しになられた!!皆、竜神様に続くぞ!!』
ブレントの動きになんとなくその意図を理解したのか、キュイは彼に頭を振って見せると、ついて来いと魔物達に向かって走り出す。
キュイとの意思疎通の成功に滂沱の涙を溢れさしたブレントは、感動の声を高らかに響かせると、意気揚々とキュイについて駆け出し始めていた。
『くそっ!!もうブレントが味方を切っちまったのは見られちまったし・・・こうするしかねぇのか!!』
『い、いいのか?』
『それしかないんだよ、ちくしょう!!』
ブレントに嗾けられたリザードマン達は、簡単にはその指示に従えなかった。
彼らはブレントほどキュイが伝承にある存在だとは信じてはおらず、どちらかというとブレントについてここまでやってきたというのが実情だった。
そのブレントが味方を切ってしまい、今度はそれらに襲い掛かっている状況に、彼らはもはや進退窮まってしまう。
今更ブレントがやらかした事を誤魔化す事などできはしない、覚悟を決めた彼らはやけくそ気味に魔物達へと襲い掛かっていた。
「えぇー・・・?どういう状況なのこれ?」
クラリッサを助け起こしにいったティオフィラに、一人でクロードを支えていたエミリアは、訳の分からない状況に混乱した声を漏らす。
その問いに答えられる者などここにはいないだろう、彼女の視線の先ではリザードマン達と魔物達の戦いが激化し始めていた。
「なんか、リザードマン達はキュイの味方をしてくれてるっぽい」
「そう・・・なの?え、なんで?」
そろそろ呼吸も落ち着いてきたのか、それとも流石にこの状況に無関心でいられなかったのか、リザードマン達の言葉を聞き取っていたクロードは、その内容を端的に解釈する。
彼の言葉は確かに状況を簡潔に説明していたが、その内容を耳にしたエミリアは余計に首を捻って不思議そうな表情をしていた。
「と、とにかく今の内に逃げましょう!!」
「え?キュイは放っておいていいの?」
ティオフィラの助け起こされ、多少体調も回復したクラリッサは、クロードの先ほどの言葉に若干混乱しながらも、早く逃げようと彼を促した。
彼女に腕を掴まれたクロードは、敵の真ん中に躍り出ては軽快にそれらを弾き飛ばしているキュイへと視線を向ける。
キュイだけでは危険もありそうなその状況も、周りのリザードマンが献身的にケアしているのを見れば問題ないようにみえる。
とはいえよく分からない理由で味方をしてくれている彼らを、完全に信用出来はしなかった。
「それは・・・ですが今は」
「キュイー!!やっちゃうにゃー!!!」
場合によってはキュイを見捨てるという選択肢もチラつかせるクラリッサは、それでもどこか迷っているようにみえる。
その真剣なやり取りを吹き飛ばすように、ティオフィラの楽しそうな歓声が響く。
その声に反応したキュイは、さらに気合を入れて魔物達を弾き飛ばしていた。
「なんか、大丈夫そうじゃない?ほら、ティオ」
元気に暴れまわっているキュイの姿に、エミリアは問題ないんじゃないかという感想を漏らす。
彼女はティオフィラの近くに寄ると、その脇腹を膝で突いて何事かを促した。
「にゃ?分かったにゃ!キュイー!!危なくなったら、逃げるのにゃー!!」
「キュ?キュー、キュー!!」
エミリアの指示を受けたティオフィラは、大声を張り上げるとキュイへと注意を促した。
その言葉の意味を理解しているのかは分からないが、キュイはティオフィラの方へと顔を向けると頷くように頭を上下させていた。
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