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第4部 「摩天楼の決戦編」
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29話
「もういいよ、喋んなくていいから。今すぐ黙らせてやるから!」
「フフッ♪ じゃあ有言実行してもらおうかなぁッ!!」
バリバリッ
遊馬は人差し指から白く光る電撃を放つ。
桐生はタイミングを上手く見つけて回避する。
そのサイクルを繰り返す。
いつまでも電撃を避けるので精一杯の桐生に対し、遊馬は遠くからただ人差し指を桐生に向けて電気を放ち続ければいいだけなので、どちらがより早く体力を消耗するかなんてのは言わずもがなである。
「はぁ、はぁ・・。テメェもいい加減動けよ・・。」
「やっだよーー。だって疲れちゃうでしょー?」
桐生の能力は"相手に直接触れないと"発動しない。 つまり近接戦闘向きである。 それに対して遊馬は遠くから電撃を撃つだけの遠隔戦向きだ。
「 ・・らいなね。さっき人殺しが楽しいから戦ってるって言ったけど、戦いが好きな理由はもう一つあるの。それはね、『他人が一生懸命積み重ねてきた努力を簡単に、それでいて一瞬でぶち壊すことが出来る』から。
らいなの電撃さえあれば、例え相手が早かろうと鍛えていようと背が高かろうと、全てのハンデを塗り潰すことができる。
そしてらいなの電撃によってねじ伏せられた馬鹿どもの苦痛と悔恨の表情を拝めること。これ以上の娯楽はないね!
らいなにはこの電撃がある。どんな敵をも一瞬で葬り去るこの力があれば、最早らいなは
世界最強同然!! らいなに逆らえる奴はこの世のどこにもいな、 」
バキィッ!!
「ほぇ?」
遊馬から素っ頓狂な声が出た。
一瞬何があったのか理解が追いつかなかった。
遊馬はなぜか地面に仰向けになっていた。 目に映っているのは塔の天井だけだ。
おかしい。
桐生は確かに自分の電撃によって体力が消耗していたはずなのに。
おかしい。
何故か頰の辺りが痛い。口からはたらりと、一筋の鮮血が垂れている。
遊馬は口元の血を手で拭い取りしばらく見つめる。
「あ・・れ。らいな・・、ぶっ飛ばされたの・・?」
辛うじて上体のみを起こし、前方を見てみる。 そこには固く握られた拳を前に突き出して立ち尽くしている少年の姿があった。
「あは、あはは・・。おかしいな・・。」
遊馬は今でも信じられない。 桐生はやがて地面を寝っ転がっている遊馬の元にやってくる。 そして今度は桐生が遊馬を見下すようにして喋る。
「・・・俺はさ、実を言うと怖くないんだ。お前みたいな能力ばかりに依存してる類の奴って。そういう奴は戦いのどっかで油断するからさ。そう思った瞬間、お前のことが途端に弱くみえたんだ。 いや、むしろ可哀想に見えてきた。」
まるで虫ケラを見るような目で視線を浴びせてくる桐生に対して、遊馬はまだ理解ができていなかった。
「分からないよ・・。」
「だってそんな・・、おかしいよ。
らいなの電撃を喰らったら暫くは行動不能に陥るんだよ? 下手したら死んじゃうんだよ?
それなのになんで立ってられるの?」
桐生は呆れたようにため息をつく。
「分からないのか? まあ無理もないか。お前みたいな人間には一生分からないだろうな。」
「な・・に?」
「お前のその雷撃は確かに強い。いや、無敵と言っても過言じゃない。 けどな。お前のやっているそれは『戦闘』じゃない。ただの『人殺し』だ。
その力の威力が強すぎるが故にお前は『屠殺』を『戦闘』だと錯覚してしまった。」
「可哀想な目をして・・・、このらいなを、らいなを・・ッ!! 馬鹿にすんじゃねェよこのクソザコがぁああああああ!!」
遊馬の口調は先程までに比べて豹変していた。
遊馬の指先から最大出力の雷撃が桐生めがけて繰り出される。 そして攻撃は直撃した。
直撃したはずなのに・・。
「倒れないッ!?」
桐生は電撃を喰らっても平然として立っていた。身体中がボロボロになっているのにも関わらず。
「・・痛くねぇんだよ。 テメエの『弱さ』に気付いちまったせいでな・・!」
遊馬・桐生間の距離は五メートル程である。
「ふんっ♪ならばもう一度 "雷電の拳" で・・」
拳を握り銀のグローブに雷を集約させる遊馬。
「早くッ、早くチャージをッ・・!!」
しかし焦りからか遊馬の体から平常通りの電力が働かない。
その瞬間だった。
シュンッという音が遊馬の耳に入った瞬間
蹴りを放った桐生の靴底が目に映った。
ドガッッ!!
