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決戦、エイルアン城
捕虜収容所での戦い 2
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『おらぁぁ!!ちっ、ようやくか。随分、梃子摺らせてくれたじゃねぇ・・・』
「でかいな、くそっ!!」
クロードによって作られた壁が破壊された後に現れたのは、通路を埋め尽くすような巨大な緑の壁だった。
人間サイズの生き物が通る事が想定された狭い通路に、身を屈めるようにして佇んでいる巨大な魔物は、おそらくトロールだろう。
その巨大な身体に見合った巨大な棍棒を振り下ろしたままのトロールに飛び掛ったレオンは、その腹へと剣を突き刺すと、相手のサイズに致命傷を与えられたかが分からず、すぐに剣を抜き払っていた。
『あぁ?痛てぇな、おい!!』
「ぐっ!?」
彼の懸念の通り、腹に突き刺した剣は致命傷にはならなかったのか、それともそいつが極端に痛みに鈍いだけなのか、トロールは傷に構わず棍棒を振り払う。
レオンはどうにかそれを剣を立てて防ぐ、そのサイズの金属を加工する技術がなかったのか、木材で出来たそれに刃食い込み、彼はそのまま通路の壁へと叩きつけられていた。
「レオン!?」
「俺の事はいい!通路に敵を入れるな!!」
壁に叩きつけられたレオンの姿に動揺した声を上げる兵士達は、戦場で我を忘れているようだった。
それも無理がない事だろうか、これまでの戦いでレオンはその圧倒的な強さを示し続けていた、それがこうもあっさりやられて、動揺するなという方が無理があるだろう。
しかしその間にも壊された壁から部屋へと侵入しようとしている魔物達はいる、レオンはそれに対応しろと叫んでいた。
『随分と余裕そうだなぁ!!』
窮地にある自分よりも、味方に指示を出すのを優先したレオンの姿に、苛立ちを覚えたトロールはその力を強くする。
棍棒の向こう側からは悲痛な叫び声と、骨が潰れる音が響いていた。
「余裕があるから、な!!」
その巨大な棍棒は通路に詰めていた他の魔物巻き込んでいる、その先頭に叩きつけられていたレオンには、壁との余裕がかなりあった。
壁へと足をつけていたレオンは、縮めていたそれを解き放つと棍棒に食い込んだ剣を思いっきり抜き放つ。
棍棒によって叩き潰され、頭だけが上に飛び出たような魔物の頭蓋骨を両断した剣先は、そのまま飛び出していったレオンの勢いに半回転して、トロールの頭をも両断した。
「おおっ!!」
「感心している暇なんかないぞ!!」
レオンの見事な戦いぶりに関心の声を上げる兵士達は、それぞれに戦いの手を休めてしまっている。
それは戦力の中心であったトロールを討ち取られてしまった、魔物達も同じだ。
彼らは呆気に取られたように両断され血を噴出しているトロールの頭を見上げている、床へと着地したレオンはそんな彼らに向けて剣を振り払っていた。
『ぐぅ!?』
「レオン!?大丈夫か!」
「平気だ!俺に構うな!!」
振り払った剣に二体の魔物を跳ね飛ばしたレオンは、脇腹を押さえて蹲る。
トロールを簡単に蹴散らしたように見えた彼も、実際にはかなりのダメージを負っていたようだ。
彼のその様子に心配げな声を掛けた兵士に、レオンはさらに剣を振るって気にする必要はないと振舞っていた。
『おい、どうするんだギード!?通訳できる奴がいなくなっちまったぞ!このまま逃げるか?』
『あの穴からか?無理だ!!』
ギードと呼ばれた若いゴブリンは、クロードと主に会話したゴブリンだろう。
部屋の隅に固まっていた彼らは、唯一彼らと通訳できる存在を失った事で自らの立場が危うくなった事を自覚していた。
彼らは中心となるゴブリンであるギードに判断を仰ぐが、彼は当然クロードが開けた穴から逃げるという自殺行為を却下する。
『どうせこのままじゃ奴らに殺されちまう!後ろから襲って皆殺しにしよう!!』
人間達を後ろから襲撃しようと企てるゴブリンは、クロードが作って与えた石の武器を手に取った。
