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しおりを挟む「かなり前の方が取れたから、よく見えると思う。ここの花火は豪華だから、おすすめだ」
言いながら稀吏は土手をきょろきょろと見渡し、何かを見つけて手を振った。視線を辿ると樋口と綿谷兄弟がいて、既に地面に敷かれたシートの上に座っていた。
「「おそーい!!」」
「随分遅かったですね。何かありましたか」
「い、いや、ちょっと立ち話してただけだ!」
「……そうですか」
絶対に勘繰られたと思うのだが、樋口は稀吏に苦笑して流した。やっぱり、付き合いが長いから慣れてるんだろうか。
「ところで、一つのシートに全員座るには多いので二手に分かれて座ることになりました」
そう言われてシートに目を向ける。
…………余裕で全員座れそうな感じだが。
「いや、十分広いとおも……」
「いやいや!!!狭いんだ!その、見た目は広いように見えるかもだが実は狭いんだ!!」
異論を挟もうとした俺を稀吏が慌てたように遮った。それに目を眇める。
また何か隠そうとしてるな……。
稀吏の反応でそう察したが、まあ言いたくないことを無理に暴いても仕方ない。俺は誘われた身なわけだし、あまり好き勝手発言するのは無礼だろう。
俺が引き下がると、稀吏は分かりやすく安堵した。ほっとしたように言い切る。
「じゃあ瑚珀と統和がもう一方のシートだな!」
いや、二人だけなのか。それは何だかあまり二手に分ける必要性を感じられないんだが。
しかし満面の笑みの稀吏にそれを言うのは気が引けた。
「じゃあさっさと行くぞ」
納得できていない俺の手首を再び掴み、慎重に手を繋ぎ直した西連寺はずんずんと先へ行く。
普通、二つに分かれる時は分かれるとはいえ配置は近くにするものだと思うんだが、なぜこんな稀吏達から少し離れたところに位置しているのだろうか。歩いて移動する距離とは……。
────その頃の乾達。
「これで良かったんですか、稀吏?」
「ああ!ありがとう滉!!」
「急に何を言い出すのかと思えば、会長と風紀委員長を仲良くさせたいだなんて………今まで散々衝突していたのですから、親睦を深めるなんて私は無理なように思いますがね」
「かいちょーじゃなくて俺がこはちゃんと二人っきりが良かったなぁ~」
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「やってることは同じですよ」
「酷いよ滉ちん!」
「「あれ、きーちゃんニヤニヤしてる~」」
「あ、ほんとだ。きりりん珍しいね~」
「えっ?!?!いや、別にニヤついてなんかない!」
「あ、なるほどね、かいちょーが早速………」
「あああダメだ千秋!バレる!!」
「?何なんですかさっきから」
「「ちーちゃんときーちゃん変なのー」」
「うう…俺まで変……グサってきた」
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