求めていた俺

メズタッキン

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第2部 「四色の聖者編」

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11話



夏休み。現在午後一時で気温は約三十三℃と灼熱地獄の中、桐生は汗をダラダラかきながら道を歩いていた。 理由は、家の冷蔵庫がぶっ壊れたため飲み物を確保しなければならなくなったから・・・てのは建前で、突然はぐれた白石を探すためである。お隣で歩く中学生くらいの青髪の少年サファイはなぜか猛烈な暑さの中ケロッとしていた。 サファイとは元四刹団のメンバーで、当初は桐生の命を狙うポジションだったが、なんだかんだあって今では仲間に加わり、桐生を取り巻く日常にも浸透しつつある。

「お前、平気なのかよこの暑さ。」

「平気だよ。僕はこれでも水属性の聖者だからね。体内で常に水分を生成してるからいくら汗をかいても熱中症とか水分不足になる恐れはないんだ。」

「じゃあ、俺にも水分けてくれよ。」

「ダ、ダメだよ!僕が作った水は僕のものだからね!」

「チッ。」

桐生は軽く舌打ちした。

「あ。桐生!ちょうどいいところにいたもー。」

すると何やら前方からボリューミーな腹を揺らし、麦わら帽子をかぶりリュックサックを背負い、虫取りカゴと虫取り網を持った「ザ・夏休み」な肥満体がこちらに向かって走ってきた。

「おう、なんだ敷島。相変わらずテンション高いな」

「ジャーン!これを見るもー!!」

「?」

敷島がポケットから取り出して桐生の顔前に差し出したのは汗でグッシャグシャになった紙切れだった。よくよく見るとそこには
《夏のアツイ思い出に!登山ツアー 限定チケット》 と書かれていた。

「登山ツアーのチケット?どこでどうやって手に入れたんだよ。」

「道端で拾った。」

「っ!?」

思わずずっこける桐生。

興奮で鼻息が荒くなっていく敷島。どうやらよほど登山に憧れてたらしい。

「で、ちょうどチケットは四人分落ちてたもー!」

「4人・・か。メンバーは決まってんのか?」

「もちろんだもー!オイラとマナトでしょ?後、桐生と白石。」

指を一本ずつ折って人数を確認していた敷島だが、ふとあることに気づく。

「あれ?白石は一緒にいないのかもー?普段よくニ人でいるじゃないか。」

「あ。あーいやーその・・。喧嘩しちゃって・・」

【白石茜は失踪した】って事実は今の所は隠しておくことにした。

「それは大変もー!!しばらくは口を聞けないってことかもー?」

「まあな。」

「それじゃあ一人分余っちゃうもー。折角チケットは4枚あるのに・・。」

「じゃあ、コイツを連れてっていいか?」

桐生が顎で指し示したのは、そのとなりにいる青い髪で青い服の少年だった。

「ん?だれだもー、このちっこいガキは。」

「ガキじゃねえやい!僕は水の聖者サファイだ!!」

サファイは自分より背の高い敷島を下から睨見つける。

「はっはっは。元気があっていいもー!気に入った。じゃあ四人めはこの子に決定だもー! ツアーは二日後。集合場所は『チャーハン山』で、集合時間は朝六時だもー。寝坊すんなもー。」

それだけ言い残して敷島はどこかに去って行ってしまった。


そしてチャーハン山の登山ツアー当日!!

