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希望はのんびりスローライフ
子供達の戦い 3
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森の奥深くに、剣戟と怒鳴りつけるような声が飛び交っていた。
今、ティオフィラの背中に迫ろうとしていたゴブリンは、クラリッサが首を跳ね飛ばす。
そのクラリッサを狙っていたハーピーを、エミリアが弓で射抜いて打ち落とした。
他の者達が対処し辛い空中の敵を狙うエミリアは無防備だ、彼女の身はアンナの強化魔法を受けたイダが守っていた。
「ほんっとに、きりがない!!クロード、こっちをお願い!!ティオが痛んでる!」
「だ、大丈夫にゃ!まだまだいけるにゃ!!」
「こんな時に強がってどうする!!おい、骨見えちゃってんじゃないか!?たくっ」
「にゃっ!?ご、ごめんなさいにゃぁ・・・」
エミリアの声に慌ててティオフィラに駆け寄ったクロードは、思ったよりもひどい状態の彼女に青い顔をした。
強がってみせる彼女も、怪我をした腕を引っ張られれば痛みに悲鳴も上げる。
ティオフィラの腕を掴んだクロードは早速能力を発動させる、彼が恐る恐る傷口を確認した時にはすでにそれは塞がっていた。
「クロード様、この子達もお願いします!!」
「クラリッサ、お前はいいのかっ!?」
「私はまだ戦えますから・・・エミリア!?」
ティオフィラを癒し終わったのを確認したクラリッサは、クロードに別の少年達の治療を任せる。
彼女自身も全身に傷を作っているのを見たクロードは、彼女を気遣う声を上げるが、彼女は取り合おうともしない。
彼女はそれよりも周りを気にして視線を巡らせている、その目はエミリアの危険を捉えていた。
「なに?うそっ!?」
森の木々の合間に覗くハーピーを狙っていたエミリアは、クラリッサの声に地上へと視線を戻す。
彼女の目の前には木々の間を飛び跳ねながら襲い掛かる、フォレストウルフの姿があった。
下ろした弓に腰から慌ててナイフを抜いても間に合わない、茶色がかった毛皮を持つ狼はその鋭い牙を覗かせていた。
「・・・させない!」
彼女の横合いから飛び出してきた小さな人影が、その大盾で狼を防いで地面へと叩きつける。
地面へと落ちて横になった狼はすぐに体勢を立て直そうとするが、その少女はそれを許さずに大盾を押し付けては地面へと縫いとめていた。
「イダ、助かったわ!止めは私が」
「・・・任せて」
危機一髪の状況を救ってもらったエミリアはほっと一息を吐くと、ナイフを戻して矢を弓へと番える。
彼女はイダが押さえつけている狼へと狙いをつけるが、イダは身体を傾けるとそれを遮った。
腰にぶら下げていたメイスを手に取った彼女は、何度も容赦なく狼の頭へとそれを振り下ろしていた。
「うわぁ・・・えげつないわね、私がやってもよかったのに」
「・・・勿体無い」
ぐったりとして動かなくなった狼に、イダはようやくメイスをしまって身体を起こす。
彼女の戦いぶりに若干引いた様子のエミリアは、自らの弓矢を彼女にアピールして見せるが、イダは静かに上を指差しただけだった。
イダは上空を今も舞っているハーピーに対処する方法が、エミリアの弓しかないと言いたいのだろう。
エミリアもそれには納得して、素直に上空へと弓を向ける。
しかし、はたしてそれは真実だろうか。
黒い人影が、木々の間を駆ける。
「イダ!こっちにゃ!!」
「・・・ティオ、止める」
木々の間を駆けてきたティオフィラが、イダへと声を掛けるとその場で飛び上がる。
制止の声を上げたイダも、彼女がすでに止まる気はないことは分かっていた。
「そりゃ!!にゃ、にゃ、にゃ、にゃー!!」
「・・・踏み台」
ティオフィラの意図を察したイダは、自らの大盾を地面へと突き立てると斜めに傾ける。