疲れ果てた兵士達は魔物達に押されがちであり、レオンは彼らフォローするのに精一杯だ。
その状況にゴブリン達が後ろから襲い掛かれば、彼らは一溜まりもないだろう。
多くのゴブリンは彼に賛同するように頷き、それぞれに武器を取っていた。
『俺達が人間に協力したのはもう見られちまってる!!今更向こうの味方なんて出来る訳ないだろ!!俺達は、俺達は人間と共に戦うしかないんだよ!!』
人間達を後ろから襲うと決めたゴブリン達は、適切なタイミングを計って姿勢を低くしている。
そんな彼らの前にギードは立ち上がると、力強く宣言していた。
彼はクロードに積極的に協力していたゴブリンであり、それを多くの魔物達に目撃されている事も知っていた。
その裏切りは今更取り返しなどつかない、彼はそれを身をもって示すように兵士達の隙間から部屋へと侵入してきた魔物を迎え撃つ。
『そうだ!俺達はもう・・・』
『ギードが正しい、俺はあいつに従う!!』
ギードの突然の行動に多くのゴブリンは戸惑っていたが、中には彼に賛同する者もいた。
彼らはそれぞれに武器を持つと、ギードの加勢へと向かっていく。
『おい、お前ら!?』
『くそっ、どうする!?これじゃ、あいつらとも戦う事になるぞ』
取り残されたゴブリン達の表情は暗い。
人間を裏切る事に抵抗のない彼らも、仲間と殺しあう事をよしとはしなかった。
『仕方ない、俺達も加勢に向かおう』
『そんな!?それでは・・・!?』
残されたゴブリンの中でも年嵩の男が、その重たい腰を上げてギード達への加勢に向かおうと歩みだす。
周りの者達はそんな彼の振る舞いに驚くが、どこかそれしかないのかという空気も漂っていた。
『同胞とは戦えん、それにギードの言う事も尤もだ。俺達の裏切りは、多くの者に目撃されている。それに、なにも最後まで戦えという話ではない、折を見て逃げ出せばいいんだ』
『そうだな、それなら・・・』
年嵩のゴブリンは同胞と戦う事を嫌い、裏切りの事実も隠せないと認めていた。
その上で彼は、人間達を捨石にどうにかこの場を切り抜けようと画策する。
その言葉に残されたゴブリン達も納得すると、彼に従ってギードの加勢に向かう。
『お前達!来てくれたのか!!』
『おぅ!!とにかく追い返すぞ!!』
『あぁ!!』
石で出来た粗末な武器しかないということもあって、部屋に侵入してきた魔物に押されがちだったギード達は、救援に駆けつけたゴブリン達に歓声を上げる。
彼らは魔物を囲んで叩き出すと、弱ったそれを部屋の外へと押し出した。
「ゴブリン共が協力するだと?なにが狙いだ・・・くそっ!あいつがいないと思惑も探れない!!」
弱った兵士達に、一人獅子奮迅の活躍する事でどうにか戦線を維持していたレオンは、僅かに楽になった戦況に疑問の視線を巡らせた。
彼は戦線を押し返しているゴブリン達の集団を発見し、その理由を知ると共に新たな疑念を芽生えさせる。
通訳がいなくなった状況に、当然裏切ると思っていたゴブリン達の加勢は、彼にとっては予想外の出来事だ。
当然信用など出来ないが、彼にはそれを確かめる術も、警戒する余裕すらなかった。
「くっ!今は、それどころじゃ、ねぇ!!!」
敵の攻撃を引きつけるために、そのど真ん中へと躍り出ているレオンには、常に四方八方から攻撃がやってくる。
それを躱し跳ね返している彼には、疑わしい存在に注意を払っている余裕などなかった。
すでに限界を超えてどうにか武器を振るっているだけの兵士達もそれは同じで、ゴブリン達の戦線参加は誰にも咎められる事なく受け入れられていく。
『戦え、戦うんだ!!勝つ事でしか生き残れないぞ!!』
『ちっ・・・逃げるにしても、もう少し有利な状況にならないと』
小柄ながらも意気の高いギードは、ゴブリン達の先頭に立って魔物達を押し返していく。
彼は戦意を高揚させる声を上げながら、敵に対して突撃を繰り返した。
彼とは思惑の違うゴブリン達も、今はともかくそれに従うしかないと、彼に続いて武器を掲げる。
