87 / 121
10
しおりを挟む
※明けましておめでとうございます
「っは、くそっ……無駄に体力備えやがって……」
「伊達に主席入学してねぇっつーことだ。まあ、一生懸命俺に追いつこうとするお前は可愛かったがな」
呼吸を整える俺の横で西連寺は涼しい顔で答える。俺の出せるスピードを出し切って進んだのに易々と俺に合わせやがって……しかも途中から立場が逆転して西連寺に主導権を握られてしまい、俺が西連寺について行く側になっていた。
「さすが3Sが誇るツートップのお二人!!」
「めちゃめちゃ早かった!!」
「これは絶対勝ったわ、競技的にも絵面的にも」
俺たちが張り合っていたことなど知らないクラスメイトが盛り上がっている中、俺は悔しくて仕方なかった。
絶対にみんなの目の前でバランスを崩してやろうと思ったのに……運動神経万能め。
「顔上げろ」
命令されて、俺はムッとしながらそっぽを向いた。仕返しもできないし、勝てないしこうなったらもう幼稚かもしれないが無視しかない。
しかし、それは次の瞬間には全く無意味になる。西連寺が俺の顎を掬って無理やり上を向かせたからだ。まだ息が荒かった俺は呼吸を繰り返しながら西連寺の真紅の目と対峙することになった。西連寺がごくりと喉を鳴らした。
「…………やべぇ、キスしてぇ」
今すぐ離せ馬鹿。
真顔で言ってくるので身の危険を感じた俺は即座に手を剥がそうとするが、西連寺がそれを止める。どうでもいいが、西連寺の言動にちょっと慣れてきたのか普通にあしらえるようになってきた気がする。
「あっぶね………今のはまあ条件反射みたいなもんだからそう言うな。汗、拭いてやるだけだ」
「何が条件反射だ、目が結構本気だっただろう」
不満を口にすると額にタオルが軽く当てられ汗が拭き取られる。目の近くまで拭かれたので片目を閉じた。
………子供じゃないんだから自分でできるんだが。
少しの羞恥心からタオルを奪おうとすると、絶妙な速さで躱されて一向に手にすることができない。しばらく格闘した俺は、もう諦めてさっさと拭いてもらうことにした。大人しくなった俺に西連寺は満足そうにして頬を緩める。何やら感動したように呟いた。
「なんか、新婚夫婦みてぇで良いな」
いちいち俺の羞恥を煽るようなことを言う西連寺を小突こうとすると、不意に後ろから衝撃が来た。ぎゅっ、と抱きしめられる。
「瑚珀いんちょー……」
このまったりした声は、俺の知る限り一人しかいない。
「尚か」
半身をひねると予想通り気だるげな茶色の瞳があった。いつものように頭を撫でると手に擦り寄る。
「今日は起きてちゃんと参加しているんだな、偉いぞ」
「ん、頑張った……から、もっと撫でてほし……」
「ああ、尚が望むなら、いくらでも」
サラサラの髪が乱れないように注意しながら何度もゆっくり撫でる。んー、と尚が幸せそうに喉を鳴らした。
「いやおいちょっと待て」
しばらく展開について来れなかった西連寺が突然俺と尚の間に割って入る。双方を引き剥がすと、目を吊り上げて尚を睨んだ。
「定例会議じゃ苗字だったのになんで急に名前呼びになってやがる。というか、いいとこで邪魔してんじゃねぇ」
単純に仲良くなったからだが。
意味のわからない疑問に思わず真顔になる。ところが、対面の尚はむすっとした顔つきになって西連寺を睨み始めた。
「会長に、関係ない」
争奪戦だ……と響が後ろで呟くが、それは違うと思うぞ。あとあからさまに嬉しそうにするな。
「っは、くそっ……無駄に体力備えやがって……」
「伊達に主席入学してねぇっつーことだ。まあ、一生懸命俺に追いつこうとするお前は可愛かったがな」
呼吸を整える俺の横で西連寺は涼しい顔で答える。俺の出せるスピードを出し切って進んだのに易々と俺に合わせやがって……しかも途中から立場が逆転して西連寺に主導権を握られてしまい、俺が西連寺について行く側になっていた。
「さすが3Sが誇るツートップのお二人!!」
「めちゃめちゃ早かった!!」
「これは絶対勝ったわ、競技的にも絵面的にも」
俺たちが張り合っていたことなど知らないクラスメイトが盛り上がっている中、俺は悔しくて仕方なかった。
絶対にみんなの目の前でバランスを崩してやろうと思ったのに……運動神経万能め。
「顔上げろ」
命令されて、俺はムッとしながらそっぽを向いた。仕返しもできないし、勝てないしこうなったらもう幼稚かもしれないが無視しかない。
しかし、それは次の瞬間には全く無意味になる。西連寺が俺の顎を掬って無理やり上を向かせたからだ。まだ息が荒かった俺は呼吸を繰り返しながら西連寺の真紅の目と対峙することになった。西連寺がごくりと喉を鳴らした。
「…………やべぇ、キスしてぇ」
今すぐ離せ馬鹿。
真顔で言ってくるので身の危険を感じた俺は即座に手を剥がそうとするが、西連寺がそれを止める。どうでもいいが、西連寺の言動にちょっと慣れてきたのか普通にあしらえるようになってきた気がする。
「あっぶね………今のはまあ条件反射みたいなもんだからそう言うな。汗、拭いてやるだけだ」
「何が条件反射だ、目が結構本気だっただろう」
不満を口にすると額にタオルが軽く当てられ汗が拭き取られる。目の近くまで拭かれたので片目を閉じた。
………子供じゃないんだから自分でできるんだが。
少しの羞恥心からタオルを奪おうとすると、絶妙な速さで躱されて一向に手にすることができない。しばらく格闘した俺は、もう諦めてさっさと拭いてもらうことにした。大人しくなった俺に西連寺は満足そうにして頬を緩める。何やら感動したように呟いた。
「なんか、新婚夫婦みてぇで良いな」
いちいち俺の羞恥を煽るようなことを言う西連寺を小突こうとすると、不意に後ろから衝撃が来た。ぎゅっ、と抱きしめられる。
「瑚珀いんちょー……」
このまったりした声は、俺の知る限り一人しかいない。
「尚か」
半身をひねると予想通り気だるげな茶色の瞳があった。いつものように頭を撫でると手に擦り寄る。
「今日は起きてちゃんと参加しているんだな、偉いぞ」
「ん、頑張った……から、もっと撫でてほし……」
「ああ、尚が望むなら、いくらでも」
サラサラの髪が乱れないように注意しながら何度もゆっくり撫でる。んー、と尚が幸せそうに喉を鳴らした。
「いやおいちょっと待て」
しばらく展開について来れなかった西連寺が突然俺と尚の間に割って入る。双方を引き剥がすと、目を吊り上げて尚を睨んだ。
「定例会議じゃ苗字だったのになんで急に名前呼びになってやがる。というか、いいとこで邪魔してんじゃねぇ」
単純に仲良くなったからだが。
意味のわからない疑問に思わず真顔になる。ところが、対面の尚はむすっとした顔つきになって西連寺を睨み始めた。
「会長に、関係ない」
争奪戦だ……と響が後ろで呟くが、それは違うと思うぞ。あとあからさまに嬉しそうにするな。
41
お気に入りに追加
273
あなたにおすすめの小説