全速力で飛び込んできたティオフィラはそれを蹴りつけると、大きく飛び上がり周辺の木々に飛びついては、どんどん上へと駆け上がっていく。
後にはその衝撃で地面へと転がった、イダだけが残されていた。
「とりゃーーー!!!」
「キィィィィィ!!?」
木々の間を飛び移りながら、かなり高い位置まで上ったティオフィラは、獲物を狙うために低い所まで降りてきていたハーピーへと飛び掛る。
「にゃにゃにゃにゃ、にゃー!!」
「グギィッ!!?」
空中でもつれ合いながら落ちてくるティオフィラとハーピーは、その身体のあちこちを木々の葉や枝にぶつけ続ける。
ランダムな回転に、ティオフィラがハーピーを地面へと叩きつけられたのは偶然だろうか。
二人分の衝撃を受け止めたハーピーは、断末魔の叫びを上げて絶命していた。
「ティオフィラ!お前またっ!!」
「ごめんにゃ、にいやん。助けて欲しいにゃ」
ハーピーを下敷きにしたとはいえ、落下の衝撃を全て無効に出来るわけもない。
絶命したハーピーの横に転がったティオフィラは、もはや自力では立てそうもない状況だった。
慌てて駆け寄ったクロードによって癒された彼女は、すぐに全身のばねを生かして起き上がっていた。
「リーンフォース・アーマー・・・先に掛けとけばよかった、ごめんねティオ」
「気にしないにゃ、アンナ!これでもっと頑張れるにゃぁ!!」
「あ、おい!待てって!!」
起き上がったティオフィラを薄い光が包む、彼女に強化魔法を掛けたアンナが申し訳なさそうに声を掛けてきていた。
衝撃によるダメージならばその魔法である程度軽減できる、彼女の声は防げた痛みへの罪悪感で満ちていたが、ティオフィラはあっけらかんと笑い飛ばしてみせる。
彼女はそのまま走り出そうとするが、まだ状態が心配だったクロードによって首根っこを捕まえられて、つんのめっていた。
「皆、静かにして!!」
「ほら、言われてんぞ」
「にゃ~、ティオの事じゃないにゃ」
「二人とも、しっ!」
クラリッサの声に、そのピコピコとよく動く耳を寝かせたティオフィラは、明後日の方向を向いて知らん顔を決め込む。
そんな彼女も指名されて叱責されれば、大人しく身体を縮めてクロードの影に隠れてしまう。
「何か・・・様子がおかしくない?エミリア、あなたは何か気づかない?」
「確かに攻撃が・・・ちょっと待って、遠くから何か聞こえない?」
姿勢を低くしているクラリッサに従って、周りの者達も皆地面に手をついていた。
彼女は頻りに周りの様子を窺っている、彼女に声を掛けられたエミリアもそれに習って頭を左右に動かした。
エミリアのその長い耳が僅かに揺れる、彼女は何かを捉えたようだ。
「歓声・・・これは、人間の歓声!!クラリッサ!!」
「待って、私にも聞こえた・・・間違いない、おじ様達がやったのよ!!!」
エミリアは聞こえた音を分析するように、耳に手を当てて静かに瞳を動かしている、彼女が呟いた声は喜びの予感に震えていた。
確信に叫んだエミリアはクラリッサへと呼び掛ける、彼女も自分の耳を澄ませるとその音を掴まえた。
二人が聞いたのは人間の歓声、それも拳を突き上げるような喜びの雄叫びだ。
「お父様が・・・良かった、本当に・・・」
「なんにゃ、何があったのにゃ?泣いてるのにゃ、アンナ?」
「・・・やたっ」
トゥルニエ達の勝利を確信した二人は、抱き合って喜び合う。
彼女達の姿に、周りの者達も徐々にその事実を理解していく。
その事実に一番喜んだのはアンナだろうか、彼女は静かに涙を流しては、噛み締めるように歓喜を味わっている。
状況が良く分からずに、急に泣き出したアンナの肩を揺すっているティオフィラの横で、イダが小さくガッツポーズをしていた。
「それで、次はどうするんだ?」
「そうですね・・・指揮官をやられた事で彼らが本当に撤退するかどうか分からないので、このまま逃げた方がいいんですが・・・今の内に村に戻っても、う~ん」
