笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア

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龍神side





「そういや、瑚珀は夏休みなんか予定あんの?」




 教室に戻る途中、響に聞かれ少し考える。




「……そうだな、学園閉庁の時には帰省しようと思っているがそれ以外は特に何も予定はない」




 降魔は盆期間である八月中旬は学園閉庁になるため、この期間に実家に帰る生徒が多い。俺は閉庁期間と土日以外は基本風紀委員として学校にいる予定なので、正直帰省以外は予定が無かった。




 そのことを響に伝えると、なぜか食ってかかられた。


「え、何それブラックすぎない?王道って俺が知らないだけで陰でそんなブラックな設定あったの?」


「王道が何を指すのかは分からないが……まあ、寮にいてもやる事も無いし俺は別に気にしていないな」


「えー…夏休みなのに勿体なくね?せっかくピカイチの原石なのに(受けの)」





 そういうものなのだろうか。周りに友人も少ないからみんながどう過ごしているのかなんて分からなかった。というか、原石とは何の原石なのだろう。



「誰か攻めが誘ってきてくれたらなー、俺得なのになー」


「お前は俺が誰かと出かけることを望むのか?」





 問えば、響はきょとんとした後笑った。




「だって瑚珀、自分のことはいっつも後回しで楽しめてないし。せっかく瑚珀の人生なのに、高三の最後の夏に何の思い出もないとか、勿体無いじゃん?」




「……そう、なのか」






 もしかして、俺は、















「……寂しい奴、なのか?」









 言われてみれば友人も片手で足りるくらいしかいないし、休日も風紀の仕事か何もなければ料理や部屋の片付けをしているだけだ。





 ぽん、と響の手が肩に乗った。



「大丈夫だよ瑚珀。俺が絶対いい攻めを見つけて何が何でも誘わせるから!!」


「いや、別に誘ってもらわなくていいんだが……」






 そもそも俺を遊びに誘ってくれるような酔狂な奴はいないだろう。俺が誘ってもどの道相手は困るだけだろうし………。







 今年も俺は、きっと一人だ。


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