「ぶふゥッ・・・!」
遊馬の身体は高く打ち上げられ、そのまま頭から地面に墜落した。
「そんな・・。らいなの・・負け・・?」
遊馬は地面に沈んだまま、目と口は開きっぱなしだった。彼女の頭はまだ脳内処理が追いついていなかった。
「ああそうだ。 そしてお前は立ち上がる土俵を間違えた。」
桐生は自らの勝利を確信する。
「そうか。これが"敗北" というものなんだね・・・。」
遊馬はやがて目を閉じ、全身から力が抜ける。
ビーーーーーーーッ
『試合終了!! 準々決勝を制したのは桐生選手です!!!』
桐生は体についた埃を軽く払い、振り返る。
するとそこには予想外な人物が立っていた。
「お前、なんでここに!?」
その少年は緑のコートに革靴を履いた宿敵だった。
「君は僕を見るたびに一々驚くんだね。」
一ノ瀬佑太郎だ。
「お前確か今日コンビニのバイトの日だったんじゃ・・。」
「ああ、クビにされた。」
「即答かよ!! 」
「だから一日暇になってしまってね。 君の試合を見物させてもらったってわけさ。」
「なんでお前はいっつも上から目線なんだよ。」
「・・しっかしそれにしてもさっきの少女ときたら実に醜いね。 」
一ノ瀬はそっけなく誤魔化す。
「ああ。それについては同意だ。お前と意見が合うなんて一生無いと思ってたがな。」
「人を殺すだけしか能の無い戦士なんて三流以下だね。 僕のようなある程度の美意識を備えた人間じゃないと、 高みを目指す事など出来やしないさ。 折角の彼女の端麗な容姿が勿体無いくらいだ。」
「自分で言うか?それ・・」
「兎にも角にも残りの試合、と言ってももう僅かだが、せいぜい僕を失望させないでくれよ。」
「もとよりそんなつもりは無いさ。」
"宿敵"は言うだけ言ってワープの能力で観客席に戻っていった。
優勝まであと・・・ 二戦!
To Be continued..
「もういいよ、喋んなくていいから。今すぐ黙らせてやるから!」
「フフッ♪ じゃあ有言実行してもらおうかなぁッ!!」
バリバリッ
遊馬は人差し指から白く光る電撃を放つ。
桐生はタイミングを上手く見つけて回避する。
そのサイクルを繰り返す。
いつまでも電撃を避けるので精一杯の桐生に対し、遊馬は遠くからただ人差し指を桐生に向けて電気を放ち続ければいいだけなので、どちらがより早く体力を消耗するかなんてのは言わずもがなである。
「はぁ、はぁ・・。テメェもいい加減動けよ・・。」
「やっだよーー。だって疲れちゃうでしょー?」
桐生の能力は"相手に直接触れないと"発動しない。 つまり近接戦闘向きである。 それに対して遊馬は遠くから電撃を撃つだけの遠隔戦向きだ。
「 ・・らいなね。さっき人殺しが楽しいから戦ってるって言ったけど、戦いが好きな理由はもう一つあるの。それはね、『他人が一生懸命積み重ねてきた努力を簡単に、それでいて一瞬でぶち壊すことが出来る』から。
らいなの電撃さえあれば、例え相手が早かろうと鍛えていようと背が高かろうと、全てのハンデを塗り潰すことができる。
そしてらいなの電撃によってねじ伏せられた馬鹿どもの苦痛と悔恨の表情を拝めること。これ以上の娯楽はないね!
らいなにはこの電撃がある。どんな敵をも一瞬で葬り去るこの力があれば、最早らいなは
世界最強同然!! らいなに逆らえる奴はこの世のどこにもいな、 」
バキィッ!!
「ほぇ?」
遊馬から素っ頓狂な声が出た。
一瞬何があったのか理解が追いつかなかった。
遊馬はなぜか地面に仰向けになっていた。 目に映っているのは塔の天井だけだ。
おかしい。
桐生は確かに自分の電撃によって体力が消耗していたはずなのに。
おかしい。
何故か頰の辺りが痛い。口からはたらりと、一筋の鮮血が垂れている。
遊馬は口元の血を手で拭い取りしばらく見つめる。
「あ・・れ。らいな・・、ぶっ飛ばされたの・・?」
辛うじて上体のみを起こし、前方を見てみる。 そこには固く握られた拳を前に突き出して立ち尽くしている少年の姿があった。
「あは、あはは・・。おかしいな・・。」
遊馬は今でも信じられない。 桐生はやがて地面を寝っ転がっている遊馬の元にやってくる。 そして今度は桐生が遊馬を見下すようにして喋る。
「・・・俺はさ、実を言うと怖くないんだ。お前みたいな能力ばかりに依存してる類の奴って。そういう奴は戦いのどっかで油断するからさ。そう思った瞬間、お前のことが途端に弱くみえたんだ。 いや、むしろ可哀想に見えてきた。」
まるで虫ケラを見るような目で視線を浴びせてくる桐生に対して、遊馬はまだ理解ができていなかった。
「分からないよ・・。」
「だってそんな・・、おかしいよ。
らいなの電撃を喰らったら暫くは行動不能に陥るんだよ? 下手したら死んじゃうんだよ?
それなのになんで立ってられるの?」
桐生は呆れたようにため息をつく。
「分からないのか? まあ無理もないか。お前みたいな人間には一生分からないだろうな。」
「な・・に?」
「お前のその雷撃は確かに強い。いや、無敵と言っても過言じゃない。 けどな。お前のやっているそれは『戦闘』じゃない。ただの『人殺し』だ。
その力の威力が強すぎるが故にお前は『屠殺』を『戦闘』だと錯覚してしまった。」
「可哀想な目をして・・・、このらいなを、らいなを・・ッ!! 馬鹿にすんじゃねェよこのクソザコがぁああああああ!!」
遊馬の口調は先程までに比べて豹変していた。
遊馬の指先から最大出力の雷撃が桐生めがけて繰り出される。 そして攻撃は直撃した。
直撃したはずなのに・・。
「倒れないッ!?」
桐生は電撃を喰らっても平然として立っていた。身体中がボロボロになっているのにも関わらず。
「・・痛くねぇんだよ。 テメエの『弱さ』に気付いちまったせいでな・・!」
遊馬・桐生間の距離は五メートル程である。
「ふんっ♪ならばもう一度 "雷電の拳" で・・」
拳を握り銀のグローブに雷を集約させる遊馬。
「早くッ、早くチャージをッ・・!!」
しかし焦りからか遊馬の体から平常通りの電力が働かない。
その瞬間だった。
シュンッという音が遊馬の耳に入った瞬間
蹴りを放った桐生の靴底が目に映った。
ドガッッ!!
「ぶふゥッ・・・!」
遊馬の身体は高く打ち上げられ、そのまま頭から地面に墜落した。
「そんな・・。らいなの・・負け・・?」
遊馬は地面に沈んだまま、目と口は開きっぱなしだった。彼女の頭はまだ脳内処理が追いついていなかった。
「ああそうだ。 そしてお前は立ち上がる土俵を間違えた。」
桐生は自らの勝利を確信する。
「そうか。これが"敗北" というものなんだね・・・。」
遊馬はやがて目を閉じ、全身から力が抜ける。
ビーーーーーーーッ
『試合終了!! 準々決勝を制したのは桐生選手です!!!』
桐生は体についた埃を軽く払い、振り返る。
するとそこには予想外な人物が立っていた。
「お前、なんでここに!?」
その少年は緑のコートに革靴を履いた宿敵だった。
「君は僕を見るたびに一々驚くんだね。」
一ノ瀬佑太郎だ。
「お前確か今日コンビニのバイトの日だったんじゃ・・。」
「ああ、クビにされた。」
「即答かよ!! 」
「だから一日暇になってしまってね。 君の試合を見物させてもらったってわけさ。」
「なんでお前はいっつも上から目線なんだよ。」
「・・しっかしそれにしてもさっきの少女ときたら実に醜いね。 」
一ノ瀬はそっけなく誤魔化す。
「ああ。それについては同意だ。お前と意見が合うなんて一生無いと思ってたがな。」
「人を殺すだけしか能の無い戦士なんて三流以下だね。 僕のようなある程度の美意識を備えた人間じゃないと、 高みを目指す事など出来やしないさ。 折角の彼女の端麗な容姿が勿体無いくらいだ。」
「自分で言うか?それ・・」
「兎にも角にも残りの試合、と言ってももう僅かだが、せいぜい僕を失望させないでくれよ。」
「もとよりそんなつもりは無いさ。」
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