上 下
9 / 21

クラス代表と予想外のアスリート

しおりを挟む


教室にはざわめきと笑い声が響き渡っていた。学生たちは黒板に書かれた数学の問題を写し終え、次の発表を待ち望んでいる。クラス代表の早乙女絆(さおとめ きずな)は、最前列の席から立ち上がり、いつもの明るい笑顔を見せた。

絆: 「みんな、注目して!次の先生が来る前に、今年の運動会について話し合わないといけないの。」

生徒たちは興味津々で彼女の方に顔を向けた。絆の話し方には、どんなに退屈なテーマでも魅力的に聞かせる力があった。

絆: 「ご存じの通り、クラスごとに運動競技の代表を選ばなければなりません。速くて、強くて、競技で目立てる人が必要です。」

生徒A: 「それって運動部がやることじゃないの?なんで私たちまで?」

絆: 「だって、これは学校行事だから!クラスの団結力を見せるいい機会だし、それに、勝てば賞品もあるのよ!」

窓際に座っていた優(ゆう)はため息をつきながら外を見つめた。

優(心の声): 絶対巻き込まれたくない…

しかし、彼が目立たずに済むと思った瞬間、クラスの誰かが手を挙げた。

生徒B: 「新入生の奏(かなで)はどう?体力ありそうだし、ぴったりじゃない?」

全員が奏の方を向くと、彼女は困惑した表情を浮かべていた。

奏: 「えっ?運動競技?それって何?」

教室は笑い声に包まれた。絆が彼女の机に近づき、優しい笑みを浮かべながら少し身を乗り出した。

絆: 「運動競技っていうのはね、短距離走やジャンプ、投擲とかの体を使う競技よ。やったことないの?」

奏(瞬きをしながら): 「ううん。でも面白そう。具体的には何をすればいいの?」

優は冷や汗が背中を伝うのを感じ、慌てて手を挙げた。

優: 「それってかなり大変じゃない?もっと経験のある人を選んだ方がいいんじゃない?」

しかし、絆は彼の意見を無視し、嬉しそうに話を続けた。

絆: 「奏、きっと素晴らしいパフォーマンスを見せてくれるわ!ハードル競争とか、走り幅跳びなんかどう?持ち前の力と速さを活かせば大丈夫よ。」

奏は考え込むように首を傾げ、みんなが期待の目で見つめる中、ついに笑顔を見せた。

奏: 「みんながそう思うなら、やってみる!」

教室は拍手と歓声で沸き立ち、自信満々の奏に期待が高まった。しかし、優は机に額をつけて深いため息をついた。

優(心の声): 絶対ろくなことにならない…


---


発表が終わり、優は奏に近づき、荷物をまとめている彼女に声をかけた。

優: 「本当にわかってるのか?何に首を突っ込んでるのか。」

奏(微笑みながら): 「どうしてダメなの?面白そうじゃない。それに、優がいつも言ってるでしょ?この世界に慣れるべきだって。」

優: 「それはそうだけど、人間相手の運動競技に参加するなんて…危ないだろ?もし、うっかり力を使ったらどうするんだよ。」

奏は不思議そうに首をかしげた。

奏: 「そんなこと起きないと思うよ。ただ抑えればいいんでしょ?」

優: 「それが心配なんだよ。君、抑えるのが苦手だろ。」

奏: 「大丈夫だって、優。信じてよ。簡単でしょ?」

優は説得を諦めたように深いため息をついた。

優(ぼそっと): 「誰かが宙に浮いたり、何かが爆発したりしたら君の責任だからな。」

奏は肩をすくめ、気楽そうに笑った。

奏: 「そうなったら、説明は優に任せるね。君、話を作るの得意でしょ?」

優: 「それは褒められることじゃない!」

その時、絆が二人の横を通りかかり、明るい笑顔を見せた。

絆: 「奏、あなたならきっと素晴らしい活躍を見せてくれるわ。クラスを代表してくれてありがとう!」

奏: 「全力を尽くすよ!」

優(心の声): 絶対に何か起こる…


---

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

処理中です...