登山ツアー一行は、山の麓で待機していた。
なんと驚いたことに桐生含める四人以外のお客が一人もいなかった。しかも空は曇り始めてる。

「マジかよ・・」

大きなため息をついて落胆している桐生たち四人にはお構いなしに、ツアーのガイドと思われる二十代の制服の女性がマイクを持って明るい笑顔で朗らかに山の案内を始めだした。

「こちらに見えるのが、チャーハン山です!では、皆さん!頂上目指して元気にのぼっていきましょー!」

ガイドの女は四人をとり残すように山の中へずんずんと進んでいってしまった。

「僕たち・・ 置き去り・・」
存在感が激薄の栗山マナトがボソっと呟く。

「みんな、登山はこれからだもー!がっかりするのは早いもー!頂上から見た景色はそりゃあもー絶景に違いないもー!」

「あ、ああそうだな。」

敷島が三人を取り仕切るような形で縦一列になり山を登ることになった。

そして三分後。

「あれ?」

桐生は異変を感じ取った。
なんと、麓から歩きだしてたったの三分で頂上に到達してしまったのだ。

「おかしいな。確かに麓から見たときは標高二千メートル位の山に見えたけど・・」

サファイが言う。

すると背後から女の低い声が聞こえた。桐生の背中がぞくっと、寒気を覚えた。

「見事に騙されたな!桐生よ。」

バッと、声のした方向を振り返るとそこには全身グリーンの忍者服のような装束を着た若い女がいた。覆面で鼻から下が隠されているためこちらを睨みつける鋭い目しか確認できない。

「クノー(くのいち)か!!」

「ただのクノーではないぞ!私はお前を殺す ためにやってきた、『四刹団』の一人『エメラルダス』。幻術を主に操る聖者である!」

よくよく観察すると覆面から覗く女の目元と声質がさっきまでいたガイドの女性のものと似ていた。

「お前、まさか俺たちを最初から嵌めやがったな!?」

「今頃気がつくとはどんだけマヌケなのよ。そこのデブが拾ったチケットも、私が前もって道端にバラしておいた物よ。あんたたちをこちら側のフィールドに誘導するためにね。」

「チャーハン山」なんてのも、エメラルダスが作り出した人口の山である。標高を高く見せかけたのも当然彼女の幻術によるものだ。

桐生は尋ねる。

「お前らの目標は俺なんだよな。じゃあ他のみんなは絶対巻き込まないんだな!」

「ええ。勿論。あくまで私達のゴールはこの世の道理を乱すあなたの摩訶不思議な力を滅ぼすことなんだから。」

「お前らはいけ!」

桐生は戦いに巻き込まないよう、サファイと敷島とマナトを近くの茂みに避難させる。

この時エメラルダスは見逃さなかった。茂みに隠れようとした三人の中に、本来自分達の仲間であるはずの少年が紛れていたことを。

エメラルダスは叫ぶ。

「サファイ!!あんた我々を裏切ったのね!?」

ビクウッと、ビビリの少年サファイは両肩を震わせた。

「だって・・エメラルダス姐さんにお尻ペンペンされるのは嫌だもん。桐生達と一緒にいた方が楽しいもん・・。」

気弱な態度を保ちつつも、前いた組織にはあくまで戻りたくない!と意思表示をするサファイ。

「まあ、いいわ。桐生を殺したらあんたも捕まえて死ぬまでお尻を叩けばいい話だし。そうよねえ、桐生?」

「テメエ・・。」

「それとね、今回は私一人じゃないのよ。」

「フォッフォッフォッ。どうやらわしの出番じゃの。」

エメラルダスに遅れてやってきたのは全身黄色い装束を纏い、腰の高さぐらいの木の杖を持つ老人だった。その声はしわがれていた。

「誰だ?このジジイは?」

「このジジイの名は『トパズーリ』。私達と同じく四刹団のメンバーで最年長よ!このジジイの恐ろしい能力は、『木の杖から放たれる光線を浴びたものは一瞬で金に変わってしまう』というものよ。」

「若いおなごにジジイって連呼されるとなんか照れちゃうのぉ。」

「う、うるさいっ!てかジジイのくせにどんな性癖してんのよ!このジジイ!」

顔を赤らめ地団駄を踏み老人トパズーリに怒るクノー、エメラルダス。

そのなんともシュールな光景を前にして桐生は思った。

(はあ~、なんで俺ってこんなヘンテコな奴らばっかりに狙われるんだろう・・)

To be continued..
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