無自覚お師匠様は弟子達に愛される
雪柳れの
BL
10年前。サレア皇国の武力の柱である四龍帝が忽然と姿を消した。四龍帝は国内外から強い支持を集め、彼が居なくなったことは瞬く間に広まって、近隣国を巻き込む大騒動に発展してしまう。そんなこと露も知らない四龍帝こと永寿は実は行方不明となった10年間、山奥の村で身分を隠して暮らしていた!?理由は四龍帝の名前の由来である直属の部下、四天王にあったらしい。四天王は師匠でもある四龍帝を異常なまでに愛し、終いには結婚の申し出をするまでに……。こんなに弟子らが自分に執着するのは自分との距離が近いせいで色恋をまともにしてこなかったせいだ!と言う考えに至った永寿は10年間俗世との関わりを断ち、ひとりの従者と一緒にそれはそれは悠々自適な暮らしを送っていた……が、風の噂で皇国の帝都が大変なことになっている、と言うのを聞き、10年振りに戻ってみると、そこに居たのはもっとずっと栄えた帝都で……。大変なことになっているとは?と首を傾げた永寿の前に現れたのは、以前よりも増した愛と執着を抱えた弟子らで……!?
それに永寿を好いていたのはその四天王だけでは無い……!?
無自覚鈍感師匠は周りの愛情に翻弄されまくる!!
(※R指定のかかるような場面には“R”と記載させて頂きます)
中華風BLストーリー、ここに開幕!

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~
無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。
自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

この僕が、いろんな人に詰め寄られまくって困ってます!〜まだ無自覚編〜
小屋瀬 千風
BL
〜まだ無自覚編〜のあらすじ
アニメ・漫画ヲタクの主人公、薄井 凌(うすい りょう)と、幼なじみの金持ち息子の悠斗(ゆうと)、ストーカー気質の天才少年の遊佐(ゆさ)。そしていつもだるーんとしてる担任の幸崎(さいざき)teacher。
主にこれらのメンバーで構成される相関図激ヤバ案件のBL物語。
他にも天才遊佐の事が好きな科学者だったり、悠斗Loveの悠斗の実の兄だったりと個性豊かな人達が出てくるよ☆
〜自覚編〜 のあらすじ(書く予定)
アニメ・漫画をこよなく愛し、スポーツ万能、頭も良い、ヲタク男子&陽キャな主人公、薄井 凌(うすい りょう)には、とある悩みがある。
それは、何人かの同性の人たちに好意を寄せられていることに気づいてしまったからである。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
【超重要】
☆まず、主人公が各キャラからの好意を自覚するまでの間、結構な文字数がかかると思います。(まぁ、「自覚する前」ということを踏まえて呼んでくだせぇ)
また、自覚した後、今まで通りの頻度で物語を書くかどうかは気分次第です。(だって書くの疲れるんだもん)
ですので、それでもいいよって方や、気長に待つよって方、どうぞどうぞ、読んでってくだせぇな!
(まぁ「長編」設定してますもん。)
・女性キャラが出てくることがありますが、主人公との恋愛には発展しません。
・突然そういうシーンが出てくることがあります。ご了承ください。
・気分にもよりますが、3日に1回は新しい話を更新します(3日以内に投稿されない場合もあります。まぁ、そこは善処します。(その時はまた近況ボード等でお知らせすると思います。))。

普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。
山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。
お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。
サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。


モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる