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しおりを挟む生徒会書記 乾稀吏side
俺は今すごく深い後悔の念と、瑚珀に謝りたい気持ちでいっぱいだ。
ん?何気に瑚珀って呼ぶのが初めてだって?えーとだな、その、本当は心の中ではずっと瑚珀って呼んでいたんだが……いざ名前呼びをするとなると、き、緊張してしまって……なかなか名前で呼べないんだ。
あ、これは全然今関係なかったな。すまん…。
あー、そうだ、それで……その、実は昨日、瑚珀と夏祭りに行くことになったんだが、そのあと俺は生徒会のみんなに同じお祭りに誘われたんだ。正確には、行こうと言い出したのは庶務の真央と怜央なんだが。
俺は先に瑚珀と約束をしていたから当然断ったんだが、なんというか、俺の言い方が悪かったのか、先約があるから行けないと言うとみんなが興味を持ってしまって……根掘り葉掘り聞かれた後に瑚珀と二人で行くことがバレてしまったんだ。
まあ、その時食いついてたのは千秋と真央と怜央だけで、生徒会ツートップの二人は興味なさそうにしていたんだが……問題はここからで、家に帰ったら速攻で統和から電話がかかってきた。もうそれは、本当に見ていたのかってくらい俺が家に帰った瞬間にかかってきたぞ。いや、多分統和のことだし見てたんだろうな。
『おい稀吏!!龍神と出かけるってどういうことだっ!!聞いてねぇぞ!』
電話に出て、「はい」の「は」まで言ったところで怒鳴られる。相当ご立腹みたいだ。
『どういうことと言われても、そういうこと、としか答えられん』
『お前、そもそもそんなに龍神と仲良かったのか?誘うほど?誘うってことはそれなりに仲良いという証拠があるんだろうな?』
質問多いな、と苦笑する。少しいじわるをしてやろう、と悪戯心が動いた。
『名前呼びして連絡先を交換するくらいの仲だな』
『はっ?!?!?!?!』
電話の向こうで大きな物音が立て続けにして、俺は満足した。しばらくすると物音が止んでシーンとした。低い声で統和が言った。
『………お前らは付き合ってんのか?』
なんとか平然としているみたいだが、俺には分かる。これは相当ショックを受けている。絶望したみたいな哀愁が声に滲んでるからな。
思わず笑うと、電話越しでも分かるほど統和の温度が下がった。慌てて訂正する。
『誤解だ、付き合ってない』
『……………………………………お、おう』
それで本当に誤魔化しているつもりなのだろうか。明らかに今ホッと息ついたのが伝わったんだが。
『今は、だけど』
俺がそう言えば、また電話の向こうが騒がしくなる。これくらいは俺にも許されるだろう。
さて、そろそろ核心を突いた方がいいか。
『それで、統和はやっぱり瑚珀が好きなんだな』
『んなの当たりま……はあ?!?!』
『気づかないとでも?統和はそれで取り繕ってるようなら色々まずいと思うぞ。分かり易すぎだ』
少なくとも、統和と幼馴染の俺にはすぐ分かる。お世辞にもアレをアタックと言えるかは分からないが……その、正直小学生か、せいぜい中学生並みのアピールの仕方だからな。
一瞬で黙り込んだ統和を無視して話を続ける。
『そもそもこんな感じで俺に怒鳴り込んできた時点でもう、好きなのを認めてるとしか………』
『あ゛ぁーくそ!!分かったから黙れ!』
流石に可哀想だしここら辺にしとこう。統和は機嫌を損ねると大変だからな。しばらく感傷に浸る統和を放置していると、急に統和が声に力を込めた。
『決めた。俺は決めたぞ稀吏』
『……嫌な予感だが、一応聞こう』
『俺もついて行く』
滅茶苦茶言い出したな、統和。
『絶対だめだ。瑚珀の許可を取ってない』
『適当に言い包めとけ。つか、俺が行くんだぞ?嫌なわけねぇだろうが』
『統和、瑚珀は会うなり煽ってくる奴と行きたいとは思わないと思う』
『………………………とにかく、あいつにはうまく言っとけ!』
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『俺一人ついていくのが不自然なら、滉とか千秋も誘えばいいだろ。それがいいじゃねぇか。今から誘っといてやるよ』
『いや、そもそも統和がついてくることが一番不自然なんだが……というか、統和が自分から瑚珀本人に言えばいいのに』
『う、うるせぇ!!言えるわけないだろうが!!!』
そう言い捨てられ、電話が勢いよく切られる。思わず頭を抱えた。
なんて瑚珀に言い訳しよう………。
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