笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア

文字の大きさ
上 下
70 / 117

18

しおりを挟む



「かなり前の方が取れたから、よく見えると思う。ここの花火は豪華だから、おすすめだ」



 言いながら稀吏は土手をきょろきょろと見渡し、何かを見つけて手を振った。視線を辿ると樋口と綿谷兄弟がいて、既に地面に敷かれたシートの上に座っていた。



「「おそーい!!」」


「随分遅かったですね。何かありましたか」


「い、いや、ちょっと立ち話してただけだ!」


「……そうですか」




 絶対に勘繰られたと思うのだが、樋口は稀吏に苦笑して流した。やっぱり、付き合いが長いから慣れてるんだろうか。


 
「ところで、一つのシートに全員座るには多いので二手に分かれて座ることになりました」




 そう言われてシートに目を向ける。





 …………余裕で全員座れそうな感じだが。




「いや、十分広いとおも……」


「いやいや!!!狭いんだ!その、見た目は広いように見えるかもだが実は狭いんだ!!」




 異論を挟もうとした俺を稀吏が慌てたように遮った。それに目を眇める。




 また何か隠そうとしてるな……。



 稀吏の反応でそう察したが、まあ言いたくないことを無理に暴いても仕方ない。俺は誘われた身なわけだし、あまり好き勝手発言するのは無礼だろう。



俺が引き下がると、稀吏は分かりやすく安堵した。ほっとしたように言い切る。



 
「じゃあ瑚珀と統和がもう一方のシートだな!」




 いや、二人だけなのか。それは何だかあまり二手に分ける必要性を感じられないんだが。




 しかし満面の笑みの稀吏にそれを言うのは気が引けた。



「じゃあさっさと行くぞ」




 納得できていない俺の手首を再び掴み、慎重に手を繋ぎ直した西連寺はずんずんと先へ行く。


 普通、二つに分かれる時は分かれるとはいえ配置は近くにするものだと思うんだが、なぜこんな稀吏達から少し離れたところに位置しているのだろうか。歩いて移動する距離とは……。



















































 

────その頃の乾達。



「これで良かったんですか、稀吏?」


「ああ!ありがとう滉!!」


「急に何を言い出すのかと思えば、会長と風紀委員長を仲良くさせたいだなんて………今まで散々衝突していたのですから、親睦を深めるなんて私は無理なように思いますがね」


「かいちょーじゃなくて俺がこはちゃんと二人っきりが良かったなぁ~」


「あなたはただ美形を組み敷きたいだけでしょう」


「えーなんか聞こえ悪いなぁ。それだとなんか俺がめっちゃ乱暴してるみたいじゃん?俺言っとくけどすっごく優しいんだからね~?」


「やってることは同じですよ」


「酷いよ滉ちん!」


「「あれ、きーちゃんニヤニヤしてる~」」


「あ、ほんとだ。きりりん珍しいね~」


「えっ?!?!いや、別にニヤついてなんかない!」


「あ、なるほどね、かいちょーが早速………」


「あああダメだ千秋!バレる!!」


「?何なんですかさっきから」


「「ちーちゃんときーちゃん変なのー」」


「うう…俺まで変……グサってきた」


「ちょ、きりりんそれ俺がいつも変って言ってるの?!?!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

風紀委員長様は王道転校生がお嫌い

八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。  11/21 登場人物まとめを追加しました。 【第7回BL小説大賞エントリー中】 山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。 この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。 東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。 風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。 しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。 ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。 おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!? そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。 何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから! ※11/12に10話加筆しています。

ボクに構わないで

睡蓮
BL
病み気味の美少年、水無月真白は伯父が運営している全寮制の男子校に転入した。 あまり目立ちたくないという気持ちとは裏腹に、どんどん問題に巻き込まれてしまう。 でも、楽しかった。今までにないほどに… あいつが来るまでは… -------------------------------------------------------------------------------------- 1個目と同じく非王道学園ものです。 初心者なので結構おかしくなってしまうと思いますが…暖かく見守ってくれると嬉しいです。

この僕が、いろんな人に詰め寄られまくって困ってます!〜まだ無自覚編〜

小屋瀬 千風
BL
〜まだ無自覚編〜のあらすじ アニメ・漫画ヲタクの主人公、薄井 凌(うすい りょう)と、幼なじみの金持ち息子の悠斗(ゆうと)、ストーカー気質の天才少年の遊佐(ゆさ)。そしていつもだるーんとしてる担任の幸崎(さいざき)teacher。 主にこれらのメンバーで構成される相関図激ヤバ案件のBL物語。 他にも天才遊佐の事が好きな科学者だったり、悠斗Loveの悠斗の実の兄だったりと個性豊かな人達が出てくるよ☆ 〜自覚編〜 のあらすじ(書く予定) アニメ・漫画をこよなく愛し、スポーツ万能、頭も良い、ヲタク男子&陽キャな主人公、薄井 凌(うすい りょう)には、とある悩みがある。 それは、何人かの同性の人たちに好意を寄せられていることに気づいてしまったからである。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 【超重要】 ☆まず、主人公が各キャラからの好意を自覚するまでの間、結構な文字数がかかると思います。(まぁ、「自覚する前」ということを踏まえて呼んでくだせぇ) また、自覚した後、今まで通りの頻度で物語を書くかどうかは気分次第です。(だって書くの疲れるんだもん) ですので、それでもいいよって方や、気長に待つよって方、どうぞどうぞ、読んでってくだせぇな! (まぁ「長編」設定してますもん。) ・女性キャラが出てくることがありますが、主人公との恋愛には発展しません。 ・突然そういうシーンが出てくることがあります。ご了承ください。 ・気分にもよりますが、3日に1回は新しい話を更新します(3日以内に投稿されない場合もあります。まぁ、そこは善処します。(その時はまた近況ボード等でお知らせすると思います。))。

目立たないでと言われても

みつば
BL
「お願いだから、目立たないで。」 ****** 山奥にある私立琴森学園。この学園に季節外れの転入生がやってきた。担任に頼まれて転入生の世話をすることになってしまった俺、藤崎湊人。引き受けたはいいけど、この転入生はこの学園の人気者に気に入られてしまって…… 25話で本編完結+番外編4話

そういった理由で彼は問題児になりました

まめ
BL
非王道生徒会をリコールされた元生徒会長が、それでも楽しく学校生活を過ごす話。

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが

松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。 ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。 あの日までは。 気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。 (無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!) その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。 元日本人女性の異世界生活は如何に? ※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。 5月23日から毎日、昼12時更新します。

Q.親友のブラコン兄弟から敵意を向けられています。どうすれば助かりますか?

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
平々凡々な高校生、茂部正人«もぶまさと»にはひとつの悩みがある。 それは、親友である八乙女楓真«やおとめふうま»の兄と弟から、尋常でない敵意を向けられることであった。ブラコンである彼らは、大切な彼と仲良くしている茂部を警戒しているのだ──そう考える茂部は悩みつつも、楓真と仲を深めていく。 友達関係を続けるため、たまに折れそうにもなるけど圧には負けない!!頑張れ、茂部!! なお、兄弟は三人とも好意を茂部に向けているものとする。 7/28 一度完結しました。小ネタなど書けたら追加していきたいと思います。

処理中です...