一人冷静なクロードが、今後の行動についてクラリッサに問い掛ける。
当初の予定としては、万が一に備えてこのまま逃げる筈であったが、漂ってくる勝利の気配にクラリッサは判断を迷わせていた。
彼女もすぐには決断を下せない、その周りからは歓喜の声が次々に上がっていた。
今、ティオフィラの背中に迫ろうとしていたゴブリンは、クラリッサが首を跳ね飛ばす。
そのクラリッサを狙っていたハーピーを、エミリアが弓で射抜いて打ち落とした。
他の者達が対処し辛い空中の敵を狙うエミリアは無防備だ、彼女の身はアンナの強化魔法を受けたイダが守っていた。
「ほんっとに、きりがない!!クロード、こっちをお願い!!ティオが痛んでる!」
「だ、大丈夫にゃ!まだまだいけるにゃ!!」
「こんな時に強がってどうする!!おい、骨見えちゃってんじゃないか!?たくっ」
「にゃっ!?ご、ごめんなさいにゃぁ・・・」
エミリアの声に慌ててティオフィラに駆け寄ったクロードは、思ったよりもひどい状態の彼女に青い顔をした。
強がってみせる彼女も、怪我をした腕を引っ張られれば痛みに悲鳴も上げる。
ティオフィラの腕を掴んだクロードは早速能力を発動させる、彼が恐る恐る傷口を確認した時にはすでにそれは塞がっていた。
「クロード様、この子達もお願いします!!」
「クラリッサ、お前はいいのかっ!?」
「私はまだ戦えますから・・・エミリア!?」
ティオフィラを癒し終わったのを確認したクラリッサは、クロードに別の少年達の治療を任せる。
彼女自身も全身に傷を作っているのを見たクロードは、彼女を気遣う声を上げるが、彼女は取り合おうともしない。
彼女はそれよりも周りを気にして視線を巡らせている、その目はエミリアの危険を捉えていた。
「なに?うそっ!?」
森の木々の合間に覗くハーピーを狙っていたエミリアは、クラリッサの声に地上へと視線を戻す。
彼女の目の前には木々の間を飛び跳ねながら襲い掛かる、フォレストウルフの姿があった。
下ろした弓に腰から慌ててナイフを抜いても間に合わない、茶色がかった毛皮を持つ狼はその鋭い牙を覗かせていた。
「・・・させない!」
彼女の横合いから飛び出してきた小さな人影が、その大盾で狼を防いで地面へと叩きつける。
地面へと落ちて横になった狼はすぐに体勢を立て直そうとするが、その少女はそれを許さずに大盾を押し付けては地面へと縫いとめていた。
「イダ、助かったわ!止めは私が」
「・・・任せて」
危機一髪の状況を救ってもらったエミリアはほっと一息を吐くと、ナイフを戻して矢を弓へと番える。
彼女はイダが押さえつけている狼へと狙いをつけるが、イダは身体を傾けるとそれを遮った。
腰にぶら下げていたメイスを手に取った彼女は、何度も容赦なく狼の頭へとそれを振り下ろしていた。
「うわぁ・・・えげつないわね、私がやってもよかったのに」
「・・・勿体無い」
ぐったりとして動かなくなった狼に、イダはようやくメイスをしまって身体を起こす。
彼女の戦いぶりに若干引いた様子のエミリアは、自らの弓矢を彼女にアピールして見せるが、イダは静かに上を指差しただけだった。
イダは上空を今も舞っているハーピーに対処する方法が、エミリアの弓しかないと言いたいのだろう。
エミリアもそれには納得して、素直に上空へと弓を向ける。
しかし、はたしてそれは真実だろうか。
黒い人影が、木々の間を駆ける。
「イダ!こっちにゃ!!」
「・・・ティオ、止める」
木々の間を駆けてきたティオフィラが、イダへと声を掛けるとその場で飛び上がる。
制止の声を上げたイダも、彼女がすでに止まる気はないことは分かっていた。
「そりゃ!!にゃ、にゃ、にゃ、にゃー!!」
「・・・踏み台」
ティオフィラの意図を察したイダは、自らの大盾を地面へと突き立てると斜めに傾ける。
全速力で飛び込んできたティオフィラはそれを蹴りつけると、大きく飛び上がり周辺の木々に飛びついては、どんどん上へと駆け上がっていく。
