笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア

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龍神side



 

「今から時間、あるか?流石にここで立ち話というのも疲れるからな」




 完治さんたちには俺から連絡するから、と俺の懸念を一瞬で取り除き司さんは俺を見た。そこまでされるともう俺には拒否権はない。俺は頷いて、司さんについて行くことにした。


 

「ここだ」



 

 着いたのは瀟洒な雰囲気のカフェで、入るのが躊躇われるほど女性客が多い。ひっそりとした店構えに落ち着いた雰囲気。来ている客層や店員の佇まいから、本当にセンスのある人が行くような類の店のように見えた。

 少し呆気にとられる俺に何でもないように司さんはドアを開けた。流れるように俺をエスコートするその様子に、随分慣れてるなと感心する。

 店に入ってきた時からかなりの数の視線を感じたが、大半が彼への視線なのだろう。司さんは俺から見てもかっこいい人だ。学園で多くの顔が良い生徒を見ていて目は慣れているはずなのに、司さんは同等かそれ以上に整っているように見える。大人の余裕と色気を持っているところもどことなく気品があって魅力的だ。

 今だってこの瞬間、きっと司さんに恋した女性がいることだろう。

 窓際の席に俺をエスコートされ、向かい合って座る。俺の視線に司さんはふ、と柔く笑んだ。
 


「何か頼もう………ちなみに、俺のおすすめはシフォンケーキな。あんまり甘くなくてちょうど良い」




 メニューを見て迷う俺にすぐに気がついた司さんは、さりげなくおすすめを教えてくれた。俺があまり甘いものが得意でないことも知ってのチョイスだろう。こういうところが人を集めるんだろうな。


 俺がそれにする、と伝えると司さんはスマートに注文した。嬉しそうな女性店員を見る限り、司さんはここの常連でしかも人気者らしい。そんなことを思っていると、対面から悪戯っぽい笑みが送られてきた。


 

「俺がいるのに別の考え事?」



 ……本当に、自然にこういうことが言えるのだからさすがだと思う。これが、俺達高校生と社会人の差なんだろうか、と思いながら口を開く。
 


「いえ、今は司さんのことしか考えていません」




 適切な回答が思い当たらないので正直に答えた。司さんが苦笑する。



 
「それ、あんまり他の奴に言うなよ」


「なぜですか?」
 

「んー、危ないから」


「???」




 そのまま周りの人に言うと、引かれるのだろうか。司さんは優しいからその忠告を…?



 意味がよく分からなくて首を傾げていると、

 
 「瑚珀は分かんなくていいよ」

 
 と言われた。何だったんだろうか。

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