ゴブリン達と人間達の奇妙な共同戦線は、まだ始まったばかり。
その戦いは、激しさを増していく一方だった。
「でかいな、くそっ!!」
クロードによって作られた壁が破壊された後に現れたのは、通路を埋め尽くすような巨大な緑の壁だった。
人間サイズの生き物が通る事が想定された狭い通路に、身を屈めるようにして佇んでいる巨大な魔物は、おそらくトロールだろう。
その巨大な身体に見合った巨大な棍棒を振り下ろしたままのトロールに飛び掛ったレオンは、その腹へと剣を突き刺すと、相手のサイズに致命傷を与えられたかが分からず、すぐに剣を抜き払っていた。
『あぁ?痛てぇな、おい!!』
「ぐっ!?」
彼の懸念の通り、腹に突き刺した剣は致命傷にはならなかったのか、それともそいつが極端に痛みに鈍いだけなのか、トロールは傷に構わず棍棒を振り払う。
レオンはどうにかそれを剣を立てて防ぐ、そのサイズの金属を加工する技術がなかったのか、木材で出来たそれに刃食い込み、彼はそのまま通路の壁へと叩きつけられていた。
「レオン!?」
「俺の事はいい!通路に敵を入れるな!!」
壁に叩きつけられたレオンの姿に動揺した声を上げる兵士達は、戦場で我を忘れているようだった。
それも無理がない事だろうか、これまでの戦いでレオンはその圧倒的な強さを示し続けていた、それがこうもあっさりやられて、動揺するなという方が無理があるだろう。
しかしその間にも壊された壁から部屋へと侵入しようとしている魔物達はいる、レオンはそれに対応しろと叫んでいた。
『随分と余裕そうだなぁ!!』
窮地にある自分よりも、味方に指示を出すのを優先したレオンの姿に、苛立ちを覚えたトロールはその力を強くする。
棍棒の向こう側からは悲痛な叫び声と、骨が潰れる音が響いていた。
「余裕があるから、な!!」
その巨大な棍棒は通路に詰めていた他の魔物巻き込んでいる、その先頭に叩きつけられていたレオンには、壁との余裕がかなりあった。
壁へと足をつけていたレオンは、縮めていたそれを解き放つと棍棒に食い込んだ剣を思いっきり抜き放つ。
棍棒によって叩き潰され、頭だけが上に飛び出たような魔物の頭蓋骨を両断した剣先は、そのまま飛び出していったレオンの勢いに半回転して、トロールの頭をも両断した。
「おおっ!!」
「感心している暇なんかないぞ!!」
レオンの見事な戦いぶりに関心の声を上げる兵士達は、それぞれに戦いの手を休めてしまっている。
それは戦力の中心であったトロールを討ち取られてしまった、魔物達も同じだ。
彼らは呆気に取られたように両断され血を噴出しているトロールの頭を見上げている、床へと着地したレオンはそんな彼らに向けて剣を振り払っていた。
『ぐぅ!?』
「レオン!?大丈夫か!」
「平気だ!俺に構うな!!」
振り払った剣に二体の魔物を跳ね飛ばしたレオンは、脇腹を押さえて蹲る。
トロールを簡単に蹴散らしたように見えた彼も、実際にはかなりのダメージを負っていたようだ。
彼のその様子に心配げな声を掛けた兵士に、レオンはさらに剣を振るって気にする必要はないと振舞っていた。
『おい、どうするんだギード!?通訳できる奴がいなくなっちまったぞ!このまま逃げるか?』
『あの穴からか?無理だ!!』
ギードと呼ばれた若いゴブリンは、クロードと主に会話したゴブリンだろう。
部屋の隅に固まっていた彼らは、唯一彼らと通訳できる存在を失った事で自らの立場が危うくなった事を自覚していた。
彼らは中心となるゴブリンであるギードに判断を仰ぐが、彼は当然クロードが開けた穴から逃げるという自殺行為を却下する。
『どうせこのままじゃ奴らに殺されちまう!後ろから襲って皆殺しにしよう!!』
人間達を後ろから襲撃しようと企てるゴブリンは、クロードが作って与えた石の武器を手に取った。
疲れ果てた兵士達は魔物達に押されがちであり、レオンは彼らフォローするのに精一杯だ。
その状況にゴブリン達が後ろから襲い掛かれば、彼らは一溜まりもないだろう。
