終わる世界のブレイブス チート能力で楽して暮らそうと思ったら、人類が滅びかけてるんだが?

斑目 ごたく

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育成の始まり

くたくたの午睡

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「あ~・・・疲れたぁ」
「・・・くたくた」

 洞窟へと帰ってきたクロードは搾り出すように声を上げると、そのまま地面へと倒れ伏せる。
 彼の傍へと座り込んだイダは、その姿を真似ると地面へと横たわるが、どうにも硬かったのか頭を横にずらしてクロードの身体へと預けていた。

「イダちゃん、クロード様も・・・ほら、寝るなら、自分の部屋に・・・」

 だらしなく地面へと横たわる二人の姿に、クラリッサは彼らの身体を揺すって起こそうとする。
 しかしすでに寝息を立て始めた二人に、その程度の刺激は意味を成すわけもなく、疲れた身体はクラリッサにも眠気の魔の手を伸ばし始めていた。

「私は食事の用意をしてきますね・・・その前に身体を拭かないと」

 ふらふらと彷徨いながら独り言のように食事の準備を告げたアンナは、自分の身体を見下ろすとその汚れを落とそうと川へと足を向ける。
 彼女の瞳が前方の景色をまともに捉えているかは不確かだったが、運よく彼女の身体は川の方へと向かっていた。

「にゃー、アンナ帰ってきてたのにゃ!今日のお昼ご飯はなんにゃ?」
「・・・これ。取ってきたから、よかったら使って」

 アンナ達が帰ってきたのとは反対方向からやってきたティオフィラとエミリアは、彼女の姿を見つけると声を掛けてくる。
 お昼時の時間に期待の瞳を輝かせてアンナへと擦り寄っていくティオフィラは、彼女の周りをぐるぐる回りながら今日の献立を尋ねていた。
 どこかまだ気まずさを引きずっているエミリアは、取ってきたであろう鳥を差し出すと、ぶっきらぼうに顔を背ける。 

「・・・アンナ、どうしたのにゃ?」
「なに?もっと毟れって・・・ちょっと、アンナ!?」

 声を掛けてきた二人にもアンナは反応を示さずに、ふらふらと川へと向かっている。
 どこか様子のおかしい彼女にティオフィラが不安そうな声を上げると、エミリアも面倒くさそうにそちらへと顔を向けた。
 ある程度毟られた鳥の羽毛に、乱暴に引っ張って羽根が舞う。
 真っ直ぐに川へと向かい、その身体を水面へと沈めていく彼女の姿にエミリアが気づいたのは、彼女が足を滑らせるのと同時だった。

「アンナっ!?ティオ、手伝って!!」
「わ、分かったにゃ!」

 どうにかアンナの腕を捕まえたエミリアは、半分水面に顔をつけながらティオフィラへと救援を頼む。
 流れの速い川に彼女の身体を留めるだけで精一杯のエミリアは、ティオフィラの助けも借りて何とかアンナを地上へと引き上げる事に成功する。

「アンナ!!アンナ?・・・ちょっと、アンナ!?まずいっ!ティオ、クロードを呼んできて!すぐに!!」
「は、はいにゃ!!」

 地上へと引き上げたアンナの耳元で彼女の名を呼ぶエミリアは、あまりに反応ない彼女の様子に危機感を覚える。
 頬を叩きだしたエミリアはそれでも反応のないアンナに、ティオフィラへとクロードを呼んでくるように頼んだ。
 心配そうにアンナの顔を覗いていたティオフィラは、エミリアの焦った声に慌てて駆け出していく。

「ちょっと嘘でしょ、こんな事で・・・ん?これは・・・?」

 クロードの力であれば問題ないであろう状況も、止まらない焦燥感がエミリアの不安を掻き立てる。
 エミリアはアンナの肩を強く揺すると彼女の胸へと耳をつける、その心臓の鼓動を確かめたエミリアは、離れ際に別の音を耳にした。

「すーすー・・・えへへ、クロード様ぁ・・・それは違いますよぉ・・・それは私のぉ・・・」
「・・・もしかして、寝てるだけ?はぁ・・・アンナ、あんたって子は、心配させないでよね」

 アンナの幸せそうな寝言を一通り聞き終わったエミリアは、へなへなと力を失うようにして彼女の上へと崩れ落ちる。
 心配に文句を言う口もその端は笑っている、はっきりとした寝息を立て始めたアンナに、エミリアは彼女の鼻を指で弾いていた。

「エミリアー、にいやん連れてきたにゃ!!にいやん、早く早く!!」
「あー・・・もういいの、ごめんねティオ。そのなんて言ったらいいか・・・」

 まだ寝惚け眼で意識のはっきりとしていないクロードを、無理やり引っ張ってきたティオフィラは、かなり焦った様子で彼を急き立てている。
 その様子に困ったように頬に手を当てたエミリアは、この事態をどう説明していいかと頭を悩ませていた。
 川辺へと放置された鳥の死骸に、今日のお昼ご飯は遅くなりそうだった。
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