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しおりを挟む「ああ、そういえば危ないで思い出したが、瑚珀は降魔で風紀委員長やってるんだったな」
「?、はい」
首を縦に振ってその言葉を肯定しながら、運ばれてきたシフォンケーキを口にする。確かに甘さがちょうど良くて美味しい。コーヒーとすごく良く合っていた。
うっすら頬を緩めてケーキを口に運んでいると、司さんが何でもないようにさらっと言った。
「俺も昔、あの学園で生徒会に入ってたんだよ」
「っ?!」
突如知らされた衝撃の事実に咽せそうになる。何とかケーキを飲み込んだ。
「降魔出身ということは知っていましたが……それは初耳です。役職は何をされていたんですか」
「生徒会長」
返答に驚くと同時に、俺は深く納得した。高いスペックに容姿の良さ、おまけに文句のない家柄ときたら、司さんほど会長に適任な人はそうそういないだろう。
そして人望。
西連寺がカリスマタイプの生徒会長なら、おそらく司さんはその頼もしく優しい人柄でまとめあげる、人望タイプの生徒会長と言えるだろう。権力などの力は司さんにとってはその人気を増長させる要素に過ぎなかったのかもしれない。
司さんは俺より7つ年上なので、七年前の生徒会長をしていたということになる。俺が確認したことがある歴代の生徒会長は五年前が最高なので知らないのもおかしくない。今度資料を開いて七年前の記録を見ておこう。
「俺の頃は生徒会も風紀も仲良くて、異例だって周りから言われてたんだ」
「最初から仲が良かったのですか?」
「まあ、そうだな。行事とかも協力してやってたよ」
「それは……すごく、良いですね」
俺は生徒会の連中とは仲が悪い。会計の遠山と書記の稀吏は友好的だが、副会長の樋口や庶務の綿谷兄弟からは毛嫌いされている。西連寺なんて、一番俺を嫌っているのではないだろうか。
「瑚珀はそんなに仲良くない感じか」
「はい、おそらくかなり嫌われていると思います。特に会長には行事などでも許可なく内容を変更されたりするので、協力して進められるのは羨ましいです」
この前の新歓とかな。
「そうか(これは多分勘違いされてるやつだな……少なくとも会長は絶対に嫌ってない。好きな子ほどいじめたくなるってやつか)。あー、でも」
「?」
「俺の時は問題があって、俺が三年の時に転校生が来てな。そいつがまた少し問題のある奴で、かなり学園を混乱させてたんだよ」
…………………何だろう、既視感しかない話だ。
「容姿はこう、はっきり言ってパッとしない奴だったんだが………かなり性格がまっすぐで、風紀委員長を除く風紀の連中がみんなそいつの虜になってな。さんざん風紀が乱れた」
生徒会ではなく風紀委員会が虜になったのか……なんか同じ風紀としてきまり悪いな。
「俺は風紀委員長と仲が良かったから、風紀の仕事手伝ったり生徒会室に匿ったりして助けてたな……まあ、結局最後は転校生が殺人未遂をやらかして退学になったんだが」
当時のことを思い出しているのか複雑そうな顔をする司さんに、俺は返す言葉が出なかった。俺たちはせめてそんな結末にならないよう頑張るしかない。
…………どちらかと言うと転校生よりも御法川の方が退学してもおかしくないことをしている気がするがまあ、あいつの家は権力があるからな…。
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