多くのゴブリンは彼に賛同するように頷き、それぞれに武器を取っていた。
『俺達が人間に協力したのはもう見られちまってる!!今更向こうの味方なんて出来る訳ないだろ!!俺達は、俺達は人間と共に戦うしかないんだよ!!』
人間達を後ろから襲うと決めたゴブリン達は、適切なタイミングを計って姿勢を低くしている。
そんな彼らの前にギードは立ち上がると、力強く宣言していた。
彼はクロードに積極的に協力していたゴブリンであり、それを多くの魔物達に目撃されている事も知っていた。
その裏切りは今更取り返しなどつかない、彼はそれを身をもって示すように兵士達の隙間から部屋へと侵入してきた魔物を迎え撃つ。
『そうだ!俺達はもう・・・』
『ギードが正しい、俺はあいつに従う!!』
ギードの突然の行動に多くのゴブリンは戸惑っていたが、中には彼に賛同する者もいた。
彼らはそれぞれに武器を持つと、ギードの加勢へと向かっていく。
『おい、お前ら!?』
『くそっ、どうする!?これじゃ、あいつらとも戦う事になるぞ』
取り残されたゴブリン達の表情は暗い。
人間を裏切る事に抵抗のない彼らも、仲間と殺しあう事をよしとはしなかった。
『仕方ない、俺達も加勢に向かおう』
『そんな!?それでは・・・!?』
残されたゴブリンの中でも年嵩の男が、その重たい腰を上げてギード達への加勢に向かおうと歩みだす。
周りの者達はそんな彼の振る舞いに驚くが、どこかそれしかないのかという空気も漂っていた。
『同胞とは戦えん、それにギードの言う事も尤もだ。俺達の裏切りは、多くの者に目撃されている。それに、なにも最後まで戦えという話ではない、折を見て逃げ出せばいいんだ』
『そうだな、それなら・・・』
年嵩のゴブリンは同胞と戦う事を嫌い、裏切りの事実も隠せないと認めていた。
その上で彼は、人間達を捨石にどうにかこの場を切り抜けようと画策する。
その言葉に残されたゴブリン達も納得すると、彼に従ってギードの加勢に向かう。
『お前達!来てくれたのか!!』
『おぅ!!とにかく追い返すぞ!!』
『あぁ!!』
石で出来た粗末な武器しかないということもあって、部屋に侵入してきた魔物に押されがちだったギード達は、救援に駆けつけたゴブリン達に歓声を上げる。
彼らは魔物を囲んで叩き出すと、弱ったそれを部屋の外へと押し出した。
「ゴブリン共が協力するだと?なにが狙いだ・・・くそっ!あいつがいないと思惑も探れない!!」
弱った兵士達に、一人獅子奮迅の活躍する事でどうにか戦線を維持していたレオンは、僅かに楽になった戦況に疑問の視線を巡らせた。
彼は戦線を押し返しているゴブリン達の集団を発見し、その理由を知ると共に新たな疑念を芽生えさせる。
通訳がいなくなった状況に、当然裏切ると思っていたゴブリン達の加勢は、彼にとっては予想外の出来事だ。
当然信用など出来ないが、彼にはそれを確かめる術も、警戒する余裕すらなかった。
「くっ!今は、それどころじゃ、ねぇ!!!」
敵の攻撃を引きつけるために、そのど真ん中へと躍り出ているレオンには、常に四方八方から攻撃がやってくる。
それを躱し跳ね返している彼には、疑わしい存在に注意を払っている余裕などなかった。
すでに限界を超えてどうにか武器を振るっているだけの兵士達もそれは同じで、ゴブリン達の戦線参加は誰にも咎められる事なく受け入れられていく。
『戦え、戦うんだ!!勝つ事でしか生き残れないぞ!!』
『ちっ・・・逃げるにしても、もう少し有利な状況にならないと』
小柄ながらも意気の高いギードは、ゴブリン達の先頭に立って魔物達を押し返していく。
彼は戦意を高揚させる声を上げながら、敵に対して突撃を繰り返した。
彼とは思惑の違うゴブリン達も、今はともかくそれに従うしかないと、彼に続いて武器を掲げる。
ゴブリン達と人間達の奇妙な共同戦線は、まだ始まったばかり。
その戦いは、激しさを増していく一方だった。
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