後にはその衝撃で地面へと転がった、イダだけが残されていた。
「とりゃーーー!!!」
「キィィィィィ!!?」
木々の間を飛び移りながら、かなり高い位置まで上ったティオフィラは、獲物を狙うために低い所まで降りてきていたハーピーへと飛び掛る。
「にゃにゃにゃにゃ、にゃー!!」
「グギィッ!!?」
空中でもつれ合いながら落ちてくるティオフィラとハーピーは、その身体のあちこちを木々の葉や枝にぶつけ続ける。
ランダムな回転に、ティオフィラがハーピーを地面へと叩きつけられたのは偶然だろうか。
二人分の衝撃を受け止めたハーピーは、断末魔の叫びを上げて絶命していた。
「ティオフィラ!お前またっ!!」
「ごめんにゃ、にいやん。助けて欲しいにゃ」
ハーピーを下敷きにしたとはいえ、落下の衝撃を全て無効に出来るわけもない。
絶命したハーピーの横に転がったティオフィラは、もはや自力では立てそうもない状況だった。
慌てて駆け寄ったクロードによって癒された彼女は、すぐに全身のばねを生かして起き上がっていた。
「リーンフォース・アーマー・・・先に掛けとけばよかった、ごめんねティオ」
「気にしないにゃ、アンナ!これでもっと頑張れるにゃぁ!!」
「あ、おい!待てって!!」
起き上がったティオフィラを薄い光が包む、彼女に強化魔法を掛けたアンナが申し訳なさそうに声を掛けてきていた。
衝撃によるダメージならばその魔法である程度軽減できる、彼女の声は防げた痛みへの罪悪感で満ちていたが、ティオフィラはあっけらかんと笑い飛ばしてみせる。
彼女はそのまま走り出そうとするが、まだ状態が心配だったクロードによって首根っこを捕まえられて、つんのめっていた。
「皆、静かにして!!」
「ほら、言われてんぞ」
「にゃ~、ティオの事じゃないにゃ」
「二人とも、しっ!」
クラリッサの声に、そのピコピコとよく動く耳を寝かせたティオフィラは、明後日の方向を向いて知らん顔を決め込む。
そんな彼女も指名されて叱責されれば、大人しく身体を縮めてクロードの影に隠れてしまう。
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エミリアのその長い耳が僅かに揺れる、彼女は何かを捉えたようだ。
「歓声・・・これは、人間の歓声!!クラリッサ!!」
「待って、私にも聞こえた・・・間違いない、おじ様達がやったのよ!!!」
エミリアは聞こえた音を分析するように、耳に手を当てて静かに瞳を動かしている、彼女が呟いた声は喜びの予感に震えていた。
確信に叫んだエミリアはクラリッサへと呼び掛ける、彼女も自分の耳を澄ませるとその音を掴まえた。
二人が聞いたのは人間の歓声、それも拳を突き上げるような喜びの雄叫びだ。
「お父様が・・・良かった、本当に・・・」
「なんにゃ、何があったのにゃ?泣いてるのにゃ、アンナ?」
「・・・やたっ」
トゥルニエ達の勝利を確信した二人は、抱き合って喜び合う。
彼女達の姿に、周りの者達も徐々にその事実を理解していく。
その事実に一番喜んだのはアンナだろうか、彼女は静かに涙を流しては、噛み締めるように歓喜を味わっている。
状況が良く分からずに、急に泣き出したアンナの肩を揺すっているティオフィラの横で、イダが小さくガッツポーズをしていた。
「それで、次はどうするんだ?」
「そうですね・・・指揮官をやられた事で彼らが本当に撤退するかどうか分からないので、このまま逃げた方がいいんですが・・・今の内に村に戻っても、う~ん」
一人冷静なクロードが、今後の行動についてクラリッサに問い掛ける。
当初の予定としては、万が一に備えてこのまま逃げる筈であったが、漂ってくる勝利の気配にクラリッサは判断を迷わせていた。
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